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最新号の内容 -20111118 No:1346
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経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

香港皮切りに中国進出に注力

 

 

シェイプアップハウス 取締役副社長・最高財務責任者(CFO)マルコ・ムリロさん
 
【プロフィール】
 1966年、南米エクアドル出身。The University of Chicago Graduate school of business MBA卒業。米ニューヨークで下村朱美・社長と出会い(当時は医学部生)、その後結婚して来日。来日以降、社内の経理、人事、そして国際部門のトップ。
 
——ミスパリの誕生は今から29年前なんですね。
 社長の下村朱美が自分の店を持ちたいと大阪、難波につくったのが始まりです。当時は資金力もなく倉庫の2階でスタートでした。店名も豪華な名前にしたかったのですが、さすがに元倉庫なのでシェイプアップハウスにしました。
 
——当時はエステサロンが浸透していなかった時代だったと思うのですが。
 創業当時はすべて自分たちの足で宣伝しました。朝早くマンションの郵便ポストにチラシを入れ、仕事が終わったらまたポストに入れにいくという繰り返しでした。地道な努力が実って少しずつお客さまが入るようになり、創業当時からのお客さまや親子三代で通われる方もいらっしゃいます。
 
——86年には日本初の男性専門エステ「ダンディハウス」が生まれましたね。
 お客さまから「主人がおなかが出ているんだけど何とかしてくれないか」とか、「息子のにきびがひどくて何とかしてください」と相談を受けていたんです。当時は女性専用サロンしかなかったので、思い切って事務所の一部分つぶして急きょダンディハウスをつくったんですよ。
 
——男女どちらのほうがダイエットしやすいと思いますか。
 もちろん男性です。女性はどちらかというと感情で動きやすい(笑)。ホルモンバランスは男女とも違うので仕方ないのですが、男性は理論的に話をしたら納得してまじめに取り組んでくれます。でも痛みには女性の方が強いですね。
 
——なるほど。男性がエステに行くのは特にどんなときですか。
 
 日本では30〜50代の方が圧倒的に多いです。特に健康診断の受診後ですね。メタボリックな体型の人が体を気にし始めて相談に来るケースもあります。
 
——エステサロン以外にも育成スクールを立ち上げていますね。
 
 エステティシャン養成スクールや専門学校など10校近くつくりました。幅広い世代のお客さまに対応するには満足してもらえる技術はもちろん、高いコミュニケーション能力も必要になります。日本発信のエステサロンとして和のおもてなしの心を大切に、世界に通用するエステティシャン育成を目指しています。
 
——09年に初の海外店舗を出しましたが、なぜ香港だったのでしょうか。
 
 当初はニューヨーク、パリ、ジュネーブなど欧米を候補にしていましたが、ホワイトニング(美白)の話をしているとき、なぜこだわるのかと聞かれたんです。欧米では美の感覚がアジアとは違うんですね。「白くなるのは病気」と言われたくらいですから。その結果、アジアの国際都市である香港ならば受け入れてもらえるのでは、と決めました。
 
——香港店のお客さんはいかがですか。
 
 当初は日本人が多かったですが香港のお客さんが増えてきて今では半々です。香港のお客さんに日本スタイルのサロンが受け入れられている証拠ですね。香港では事業展開するだけでなく今後はすべての海外事業の統括本部の位置付けにしていく予定です。
 
——まずは香港を皮切りにアジアに進出ですね。
 
 今は上海に1店舗ありますが中国本土では北京、深&`、広州など10カ所くらいを考えています。進出する1つの目安は人口が3000万人以上の地域です。上海にも数店舗出します。他国も検討していますが、今年と来年は本土に集中して拡大していきます。
 
——エステ業界も厳しい時代がありましたか。
 
 ほぼ右肩上がりです。それでも厳しい時期はありました。そういう時は決まって教育の原点に戻るんです。売り上げが芳しくない時は、いったん営業を中断してスタッフの教育を見直す。人を育てることを大切にしています。
 
——ビジネス成功の要素は何だと思いますか。
 
 常に学び情報をキャッチすること。あらゆる国の経済や政治情勢などを見ながら今後の進出先を検討します。中国も10年、20年後にはさらに変わっていると思いますし、日本も人口の減少、高齢化社会になりつつあります。エステサロンとしてどう社会と向き合っていくか。常に時代の流れに合わせて未来につなげていきたいですね。
(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。