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最新号の内容 -20120629 No:1361
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〈14〉香港とシンガポールの比較②

 月1回のこのコーナーでは、香港・日本・中国などを中心とした税金に関する問題についてご紹介させていただきます。今回は多国籍企業の間で、アジア地域における販売・マーケティング機能や財務・金融機能の統括拠点として位置づけられることが多い香港とシンガポールという2つの制度を比較してみます。

法人税

 香港、シンガポールはともに日本と比較して税率が低い低税率国・地域であり、香港の法人税は16・5%、シンガポールの法人税は17%となっています。両国の税率は、日本のタックスヘイブン対策税制(特定外国子会社合算税制)に定められた税率20%以下の国に該当するため、シンガポールも香港も両国・地域に存在する法人は、その状況によっては日本のタックスヘイブン対策税制の適用対象となり得ます。

 香港では、日本でいう法人税は事業所得税に相当し、香港法人は香港域内で行う事業により得られた国内源泉所得に課税されることになります。一方で、所得の源泉が香港外である国外源泉所得(オフショア所得)は、非課税となります。シンガポールでは、法人税および所得税とも所得税法に規定されています。シンガポール法人は国内源泉所得および国外源泉所得のうちシンガポールで受領された金額が課税対象となります。ただし、国外源泉所得のうち配当金・支店の事業所得・サービス所得のうち特定の条件を満たすものについて、シンガポールに送金されても課税されません。

 香港・シンガポールに共通した特徴として、ともにキャピタルゲインは原則として非課税という点が挙げられます。ある取引から発生した所得が課税対象であるか否かは、その取引が損益取引か資本取引かによって判断され、資本取引による収益であるキャピタルゲインは税務計算上の益金とはなりません。また、同じく資本取引による損失であるキャピタルロスについても税務上は損金算入されません。

 次に、香港とシンガポールの相違点です。香港では受取配当金は非課税ですが、シンガポールでは必ずしもそうではありません。シンガポールでは、シンガポール国内の関係会社、投資先からの配当金については、課税されませんが、シンガポール国外の関係会社、投資先からの配当金については、税率15%以上の国から配当がされており、かつ、当該配当の源泉となる所得がその国で課税済みである場合のみ、国外源泉所得免税の対象となり、課税対象となりません。

 香港では、原則、繰越欠損金は無期限に繰り越すことができます。ただし、会社設立後も営業収入がなく、費用のみが生じている場合には、課税所得を生み出すために生じた費用ではないものとして、事業所得税上の欠損金と認められない可能性はあります。また、主要株主が変更し、事業内容が変わった場合も繰越欠損金の繰り越しが認められません。一方で、シンガポールでも繰越欠損金の無期限の繰り越しは原則的に認められておりますが、こちらは主要株主に変更がないことを条件として、認められることになります。

 外国税額控除制度は、香港ではオフショア所得が非課税で通常は二重課税が生じないため、原則として適用はありません。ただし、租税条約の締結国との間で実際に二重課税が生じた場合には、外国税額控除の適用は認められます。一方で、シンガポールでも外国税額控除制度は設けられており、こちらは、租税条約の締結国および租税条約を締結していない国に対しても一定の場合に外国税額控除が認められます。


個人所得税

 香港においてもシンガポールにおいても、現地にて雇用の源泉がある場合は原則として給与所得税の納税義務が生じます。香港における課税の原則は、雇用関係が香港域内にある場合に雇用関係から生じたすべての収入に対して課税されます。一方で納税者が香港域外での雇用関係をもっており、その者が香港域内で提供している役務に対して収入を受ける場合には日数を基準に所得が計算されます。
 
 また、短期滞在者免税制度があり、本人が香港居住者でなく、香港滞在が1課税年度で60日以内の場合には、給与所得税は免除されます。税額計算について香港では、総所得から基礎控除等の控除額の差し引いた額を課税所得とし、この課税所得に一定の累進税率を乗じて計算した額と課税所得に標準税率(15%)を乗じて計算した額のいずれか低い金額が納税額となります。このため、高所得者のように、累進税率による税額が標準税率を超える場合にも、標準税率が適用され、最大で15%の課税となります。
 
 一方、シンガポール居住者の課税対象となる所得は、シンガポールで生じる所得のみであり、国外源泉所得は非課税となります。シンガポールの税額計算については、給与所得者の場合で、シンガポール居住者の場合には一定の累進税率に基づき課税されます。香港同様、短期滞在者免税制度があり、暦年で60日以下の滞在は免税、60日超183日未満の滞在は準居住者として定率(15%)での課税となります。ただし、この場合にも、居住者として算出した税額を下回ることはできません。
 
 個人所得税については、毎年の課税対象期間は、香港が4月1日から翌年3月31日までであるのに対して、シンガポールの課税対象期間は1月1日から12月31日までとなっております。


その他の税制

 そのほか香港およびシンガポールには日本の住民税などに該当する税制度はありません。また、相続税・贈与税についてもシンガポール、香港ともにありません。源泉税については、シンガポールでは、非居住者に支払う利子、ロイヤルティーなどに源泉税が発生するのに対して香港には源泉税はありません。このため、利子などに非居住者への支払いについても源泉徴収は不要です。ただし、非居住者が香港の無形資産使用者からロイヤルティーを受領する場合はそのロイヤルティー額の30%がその非居住者のみなし所得と取り扱われます。また、シンガポールでは、日本の消費税とよく似た制度である、財貨およびサービス税(GST)が発生しますが、香港には消費税のような税制度はありません。
(この連載は月1回掲載します)

筆者紹介
フェアコンサルティング(香港)
 東京、大阪、香港、上海、ベトナム、シンガポール、インドを拠点に多数のグローバル企業のサポートを行っているフェアコンサルティンググループの香港拠点。同グループは国税当局や大手会計事務所出身で経験豊富な公認会計士、税理士スタッフが、日系企業が抱える諸問題を解決するための税務・財務戦略を企画・立案・実施支援しています。
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