香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20120120 No:1350
バックナンバー

グローバル化舞台は地球全体

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。(インタビュー・楢橋里彩)

JTB(Hong Kong)LTD.(佳天美香港有限公司)
取締役支店長 治福 司さん

【プロフィール】
 1961年、東京都出身。立教大学社会学部観光学科を卒業後、84年にJTB入社。93〜99年にシドニー駐在、99年〜2005年にJTBワールド ルックJTB企画課長、ロサンゼルス、ニューヨーク駐在を経て09年より香港。趣味は朝のウォーキングとゴルフ。


 
——香港支店はアジアで最初の拠点ですね。

  はい。1967年に開設し、今年45周年を迎えます。JTBは日本では今年100周年を迎えます。
 
——御社の香港支店の強みを教えてください。
 人的ネットワークです。32カ国86都市、中国では北京、上海、広州、香港、マカオに600人の社員がいることです。香港では日系企業で唯一のバス会社を保有し、ホテル、レストランの仕入れ、専用の日本語ガイドサービスの提供、各種オプショナルツアーを提供していることです。
 
——香港でビジネスをする上でのメリットとは?
 エネルギーあふれる人が多いので人材はかなり強い。私たちの産業はモノでなく人材勝負ですから、そういう意味ではエネルギッシュでスピード感があるのがいいですね。掲げた目標に対して貪欲な姿勢が、ありがたいことに非常に強みであります。あとはアジアの中の中心的なロケーションですよね。日本からも4時間、アジア各地にも近いということで重要なハブになり、ビジネスには申し分ない場所です。
 
——旅行業界はどのように変わってきていますか?
 従来の店舗や代理店に行って旅行を申し込むスタイルでなく、ネットで旅行商品を買い求めることが日常化したことが大きいです。利便性を考えるとウェブは帯同してくると思いますが、一方でお客さまがヒューマンタッチのサービスを求める消費行動もあります。最後に背中を押してもらいたいというときにプロであるわれわれが情報を薦めて提案できます。利便性だけではないそれ以上の価値を見いだしてもらうためにも、今後も試行錯誤しながら努力していきます。
 
——この約10年、重症急性呼吸器症候群(SARS)や金融危機、さらに震災と、旅行業界も打撃を受けたと思いますが。
 われわれの産業は平和じゃないと成り立たないので、どんなことが起き、どう耐えるかという部分はチャレンジングなところでもあります。震災後についていえば断腸の思いの人員整理がありました。なるべく人に手をつけない方策を考えなければいけません。そういう意味で今後は1つのマーケットだけでなく、いろいろな国のお客さまをハンドルし多角的なものの見方をしてビジネスを推進することを考えています。
 
——よりグローバル化を目指すということですね。
 そうです。ゆくゆくは欧州マーケットにも挑戦したいですし、舞台は地球全体です。これまで培ってきた日本人の求める「旅」の嗜好性ということ以前にグローバリゼーションやダイバーシティといったわれわれ自身の姿勢が大事だと思います。ビジネスを獲得するまでのプロセス、そのビジネスを成功させるためのノウハウ、われわれの提供したサービス対価を漏れなくいただくスキル。そうした日本で意識することない当たり前のことがチャレンジそのものなんです。
 
——中国の規制緩和で本土から香港にくるお客さんも年々増えていますが。
 弊社は中国からのインバウンド窓口を設置しており年間13万人のお客さまにご利用していただいてます。数は大きいですが広東省から日帰りのお客さまが圧倒的に多いので売り上げベースではまだまだです。
 
——香港と本土のビジネス展開は異なりますか。
 同じです。ただ中国本土の場合はライセンスの問題があり、インバウンドは可能ですがアウトバウンドが完全ではありません。ようやく北京支店がライセンスを取得しアウトバウンドビジネスが可能になりましたが上海や広州はまだです。
 
——今後の事業展開について教えてください。
 グローバルビジネスを目指します。インドに昨秋支店を開設しましたが、日本人に特化したものから発展させて、もう少し世界に目を向け多様性を理解しながらビジネスを発展させていきたいです。そして香港、アジア、欧米のお客さまから評価される企業に成長してさらにブランディングを構築していきたいですね。
 
——トップとして常に心がけていることは何ですか。
 約束は守る。人の立場を理解する。常に前向きに、最後まであきらめない。私利私欲を捨てることです。そして人がやってほしいことを期待通りに返すこと。常にプロフェッショナルでありたいと思っています。
(この連載は月1回掲載)

【楢橋里彩】
フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。