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最新号の内容 -20120224 No:1352
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難しい工事にあえてチャレンジ

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

西松建設株式会社
 香港営業所所長 林 謙介さん   
【プロフィール】
 1955年兵庫県生まれ。78年、京都大学土木工学科卒業。同年、西松建設入社。中部支店で現場勤務した後、82年に香港支店に。89年より英国に留学、91年に再び香港支店に工事部設計課係長として勤務。2004年に東京本社にて海外事業部、海外土木部長として勤務、08年7月より香港営業所長。

——香港に進出して50年ですね。これまでどんなプロジェクトにかかわってきましたか。

 下城門水塘というダム工事が最初で、その後は水供給、コンテナターミナル、地下鉄・道路などの交通輸送インフラ、空港、発電所と多岐にわたります。

——特に大掛かりなプロジェクトは?

 1998年開港の新空港の敷地造成工事です。1500億円を投じた大掛かりな工事でした。敷地が1250ヘクタールあり、ベルギー、オランダ、英国、米国の企業と組んでJV(ジョイントベンチャー)のリーダーを務めました。
 
——こうしたプロジェクトはどのように依頼されるのですか。

 政府やMTRなどの大型工事ですと、興味を提示した業者に対して過去の実績などをベースに事前資格審査が行われます。それに通った数社が、入札に参加し、数カ月かけて計画書・見積書を作成、提出し、結果を待つという流れです。
 
——建設業界にとって香港市場とは?
 香港は開かれた市場です。英語で仕事ができ、契約の原点は英国の約款がベースになっています。日本の建設業界は広い国土とそれに見合ったインフラ整備に対する膨大な投資という背景があるので独自の発展ができましたが、香港は短期間にインフラが必要であるのに対し地場の業者がそこまで育っていません。必然的に海外の建設会社に頼らざるを得ず、フェアな競争の場をつくり海外企業のいいところを吸収し迅速にインフラ整備をするという形になっています。
 
——プロジェクトを選ぶ基準は何ですか。
 入札をするには時間と資金が必要です。リターンがなければ駄目ですね。どの工事が勝ち目があるのかを考えて選びます。トンネル関係が多いですが、あまり専門的でなく地元建設会社でもできるものだと勝ち目がないです。10億、20億円の工事だと見積もり期間も1〜2カ月と短いですが、楽なのは取れない。あえて難しい工事にチャレンジし大手が出てくる場で闘わないといけないんです。
 
——そういう意味ではMTRのプロジェクトは大きいですね。

 2010年には西港線の工事(48億香港ドル)を地元企業と、そして昨年は南港線と観塘線延伸工事のうち2工区(42億香港ドル)を単独受注しました。

——2年連続で大規模な受注額ですね。

 これまで仕事をしてきて本当にうれしかったプロジェクトのひとつです。1年かけて取り組んだ結果がこのような形に結びついたと思っています。
 
——ここ10年間の業界の流れをどう見ていますか。

 90年代は香港の建設業の黄金時代といわれましたが、SARS(重症急性呼吸器症候群)以降は厳しくなり07年くらいには、ピーク当時の40%程しか建設投資がありませんでした。その後10大プロジェクトなどで徐々に公共工事は伸びていますが、実は新たな問題も発生しているんです。

——と言いますと。

 厳しかった時期に離職した人が多かったので人手不足なんです。しかも建設業は香港でも3D(Demanding・Dirty・Dangerous)と言われていますから。今作業員は50歳以上の人が多くを占めていますので若い人材をいかに確保するかが新たな課題です。

——今後の事業展開について教えてください。

 今後3〜5年は年間およそ600億香港ドルの公共投資の継続が約束されています。山と岩盤に囲まれた香港では鉄道・道路トンネルと地下空間有効利用が今後推進されます。また大量に発生するゴミをどう処理するかという課題に対応するため大規模焼却施設の建設も迫っています。広州—香港間高速鉄道、港珠澳大橋はすでに着工されていますし、深圳とのボーダー周辺開発、香港・深&`空港間鉄道計画もあります。
 
——トップとして不可欠な要素を教えてください。

 迅速な行動を取り、かつ常に気を使えるか。われわれのように現地単品生産を行う業種では予想外の局面に遭遇します。その時々で決断を下さなければいけません。「タイムリーな最良の判断を下すこと」はなかなか難しい。でも多少間違えてもいかに迅速に判断するか、これこそ最も大切な要素ですね。
(この連載は月1回掲載)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。