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最新号の内容 -20130524 No:1383
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室内楽の楽しみ語る



注目のバイオリニスト
五明カレンさん

1982年東京生まれの五明さんはフランス系カナダ人の父と日本人の母を持つ。現在はニューヨーク在住で、主に欧米を活動拠点としている (※取材協力と写真提供Hong Kong Philharmonic) 

 

  バイオリニストの五明カレンさんが先ごろ来港し、4月19・20日の音楽会でメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲を演奏した。2011年にピアソラの作品を演奏したのに続き、香港フィルとの共演はこれが2回目という五明さんに話を聞いた。            (取材と文・綾部浩司/構成・編集部)

 

——バイオリニストになったきっかけは?

 私が5歳の時に当時14歳の五嶋みどりさんのモントリオールでのメンデルスゾーンの協奏曲のコンサートに母に連れられて行きました。その時、「私も彼女のようになりたい!」と思ったのがきっかけです。それから鈴木メソッド(世界的に有名なバイオリン教法)でバイオリンを習い始めました。

 

——共演した香港フィルの印象は?

 リハーサルの際に指揮者や私がいろいろリクエストすると、メンバーの皆さんはすぐにその通りの演奏を奏でてくれました。香港フィルは非常に感受性が高く、フレキシブルに適応できるオーケストラですね。前音楽監督のエド・デ・ワールト氏の薫陶でオーケストラが非常に進化したと思いますが、現音楽監督のヤープ・バン・ズべェーデン氏は非常に厳格な指揮者として知られていますので、香港フィルはさらにステップアップすることでしょう。今回香港フィルを指揮したデルフスさんとは12年ぶりの2度目の共演でした。

 

——今回演奏した曲についてお聞かせください。

 メンデルスゾーンの協奏曲はチャイコフスキーやパガニーニの協奏曲のようなビルティオーゾ(バイオリンの名手)をショーアップする作品とは異なって、心で奏でる音楽だと思います。19世紀の名バイオリニスト、ヨハヒムはメンデルスゾーンの協奏曲の「心の宝」と評したのですが、私はそのイメージが大好きです。その「心」とは、大人になっても胸の奥に残る子供のころのピュアで無邪気な心という意味です。

 

——香港の印象は?

 残念ながら前回も今回も滞在時間は短く、街をゆっくり見る機会はなかったのですが、宿泊先から一望できるビクトリア湾を見て、ビッグシティーと自然が融合した街だなと思いました。お食事はジェイドガーデンで食べたエビと豆腐の点心がとても気に入りました。カナダのバンクーバーにおいしい中華料理屋が数多くありますが、やはり香港の中華料理はおいしいですね。

 

——今後の音楽活動について。

 最近は協奏曲を演奏する機会が多いですが、私が最もエキサイトするのは室内楽の演奏です。室内楽はさまざまな音楽のチャレンジがあり、お互いの音色をより注意深く聴きあって演奏をする楽しみが多いからです。

 それとピアソラの作品を演奏することですね。ピアソラとの出会いは、母がモントリオールでピアソラの演奏に魅了され、14歳の私に彼のCDを聴かせてくれて私自身もピアソラの音楽に惹かれたのがきっかけです。ピアソラはクラシック音楽やジャズに大きく影響されたとてもユニークなタンゴ音楽生み出した音楽家です。

 

〈取材後記〉

 リハーサルで五明さんの音色を聴いた瞬間に思い浮かべたのは、あのアルトゥール・グルーミオ(往年の名バイオリニスト)の上品でふくよかで温か味のある音色だった。「グルーミオの音色みたいで実に素敵ですね」とインタビュー時にご本人にお伝えしたところ、とても喜んでくださった。同日夜は素晴らしい音色と音楽性に感動した演奏会となった。

〈五明カレンさん公式サイト〉
http://karengomyo.com/


 

新シーズンのプログラム発表

 

 40周年を迎える香港フィル。9月から始まる2013/14シーズンのプログラムが5月3日、発表された。音楽監督のヤープ・バン・ズべェーデン=左から2人目=が今シーズン指揮棒を振ったのは12回だったが、新シーズンは14回登場。また、充実したラインアップに目を見張る。

 主な演奏曲は『新世界より』(9月)、マティアス・ゲルネとのシューベルトとR・シュトラウス(10月)、グラン・パルティータ(来年3月)、マタイ受難曲(来年4月)、幻想交響曲(来年6月)など。

 ビッグニュースは巨匠マゼールと香港フィルの初共演(11月)だ。演目はマゼール編の『指環』、そしてブリテンの『戦争レクイエム』など。マゼールはさらに、香港のオーディションで選ばれた若手音楽家と香港フィルのメンバーと共演する特別演奏会も行うという。

 ほかにも、連続4週間にわたって行われるシューマン・フェスティバルなど、新シーズンは注目のプログラムがめじろ押しだ。