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最新号の内容 -20120323 No:1354
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 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)
 

成熟化する中国マーケットは拡大

三井不動産株式会社  
香港支店支店長 加賀陽一さん     

【プロフィール】
1989年、一橋大学商学部を卒業後、三井不動産株式会社に入社。東京本社で管理部門、福岡支店で住宅地の造成部門担当後、2001年、東京本社で外国人向け賃貸住宅事業を担当、その後、東京ミッドタウン事業部統括、開業・オペレーションに携わり、08年に国際事業部統括。11年8月より香港支店支店長。


 
——昨年8月に香港に進出したばかりだそうですが、御社の事業内容を教えてください。
 当面の役割は積極的に展開している中国アジアビジネスのサポートです。中国本土では05年から上海を皮切りに北京、広州に進出しています。この3拠点を軸に北は天津、大連から寧波、南は仏山などで開発プロジェクトに取り組んでいます。今の中国はまさに日本の高度経済成長期に似ています。労働賃金が上がるのは個人の購買能力が上がるということ。今後オフィス需要がますます伸びて高級住宅の関心も高まり、余暇も増えてきたらレジャー施設のニーズも高まっていくでしょう。われわれにとって消費者を中心としたマスマーケットが広がるチャンスだと思っています。
 
——本土でのビジネスは何かと規制がありますが。
 不動産業そのものが規制業種なので日系を含め外資系企業が土地を取得するのに地元企業とのJVでないと100%の取得は困難です。香港の企業も返還前は外資系として参入していましたが、返還後は先進的な不動産開発ノウハウを積極的に本土に導入したことで中国政府からの信頼も厚く、内国民待遇になっているケースもあるようです。つまり場合によって外資扱いだったり国内企業扱いだったりします。
 
——そんな特例があるんですね。
 これをうまく生かして香港企業は積極的に本土に参入しています。われわれはこうした香港企業を信頼できるビジネスパートナーとして手を組み、さらに本土へのビジネスを拡大していくことも考えています。
 
——ここ10年の中国の不動産業の特徴は?
 01年のWTO加盟以降、経済自由化のスピードアップと輸出の拡大を図り、製造業を中心とした土地開発が進んでいったので不動産業は大きく飛躍しました。03年のSARSで一時は経済的に陰りを見せましたが、本土から香港への個人旅行を自由化したり、CEPAを結ぶことによって不動産の下落を食い止めました。08年のリーマンショックでは中国政府による4兆元の景気刺激策の多くがインフラ整備に使われたのが大きかったですね。世界経済の影響を受けながらも政策を機動的に運用することによっていち早く悪い流れから脱却してきたというのがこの10年くらいの中国不動産の特徴です。
 
——勢いは止まりませんね。
 そうですが将来においては不安要素もあります。例えば一人っ子政策。少子化を政策的にやっているということは労働者人口が増えない社会になる。つまり活力の衰退です。中国の人口は25年をピークに減ると言われていますし、高齢化も速いペースで進むとも言われています。高齢化社会になると消費意欲は落ちてきますし経済的にプラスのことは多くない。われわれも今後の流れを見ながら慎重に動いていきます。
 
——香港の不動産事情はいかがですか。
 非常にアップダウンの激しいマーケットですよね。返還前後20年を見てみますと、賃貸者契約は2〜3年の短期で、一度切れると倍近くの家賃を請求されることもあります。これは世界的に見ても珍しいこと。その一方で情報開示に関してはとても透明ですね。登記所に行けば誰が誰にいくらで取引したかというのが一目りょう然。日本ではありえないですよね。
 
——他社とはどのような差別化を図っていますか。
 不動産は成果が表れるのに時間がかかる業種です。どうやって先を読むかは既存のお客さまや投資家、ユーザーの皆さんの声を丹念に拾っていくことに尽きます。そのためのリソースは他社に負けません。また商業施設、オフィスビル、分譲賃貸、ホテルといったバリエーションのある不動産が強みですね。
 
——今後の展望について教えてください。
 中国はより成熟化が進んでいくと思います。お客さんが住宅の質を求めたり、商業施設に求める水準も上がっていき、選別する目も養われてくる。そういう意味では運営面では人材教育など日本人ならではの洗練された部分をうまく導入していきたいですね。「三井の物件だったら安心して住める」「三井だからなんか楽しそう」という三井不動産らしさを認知してもらい、存在感を築けるように成長していきたいですね。
(この連載は月1回掲載)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。