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最新号の内容 -20130322 No:1379
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喫む、淹れる、学ぶ、楽しむ
中国茶

 

 

 旧英国植民地という歴史的背景からアフタヌーンティー文化が根付き、近年はコーヒー文化も浸透してきた香港。しかし、ここは中華圏の街。何といっても中国茶が基本だ。香港にいるこの機会に、中国茶に親しんでみてはいかがだろうか?
(取材・文:武田信晃/構成・編集部)


 

さまざまな茶葉

 

「お茶をおいしく喫むにはどうしたらいいのか?」を常に研究している池谷先生

  今回の中国茶の特集にあたり、話を聞いたのは、1987年に来港し、97年から「中國茶倶樂部」を主宰している池谷直人氏。香港における日本人中国茶の先生・研究家の第一人者だ。日本にも緑茶を中心としたお茶の文化があるが、中国茶の魅力について聞いてみた。

 「バラエティーに富んでいる点だと思います」

 日本でも玉露、煎茶、番茶などさまざまなお茶があるが、中国茶はそれ以上に種類が豊富。これに焙煎の度合いなどを含めていくと味わえるお茶はさらに増える。

 まずは6大茶葉=上表=を簡単に紹介しよう。注意しておきたいのは、ガイド本などでは「発酵の度合いによって大別される」というが、池谷先生によると「実際にはどれだけ酸化したかという酸化の度合いによって分類されます」とのことだ。中国茶の世界では「発酵」という言葉が酸化の変わりの言葉として使われているというのを覚えておこう。

 

青茶だけでも5種類

 6大茶葉の中でも「青茶」は発酵の度合いが30〜60%と幅広いことから多種多様な青茶がある。日本人になじみのあるお茶が多いので、もうひとつ踏み込んで青茶の分類を紹介したい。

 

○鉄観音

 日本人にもよく知られたお茶。福建省安渓が産地だ。これを焙煎の度合いによって軽火、中火、重火に分けられる。左の写真は軽火だ。焙煎の度合いが軽いので、色は薄い緑色でさわやかな味わい。「しっかりもんでいるので小さな玉状になっているのが特徴です」と池谷先生。

 

○岩茶

 福建省武夷山が有名。「ねじれていて長い茶葉が特徴です。焙煎が強めで香ばしく、コクが口に拡がります」。写真の鉄羅漢のほか、よく知られた大紅袍などがある。

 

○単叢

 広東省潮州が産地。白葉単叢、鳳凰単叢、宋種単叢など、それぞれ異なった味と香りを呈する。写真の茶葉は鴨屎香と名前的には微妙な響き…。「細長く、緑色で、マットな感じがします」

 

○台湾烏龍

 その名の通りで台湾のウーロン茶。写真は東方美人という茶で、「ウンカという害虫にあえて葉を食わせてから摘んだものが最上級」(池谷先生)。噛み傷から先に酸化が進むため、蜜の香りがするといわれる。白、黄、橙色、赤、褐色の5色の茶葉が交じっているものが、複雑な味を醸し出して美味しい。ほかにも文山包種、福寿山烏龍などがある。

 

○大陸烏龍

 

 福建省安渓がウーロン茶の故郷。写真は黄金桂という茶葉。色は黄金のように黄色で、キンモクセイの香りが少しすることから名づけられた。見た目は鉄観音の軽火にも似ているが、「軽火と違いもみがゆるいのでお湯に浸かると茶葉が完璧に広がります。出がらしを見ればはっきりと区分けがつきます」

 青茶だけでもこんな風に分類できる。これが池谷先生の「バラエティーに富んでいる」という言葉にもつながっているのだ。

 

   1、緑茶(不発酵茶、酸化度0%):龍井、黄山毛峰など

   2、白茶(微発酵茶、同10〜20%):白毫銀針、白牡丹など

   3、黄茶(微後発酵茶、同20〜30%):君山銀針、霍山黄芽など

   4、青茶(半発酵茶、同30〜60%):鉄観音、台湾烏龍など

   5、紅茶(全発酵茶、同80〜90%):正山小種、祁門など

   6、黒茶(後発酵茶、同100%):普،|、六安など

       ※実は、このほかに「花茶」というのもある。
          茉莉花茶(ジャスミン)、桂花茶(キンモクセイ)などがそれだ。

 

