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最新号の内容 -20130705 No:1386
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中国の婚礼市場多様化の流れ

  経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。                                                (インタビュー・楢橋里彩)

 

ワタベウェディング香港有限公司
ブランチマネジャー 河野真さん

【プロフィール】
 1977年ハワイ出身。2001年3月、立命館大学経済学部を卒業後、4月にワタベウェディング株式会社に入社。名古屋支店、横浜支店では主に海外挙式の販売を担当。その後横浜支店、グアム支店で副支店長を経て香港支店支店長。現在に至る。趣味は旅行、映画鑑賞。


 

——日本と海外の事業展開の違いは?

 日本は海外ウェディングが主力で、ローカルウェディング、スタジオ撮影、衣装販売の4つが主軸になっています。一方海外、特に香港では、海外ウェディング、フォトプラン、衣装提供が主になります。 ローカルウェディングマーケットとスタジオ撮影はこれからです。やはり地価の高騰をみているとスタジオスペースを確保しにくいので、まずは認知度上げることに集中しています。


——2007年に香港に進出した理由は?

 日本の婚礼市場の落ち込みが大きな要因です。近年、少子化が進み婚姻組数が減少しているため市場が萎縮していています。そこでマーケットをアジアに見いだしていくべきだと判断し乗り込みました。香港は国際金融都市であり富裕層が多いという点だけでなく、香港での流行に対する中国本土の人たちのアンテナ、購買力は絶大ですので期待しています。まず香港で一定の知名度とブランドを築いてさらにマーケットを拡大していく戦略です。

 

——海外挙式は香港では人気ですか?

 グアム、沖縄、北海道、バリ、オーストラリア、ハワイの挙式を提供していますが、特にグアムと沖縄はフライト時間が短く、直行便があるので人気です。香港に進出した当初は、香港の市場で海外ウェディングを知っているという人はほとんどいませんでした。毎年開かれるウェディングエキスポに出展していますが、6年たってようやく、ある程度認知してもらえるようになりました。それでも海外挙式は香港全体でわずか5%。これからが勝負ですね。

 

——感性の違いを感じることは?

 最初は日本の商品構成と同じものを販売していましたが、うまくいきませんでした。やはり香港人のニーズと特性にあった商品内容でなければ成功は難しいです。特に香港ローカル企業は「商品」として扱う場合が多いため値段交渉がよくあります。従来の「サービス」というより「価格で勝負」という部分が強い気がしますね。それを私たちがしていたら負けてしまいます。差別化を図るためにも値引きは一切無し、価格帯も少々高いですが、最初から価格を明確にした商品体系をつくり、理屈を説明できるようにしてからは軌道に乗りました。

 

——特に喜ばれるサービスは?

 サンクスメッセージという弊社オリジナルのDVDを作成しています。幼少期の新郎、新婦の写真に向けてメッセージをゲストの皆さまから寄せてもらい、また新郎新婦のお2人からはお世話になった友人や親族、両親へメッセージを残してもらいます。感謝の気持ちを挙式の中で伝えるという日本で生まれた独特のサービスがより世界に広がるとうれしいですね。

 

——香港での印象に残るエピソードがありますか。

 弊社では結婚証明書も作成しておりますが、ある日お客さまが真顔で「証明書は離婚したらどうなるのか」と聞いてきました。式前に冷静に尋ねる姿にかなり驚きました。日本ではなかなか聞かれませんから。(笑)

 

——アジア展開について教えてください。

 現在、上海、台湾、香港の3店舗ですが特に中国本土進出は大変でした。海外挙式もビザの規制などで厳しい上に、当初ドレスも上海で制作していましたので、日本のきめの細かさを教えるのに苦労しました。今後、本土では人口の多い場所、購買力がある場所を中心に5年以内に8店舗出店、提携先旅行会社を30社目指します。今までのしきたりにとらわれない新たなスタイルを求める婚礼層が増えているので、その流れに乗りたいですね。

 

——ここ10年くらいのブライダル業界をどうみていますか。

 かつては専門結婚式場の挙式、ホテル、レストラン、ハウスウェディングが主流でしたが、最近は多様化して独自のウェディングスタイルを決める傾向にあります。挙式の主役は2人という認識から、2人が友人家族との絆を確かめ合う場になるなど、結婚式の在り方が変わってきています。今後さまざまなニーズにマッチしたサービス商品がますます必要になると思います。(この連載は月1回掲載します)


【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。
ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。
現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。