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最新号の内容 -20121116 No:1371
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課文176「ちょっとしんどいに先回り」

「五塔標行軍散」25グラム入り1瓶30ドル(マニングス調べ)

 

タイの軍隊も携帯した常備薬


 このお薬「五塔標行軍散」はタイで100年以上の歴史を誇る。昔々、タイではほとんどの人が農業に従事し、生活水準も低く、気候がいつも暑いことも重なって、簡単に「はやり病」にかかる人が多かった。そこで、タイ華僑の王濟達氏が中国の昔からの処方でこのお薬を作り出し、タイ政府に献上したのだそう。効果は顕著で、病に倒れた人々を治療する病院や、人々を助けるために働く軍隊の人々に受け入れられたのをきっかけに民間にも広がるようになった。「軍隊が行軍する」ときの必需品ということで「行軍散」の名前が付いたそうだ。 

 そして、その成分は体に取り付いた「邪(ウイルスなどの病原菌)」を発散するのだという。暑さのせいや冷たい飲食物をとり過ぎて働きの悪くなった胃腸を癒やし、食欲不振などを改善する「香」、せき止め・解熱・鎮痛・鎮静・消炎・利尿作用のある「丁香」、香りで癒やす極上級のお香としても有名で、抗菌(煎液:ヒト型結核菌、チフス菌、コレラ菌)・健胃・ヒステリー・ぜんそくなどに効く「沈香」、古来から中国の宮廷の女性たちにより美容用にも使われていて、風邪・頭痛・片頭痛にも効く「川白●」。発汗解熱・鎮静・抗炎症・抗アレルギー・抗菌・水分代謝調節・消化吸収抑制効果のある「細辛」、中枢神経系の興奮を鎮静し、水分代謝を調節し体表の毒を取り去りこれを和解する作用があるので、頭痛・発熱・のぼせ・感冒・身体疼痛・抗ストレスに効く「桂皮」。説明書には、その効能として嘔吐、腹痛、おなかの膨満感、胸のつかえ、痰、せき、乗り物酔い、精神鬱屈、めまいと書かれている。 

 飲み方は1日3〜4回、ティースプーン1杯くらいを以下のいずれかで摂取する(1)お湯に溶かして飲む(2)お湯と一緒に飲む(3)鼻から吸う——。軍隊では水のないところもあるので、そのままとるという方法も考えられたようだ。子供は半分の量にある。老若男女、妊婦も大丈夫。 

 昔はタイでしか手に入らず、中国人や華僑がタイに行くと必ず買うモノとして有名であったが、今では、インドネシア、台湾、フィリピン、香港などでも手に入るようになってきた。ウチの家でもいつからか、救急箱の中の必需品となっていた。あまりにも当たり前だったので、ご紹介するのがこんなに遅くなってしまった。
 

 私は、「風邪をひきそう」「おなかが痛くなりそう」「頭が痛くなりそう」「何かだるい」というときに、飲んでおく。つまり、「ちょっとしんどい!」というときに飲む。お家とオフィスに常備したいおススメアイテムのひとつである。 (このコーナーは月1回掲載)


 

筆者・楊さちこ

1961年大阪生まれ(国籍:日本)南京中医薬大学・中医美容学教授・中医学博士日本と香港・中国のアジアコスメブームに火をつけたアジアンコスメの第一 人者。大学では「高木祐子奨学金基金」を設立し、中医学の社会的地位の向上に尽力。美に関する商品開発をはじめとするトータルプロデュースを手がけるほ か、各地において美容セミナーを開き、「楊さちこ式美容メソッド」「脱ファンデーション」を伝え、女性たちから絶大の信頼と支持を得ている。楊さちこのア ジアンビューティースタイル公式サイトrøpeque®—レピーク—http://www.yo-sachiko.com/