 

茶器の奥深さを知る

 

池谷先生がデザインを手掛けた茶器。磁器で有名な中国の景徳鎮で製造したものだ

 

 中国茶に使う茶器は、日本人的性格からすると凝りやすいものかもしれない。しかも夢中になるほど魅力を持っている。書き出せば、中国の茶葉同様キリがないので、まずは概要を説明してもらった。

 有名な茶壺(急須)の作家(職人)としては、明朝の終わりから清朝初期に活躍した陸思亭や恵孟臣がいる。形には丸くオーソドックスな「幾可型」や縦の線が入っており、その形が菊に見えるような「筋紋型」などがあるが、上記の作家によってほぼ完成されたといっていい。池谷先生は「現代に比べても遜色のない、すでにその当時には洗練されつくした究極の形なのだと思います」と解説してくれた。また、「茶壷によっては持つところ、蓋、お湯が出てくるところは同じ高さ、水平になっており、反対にひっくり返しても安定しているんですよ」。
 

池谷先生所有の茶器。左は思亭壺、中央は孟臣壺など 

逆さまにしたときに接する面が一直線になるものを「水平壺」という


 素材に目を向けると、紫砂というものからできている。これは江蘇省宜興でしか取れないというものだ。

 茶器の選び方については「蓋で茶器をたたくと澄んだ音がします。紫砂には雲母が含まれているので、茶壺の表面に細かい銀色の粉のように光る部分があるはずです」とのこと。もっとも、この細かい粉もあとから偽装できるそうなので、最終的には自分の目を養うしかない。

 では初心者はどうすればニセモノを買わずに済むのか? 「香港のお茶店で売っているのは9割が本物です。専門家が選んでいるからです。ところが深圳などで買うと6割くらい『ガラクタ』ですね」と池谷先生。最初は少々値段が高くても見分ける力がないうちは香港で買ったほうが安全といえそうだ。
 

 

 

中国茶を淹れてみよう

 

 中国茶の基礎が分かったところで、実際にお茶を淹れてみよう。池谷先生に日本人にも人気の「鉄観音茶」の淹れ方をデモンストレーションしてもらった。中国茶と茶器が手に入ったら、自分でもお茶を淹れてみては?

 

①茶器を温めることから始める。燭に湯を注ぐ。
左手で蓋のつまみを持ち、右手で手前から向こう側に回す

 

②茶海(ミルクピッチャーのようなもの)にお湯を移し、茶杯にお湯を注ぐ

 

③茶葉を燭盅 に入れる。蓋をしたとき、燭盅 からお湯が出ない量が適正水量。茶葉はその4分の1が目安。つまり茶葉の量は燭盅 の大きさによって変わる

 

 

にお湯を注ぐ。茶葉全体に万遍なくお湯がかかるようにする

 

 

⑤器のお湯をいったん捨てる

 

 

⑥再び燭盅  にお湯を注ぐ

 

 

燭盅 から茶海に鉄観音茶を注ぐ

 

 

⑧茶海にある鉄観音茶を茶杯に注ぐ。
注ぐ順番は1列なら右から左に。2列なら右上から反時計回りに

 


 

中國茶倶樂部

所在地:A6, 10/F., Pearl City Mansion, 22-36 Paterson Street,
            Causeway Bay, Hong Kong

電話:2577-8688
電子メール:kame@chineseteaclub.hk
ウェブサイト:www.chineseteaclub.hk

授業内容:お茶の種類、茶器、淹れ方、試飲など多様なカリキュラムを用意。初級から教養までの全4コース。週1回2時間で全5回計10時間。午前10時または午後2時から開始

入会金:600ドル(半年)、1000ドル(1年)、1600ドル(2年)
受講料:780ドルから(会員、非会員およびレベルによって異なる)

※詳しくは上記の連絡先に問い合わせるか、ウェブサイトを参照のこと