香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20121207 No:1372
バックナンバー

 

 

反日も悲観せず中国で10%獲得へ

 

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。 (インタビュー・楢橋里彩)

 


 

日産環球股份有限公司

インフィニティ グローバル本社
部長 中島健さん

【プロフィール】
 1982年、日産自動車株式会社に入社。94年、事業企画マネジャーとしてドイツ日産に勤務後、日産ヨーロッパ(アムステルダム)を経て、2000年から日産自動車株式会社で事業部主担、01年から中東日産(ドバイ)でリージョナルディレクター。12年4月より現職。

 


——今年4月に香港にインフィニティ本社機能を移転した経緯は。

 インフィニティは米国で1989年に販売を開始したプレミアムブランドカーです。デザイン、生産は日本ですがグローバル市場を目指してビジネス展開しています。香港に移したのは中国本土へのゲートウエーであるのはもちろん、中国の自動車市場が年々成長しているのも理由です。

 

——なぜ本土に本社を置かなかったのですか。

 中国だけを見るのではなく、米国をはじめアジア、中近東も見ていくことを考えると、今、本土に入ってしまうとグローバルな視点から少しずれてしまう恐れがあります。

 

——香港でのマーケティング戦略は?

 香港はまだ準備段階で販売は開始していません。ここのマーケットは特殊なんです。全体の4割が高級車ブランドですから。香港人の車の概念は高価なもの、富裕層の特権というのが根付いているので車自体が必ずしも必需品ではありません。そこを把握した上で戦略を考えていきます。

 

——自動車製造業が盛んでない香港での本社人材募集は苦戦したのでは?

 確かに業界経験者に絞って募集をかけても厳しいので、固執せずグローバルな人材に絞りました。今後、車のビジネスはどんどん変わっていくと思います。ハード面だけでなくソフトやサービス面で付加価値をつけていく方向になるでしょう。むしろ自動車業界にこだわった人材ばかりを採用しては未来につながらない。もっと柔軟な、これまでにない発想を持った人材が必要になっていくと思います。

 

——インフィニティは日産から独立したブランドだそうですが?

 プレミアムカーという意味では、日産ブランドとは異なる製品。サービス、対象の顧客層も異なってきます。お客さんが車に入った時の「おもてなし感」を大切にしています。乗った瞬間に、ほっとするような空間を提供したいのです。忙しい日々を送る人が多い時代だから、そういう感覚が大切だと思います。

 

——昨今、反日デモが活発化しましたが、本土での販売についての対策は?

 確かに厳しさが増していますが、その後はほぼすべての販売店で営業を再開しています。客足は通常の状態までは至ってないものの、少しずつ戻っています。一部で停止していた販促活動も、各販売店の経営判断において徐々に戻っています。楽観できませんが、逆に悲観的にも考えていません。

 

——新規の市場や世界市場での成長を加速させること掲げた中期計画「日産パワー88」について教えてください。

 インフィニティはこの計画の中で重要な役割を担っています。それは今後伸びていく市場を対象に展開していくからです。このプレミアムブランドを一流のブランドに育て収益の貢献につなげること。そのためにまずはブランド車として世の中に浸透させていく。中国以外にもロシア、南アフリカ、インドネシアも市場が拡大している。いまの市場規模だけではなく市場が伸びる場所をいち早く見極め基盤をつくるということが大事なんです。

 

——成長市場を見極めるには?

 些細なことでもその国の人々の変化を察知することです。世代によってどう異なるか、どんなニーズがあるか。はやっている場所、駐車場はその国の経済状況がよく分かります。そのためにも現地に行き自分の目で見ることが大切だと思っています。

 

——今後の事業展開は。

 今年4月に北京にフラッグシップストア中国1号店を出しました。今後も上海、広州、成都につくる予定です。目指すは中長期的に中国高級車市場で10%の占有率獲得です。

(この連載は月1回掲載します)

 

 

橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。