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最新号の内容 -20170310 No:1474
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2017/18年度財政予算案
黒字で将来への投資

 1月に就任したばかりの陳茂波・財政長官は2月22日、2017/18年度財政予算案を発表した。前年度(16/17年度)は過去9年で最高となる約1000億ドルの黒字を計上したため、351億ドル分の生活支援措置を打ち出したほか、高齢化対策の強化など将来に向けた長期的な投資に610億ドルを充てた。(編集部・江藤和輝)

財政予算案発表後に記者会見を行った陳茂波・財政長官ら

 16/17年度の財政収支は928億ドルの黒字、財政備蓄は3月末で9357億ドルの見込み。当初の予算に比べ公有地売却益が76%増、印紙税収入が16%増となり、歳入は12%増えた。17/18年度では歳入5077億ドル、歳出4914億ドルで、163億ドルの黒字を見込んでいる。市民の生活負担を軽減する一過性の措置として、個人所得税は2万ドルを上限に75%還付、兄弟姉妹・障害者の扶養控除を引き上げ、不動産税は1軒1四半期1000ドルを上限に4四半期免除、生活保護、高齢者手当、高齢者生活補助、障害者手当の受給者には1カ月分を追加支給。低所得在職家庭手当と交通費手当の受給者に対しても同様の措置を取る。これら生活支援措置の規模は351億ドルで、17年の域内総生産(GDP)を1・1%引き上げる効果があるとみている。

2017/18年度財政予算案の主な内容

 陳長官は予算案とともに16年の経済統計と17年の経済見通しを発表した。16年通年のGDP伸び率は前年比1・9%で、昨年11月に発表した1・5%の予測を上回った。外部環境の下振れ圧力が緩和されたため、輸出伸び率は1・7%となり前年度のマイナス成長から好転。観光業の回復に伴い小売業総販売量は第4四半期にマイナス3・6%にまで改善されたが、通年ではマイナス7・1%。消費者物価指数(CPI)伸び率は2・4%、政府の一過性の措置による影響を除いたCPI伸び率(基本物価上昇率)は2・3%で、5年連続の鈍化となった。陳長官は17年の経済動向について「先進国の経済成長は緩慢で、世界各地の政治情勢の変化による不確定要素、ポピュリズムや保護主義の台頭が世界経済の先行きをさらに複雑化させる」と懸念。ただし香港経済はインフラプロジェクトや住宅建設などの内需に支えられるとみて、17年通年のGDP伸び率は2・0〜3・0%、CPI伸び率は1・8%、基本物価上昇率は2・0%と予測している。

 予算案では4大支柱産業を強化する支援措置が盛り込まれた。貿易・物流産業については「貿易単一窓口」を設け、ワンストップ式の電子プラットホームで貿易書類を処理し通関手続きの効率を高める。海運では投資推広署(インベスト香港)が中国本土と海外での宣伝を強化。税制優遇で航空機リースと航空融資業の発展を図る。金融業では引き続き中国本土当局と人民元の双方向流通ルート拡大を検討するほか、法人税の免除範囲拡大によりファンドを誘致する。観光業では旅行社1800社とホテル・旅館2000軒は1年のライセンス費を免除、飲食店・小売店・食品販売許可証による制限を受ける店舗の計2万7000軒は1年のライセンス費を免除。さらに観光業支援に2億4300万ドルを充てる。

 

新任財政長官の去就は

 財政黒字が昨年の予算案で見積もられた110億ドルの8・4倍に当たる928億ドルに上り、返還後では07/08年度の1236億ドルに次いで2番目に多い。だが一過性の生活支援措置の予算が昨年の388億ドルより約10%減の351億ドルにとどまったことには不満も出ている。陳長官は記者会見で、多くの親政府派関係者から「バラマキを増やせば支持率が上がり、続投につながる」とのアドバイスを受けたが、そのやり方は拒否したと説明。黒字分の3分の2に相当する610億ドルを将来に向けた長期的な投資に充てた。その内訳は①老人ホームのサービス水準確保など高齢化対策の強化、障害者のリハビリサービスに300億ドル②今後5年で推進する26項目のスポーツ・レクリエーション施設整備に200億ドル③イノベーション・科学技術の発展に100億ドル④職業専門教育や校長・教員の研修支援などの青少年育成に10億ドル——となっている。

 香港大学民意研究計画は22日に599人を対象に世論調査を行った。予算案に対する評価は100点満点で55・7点と及第点で、昨年とほぼ同じ。33%が「満足」、19%が「不満」と答えた。陳長官に対する評価も予算案発表前に比べて13・4ポイント上昇し47・4点、支持率もマイナスからプラスに転じた。特に50歳以上の市民が予算案を評価し、陳長官を支持していることが分かった。

 陳長官が23日、立法会財務委員会で報告を行った際、公民党の郭家麟・議員は陳長官を「曽俊華バージョン2・0」と形容。バラマキと財政黒字を留保するやり方は「守銭奴」と呼ばれた曽俊華・前財政長官と同じと指摘し、「曽氏を怠け者、口先だけ、低所得層を顧みないと批判するならば、陳長官にも当てはまる」と述べた。これに対し陳長官は、バラマキ分を除いた財政黒字の残り分は長期的な投資に回していることを強調した。

 陳氏はもともと会計界選出の立法会議員で、12年7月に廉政公署(ICAC)に逮捕されて辞任した麦斉光氏の後任として発展局局長に就任。梁振英・行政長官の機構改革案によって新設される副財政長官の候補にも浮上していた。13年に新界東北部の土地保有で疑惑が取りざたされ、高官の中では最低の支持率となり、梁政権に対する市民の評価も下げたが、任期中は住宅用地の捻出で実績を上げた。だが梁長官が続投しない今となっては次期政権に留任できるかは未知数だ。