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最新号の内容 -20110812 No:1339
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著名バイオリニスト
五嶋みどりさん来港

バイオリニストの五嶋みどりさんが6月24、25日、香港フィルのコンサートに出演した。みどりさんは演奏家としての活動のほか、社会貢献活動も積極的に行っている。先ごろは香港公演に先立ち、北は福島県郡山市、南は高知県四万十市まで、日本各地の学校やこども病院など17カ所を訪問。さまざまな活動について話を聞いた。(聞き手・綾部浩司)

香港フィルと共演 

——「ミュージック・シェアリング」を始めたきっかけは?   

 2002年に設立したNPO「ミュージック・シェアリング」の前身は「みどり教育財団(Midori&Friends)東京オフィス」で、「Midori&Friends」は1992年に米ニューヨークで設立しました。きっかけは80年代後半に米国政府が芸術一般に対する予算の削減を打ち出したことです。私自身、何かしなくてはという使命感のようなものを覚えたからです。しかし私の個人的な活動では制約や限界がありますし、クラシック音楽やバイオリンだけに限りたくなかったので、組織化しました。それが「みどり教育財団(Midori&Friends)」の始まりです。

 また日本では独自のプログラムを実施したいと考え、「ミュージック・シェアリング」を新たに立ち上げて、さらに日本の事情に合わせたプログラムを行ってきました。訪問プログラムでは西洋音楽だけでなく、箏や笙の邦楽演奏家が子供たちのもとを訪れ、お話しや演奏体験を交えたコンサートを行うこともあります。

——ICEPではどのような活動を?

 「インターナショナル・コミュニティー・エンゲージメント・プログラム(ICEP)」では、世界中からオーディションで選ばれた若手音楽家と私が弦楽四重奏を組み、例年12月にアジアの子供たちに本物の音楽を届ける活動をしています。西洋の弦楽器を見たことも、演奏を聴いたこともない子供たちが私たちが演奏しているのを見て、聴いて、自分たちの知らない世界があることに気付くことによって好奇心を芽生えさせ、向上心を育むことを目的としています。なぜ日本のNPO法人がアジアの国々で活動を行うのかというと、アジアの発展に経済的に貢献してきた日本が文化面でも同じような役割を果たすべきだと思ったからです。

 そして、翌年5〜6月に日本の子供たちに現地の子供たちの前で演奏した音楽を聴いてもらい、現地の同年代の子供たちが置かれた環境や現状を語りかけると、日本の子供たちは異なるバックグラウンドを持つ他国の子供たちがどのようにその音楽を享受したのか、と思いをはせることにつながります。

——国連ピース・メッセンジャーとは?

 国連ピース・メッセンジャーには、その各自の分野で国連の活動や平和の問題などをアピールしていくことが求められます。国連から依頼された具体的な活動というものはなく、私が普段行っている活動を通して、一人でも多くの方に国連の「ミレニアム・ゴール(ミレニアム開発目標)」に関心を持っていただき、世界のさまざまな問題に目を向けてもらえるよう努力するのが、私に与えられたミッションです。

 ICEPの活動を通じ、現地の子供たちの実情を報告コンサートなどで一般の方々や日本の子供たちにも伝えることも、国連ピース・メッセンジャーを務める私の役割だと思っています。

——これらの活動はそれぞれどのように関係していますか?

 個々の活動はすべてつながっていて、どれも私にとって大切な活動です。時々「こうした活動が演奏にどのように影響を与えていますか?」という質問を受けますが、音楽のために社会貢献活動をしているわけではなく、音楽活動のすべてが知識も人の輪も広がる喜びにつながっています。これらの活動を通じて、普段のコンサート活動では体験できない貴重な経験をたくさんさせていただいていると思います。人々との出会いや触れ合いはとても刺激になりますし、インスピレーションが湧いたり、新しいアイデアが浮かんだりすることもあります。

——今回の2年ぶりの香港公演の感想と今後の予定を教えてください 

 今回の香港フィルのコンサートは、共演する指揮者もホールも演奏する作品もすべて異なるので、とても楽しみにしていました。次回の来港は未定ですが、2〜3年おきにオーケストラとの共演やリサイタルを行っているので、また近い将来、香港を訪問できればと思っています。新譜についてよく聞かれるのですが、今後の録音予定は特にありません。コンサートやさまざまな社会貢献活動のような「ライブ」の方が私は好きなんですね。


〜演奏会後記〜 
筆者は1985年8月6〜7日の広島平和コンサートで初めて、当時13歳だったみどりさんの演奏を聴いた。以後何度となく彼女の演奏に接したが、いつも彼女の音楽に対する並々ならぬ「突き詰め方」に毎度圧倒されている。2年前の香港フィルとの共演でもそうだったが、今回の公演でもみどりさんのバイオリンが作品のすべてを引っ張っていくような印象だった。また香港フィルのサポートは実に見事なもので、時にはバイオリンに寄り添い、時には対峙し、まさに息をのむような丁々発止な名演奏が繰り広げられた。
(取材協力:Hong Kong Philharmonic Orchestra、オフィスGOTO、筆者ブログ:http://battenhongkong.blog.shinobi.jp/


バークレイズ・トロフィー
チェルシーに香港熱狂

優勝トロフィーを手に喜ぶチェルシーの選手

 サッカーのエキシビションマッチ「Barclays Asia Trophy(バークレーズ・アジア・トロフィー)」が7月27、30日、香港スタジアムで開催された。この大会には英プレミアリーグの3チーム「チェルシー」「アストン・ビラ」「ブラックバーン・ローバーズ」と地元香港から昨シーズンのリーグチャンピオン「傑志(キッチー)」が参加した。世界的に高い水準で知られるプレミアリーグは英国領だった歴史からも香港でも圧倒的な人気を誇り、決勝が行われた大会2日目には満員の4万人が来場した。

 

ファンの声援に応えるトーレス(撮影・馮耀威)


大会初日はチェルシーと傑志が対戦した(撮影・馮耀威)

 30日の3位決定戦はローバーズが0対3で傑志を下した。続くチェルシー対ビラの決勝戦はキックオフからわずか30秒のゴールで先制したチェルシーが後半にも追加点を決め、2対0で優勝を飾った。 今回最も注目を集めたのはチェルシーのストライカー、フェルナンド・トーレスだ。甘いマスクで「スペインの王子」とも呼ばれる彼は決勝戦は後半途中から出場したにもかかわらずピッチに立った途端にゴールを決め、会場を沸かせた。試合後、チェルシーのビラス・ボアス監督は4対0と大勝した初日同様、笑顔で会見。得点者については特に言及せず「誰が点を取ろうと、うれしいのは同じ」と話し、「大切なのは私たちが点を取り続け、勝ち続けることだ」と今月13日に開幕を控えた新シーズンへの意気込みを語った。