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最新号の内容 -20170512 No:1478
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《99》

企業取引における
サプライチェーンファイナンスの活用(後編)

 昨今、新聞・雑誌やインターネット等で「サプライチェーンマネジメント」という言葉を目や耳にする機会が増えている。このサプライチェーンマネジメントの中で、企業の生産活動における資材の安定調達、利益率の向上、そして資材調達コストの削減に寄与するべく、金融機関が提供するソリューションについて、その仕組みとメリットを中心に紹介したい。(みずほ銀行グローバルトランザクション営業部 東アジア室 小塚聖・金子 裕資)

 

双方のニーズを満たすカラクリ

 では、バイヤーはどのようにして支払期間の延伸、または資材調達価格の引き下げを達成するのか。そのためにはまず、この仕組みによりサプライヤーが得られるメリットを理解する必要がある。それはすなわち売掛債権の早期資金化ということになるが、より詳細に見ると、表1のようなメリットが挙げられる。
 

表1 サプライヤー側におけるメリット


 なお、これらのうち、資金調達コストの削減については、サプライヤー自身の信用力に比べバイヤーの信用力が高いことが前提になる。また、オフバランスシート効果については、サプライヤー自身で会計士または監査法人に確認し、承認を得ることが必要になるだろう。

 さて、サプライヤーファイナンスの導入に当たり、バイヤーはまず表1に挙げられているメリットをサプライヤーに理解してもらう必要がある。取引条件の見直しをせずとも、当然ながらバイヤーにもメリットは生まれるが、さらにその先を見据え、バイヤーが自社のニーズをどのように達成すればよいのか、そのプロセス(図4)に触れたい。
 

図4 取引条件交渉におけるプロセス


⒜取引条件を不変とした場合におけるバイヤーのメリット

 サプライヤーファイナンスをバイヤーの立場にあるお客さまに提案した際に、「支払期間も資材調達価格も変えない場合、当社にメリットはあるのか」という質問を受けることがある。取引条件を現状から変更しなくても得られるメリットとして、以下の各点が挙げられる。

①サプライヤーの資金繰りサポートと囲い込み

②サプライヤーからの資材安定調達

③サプライヤーとの関係強化

LC等で支払いをしていた場合における金融コスト削減

 なお、グループ間商流で子会社がサプライヤーの立場であれば、親会社の信用力で資金を調達でき、グループ会社の運転資金借入にかかるコスト削減や、銀行の借入枠の温存目的で活用することも可能であることを付け加えたい。


⒝支払期間延伸によるバイヤーのメリット

 表1から読み取れるように、サプライヤーはサプライヤーファイナンスを利用することで期日前の資金回収が可能となる。つまり、支払期間が従前より長くなってもその影響を軽減できる。そのため、バイヤーはサプライヤーファイナンスを金融機関から提供してもらうことと引き換えに、自社の支払期間を延長することで、サプライヤーへの影響を最小限にしつつ、以下のメリットを得ることが可能になる。

①キャッシュフロー捻出による資金繰りの改善

②サプライヤーへの支払から販売代金回収までの運転資金が必要な期間の短縮、およびそれに伴う運転資金調達コストの削減

③必要運転資金削減による有利子負債の圧縮、およびそれに伴うバランスシートの改善

 そして、資金繰りの改善によってフリーキャッシュフローが増えれば、今後の事業拡大資金としての運用や、新商品の研究開発への投資も可能になる。
 

⒞資材調達価格引き下げによるバイヤーのメリット

 一方、サプライヤーファイナンスの導入を通してバイヤーが資材調達価格の引き下げを実現させるには、2つのステップに分けて考える必要がある。

 はじめに、サプライヤーが早期資金回収をする際に発生するコストに着目すると、このコストはバイヤーの信用力に基づいて金融機関が決定する。バイヤーの信用力がサプライヤーの信用力よりも高い場合、このコストは少額で済む傾向にあり、サプライヤーファイナンスを利用しての資金調達はサプライヤーにとって資金調達コストの削減となる。

 そこでバイヤーは、サプライヤーが資金調達コスト削減のメリットを享受できる対価として、資材調達価格の引き下げが交渉可能になる。そして、資材調達価格の引き下げにより、以下のメリットを得られる。

①調達コスト削減による、利益率の向上

②販売先への販売価格の調整による、市場競争力の向上

③研究開発等への投資の増額

 ここまでの説明の通り、サプライヤーファイナンスの導入は、バイヤーにとってさまざまなメリットの追求を可能にする。そして、ここで重要な視点は、この仕組みの導入を検討する際に、バイヤーは何を目的とし、具体的にどの程度の効果(ニーズ・目的の達成)を求めるのか、である。バイヤー・サプライヤーの双方に対する導入目的と効果を明確にするため、銀行など金融の専門家によるコンサルティングを活用されることをお勧めしたい。


どのような企業がこの「仕組み」を取り入れているのか

 サプライヤーファイナンスという仕組みは、グローバルの視点に立ってみるとさほど新しいものではなく、全世界でさまざまな業種の企業に取り入れられている。弊行がサプライヤーファイナンスを提供している例も「OA機器」、「自動車」、「自動車部品」、「モーター部品」、「小売業」、「携帯電話・部品」、「玩具」、「食品」など多岐にわたり、この仕組みを利用して多数の企業がサプライチェーンマネジメントを強化している。

 さらに、バイヤーにおけるメリットを最大限に引き出すために、より多くのサプライヤーに対してこの仕組みを導入し、大規模に支払期間の延伸や資材調達価格の引き下げをしていくことが考えられる。例えば弊行では、バイヤーの大規模なサプライヤーファイナンスによる大量のプロセス処理に対応するため、バイヤー・サプライヤー・弊行がすべてWebベースで取引を行える仕組みの提供を開始している(図5)。現時点では主要国・地域での提供を既に開始し、日系企業のサプライチェーンのグローバル化に対応すべく、順次提供する国・地域を増やしていく予定である。
 

図5 Webベースでのサプライヤーファイナンス


最後に

 前編の冒頭で述べた通り、サプライチェーンマネジメントは企業の生産活動の最適化の観点から確実に注目度を増している。そして、グローバルに展開する日系企業が増える中、世界規模での競争に生き残るためにも、多くの日系企業にとって非常に重要な課題となっている。

しかしながら、サプライヤーとの関係については、改善の余地を残す企業が多い。特に、海外で生産活動をする中で、多くの企業が現地サプライヤーとの取引を日に日に増やしている昨今の状況下、サプライヤーとの持続的なWin-Winの関係の構築は避けて通れない経営課題である。

本稿にて紹介したサプライヤーファイナンスはこうした企業の問題解決に大きく寄与する仕組みであり、サプライチェーンマネジメントの考え方とあわせてこの仕組みについて理解を深めていただき、企業の生産活動の安定化を図るとともに、更なるビジネスチャンス獲得の一助となれば幸いである。

(このシリーズは月1回掲載します)

【免責事項】本稿は情報提供のみを目的としたもので、投資を勧誘するものではありません。また、本稿記載の情報に起因して発生した損害について、当行は一切責任を負いません。なお、本稿内容の一部または全部の無断複製・転載は一切禁止いたします。