経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。 観光客誘致や食品輸出を後押し
——2017年の香港マカオの経済動向についてお聞かせください。
香港は16年に1・5%の成長率でしたが、今年も同じくらいの経済成長を期待しています。成熟した経済構造を持っている世界の金融の中心であり、物流の中心である香港は、日本をはじめ多くの国にとって中国本土へのゲートウェイであります。一方、マカオは14〜15年に主力のカジノ産業が本土からの大口顧客が減少したということもあり打撃を受けましたが、16年は持ち直して徐々にGDP成長率を回復しています。カジノのみならず家族連れで長期滞在が可能になるホテル、アミューズメントパークの建設など、明るい見通しがでてくると思います。 ——1月に就任したトランプ米大統領の保護主義政策で米中の貿易紛争が起こるともいわれています。香港への影響について見解をお聞かせください。
新政権の経済政策に関しては、香港のみならず全世界の人々が注目しています。こうしたなかで香港財界の指導者たちは慌てて結論を急ぐことなく、トランプ政権の具体的な経済政策がどのようなものになるか見極めていこうという冷静な態度に終始されていると思います。香港は経済的な構造ゆえに、保護主義的な風潮がでてくると心理的な影響、具体的な貿易面での影響は大きいと思います。米中の関係如何によっては香港が影響を受ける可能性は十分にあります。具体的にどのようなものか、どのように影響をうけるか、経済界が冷静に見極め対策をとっていくことが大事です。 ——中国の「一帯一路」政策による香港への影響についておきかせください。
今年は5月に北京で「一帯一路」国際協力ハイレベル・フォーラムが開催され、9月には香港において第2回「一帯一路」サミットが開催されます。昨年の抽象的な段階からより具体的に議論し色々なプロジェクトを進めていく年になると予測しています。香港政府は昨年、「一帯一路」を担当する専門ポストを作り、同政策に合わせる形でインフラ投資を促進していくための弁公室を設置し、金融センターとして「一帯一路」を資金面でサポートしていこうとしています。香港は同政策によって作られるユーラシア大陸中央部、および沿岸部に沿った様々なインフラ整備のプロジェクトに資金面でしっかり関与していく体制を作りつつあるとみています。 ——昨年は約184万人が香港から訪日し記録を更新しています。日本への観光客誘致と総領事館の役割をお聞かせください。
香港の方々が訪日旅行で最もリピート率が高いのは嬉しいですね。香港にいる中国本土の人たちは査証が必要となりますが、これまで以上に気軽に日本においでいただけるよう昨年12月にビザ発給をさらに効率良くするための「日本査証申請センター」を立ち上げました。マカオには年内に開設します。現在、香港から日本の15都市に定期直行便が就航しており、今年さらに新たな定期直行便ができるのではないかと大いに期待しています。 ——さらなる日本の貿易拡大に向けた総領事館としての役割は何でしょうか。
日本の各地方経済がさらに発展していくため「観光誘致」「食品の輸出」「対日投資」「教育交流」の4つの分野でいろいろな活動を積極的にやっていく必要があります。最近、女性農業者たちがつくった「農業女子プロジェクト」に参加している12名の女性農業経営者に香港に来ていただき、それぞれ自慢の農産品を持ち寄りスーパーやデパートで展示即売会を行いました。これは一つの試みに過ぎませんが、まだ香港で紹介されていない地方の産物を持ってきてもらい、日本の魅力を発信してもらえたらと思っています。 ——日本の産物や文化などを紹介するイベントとして昨年から「日本秋祭 in 香港—魅力再発見—」が開催されていますね。
昨年は初年度にも関わらず142のイベントを開催することができました。初めて香港に出展した企業も多く、香港市場で手ごたえを感じたと話される企業も多く、商談がまとまった企業も見受けられました。今年も10〜11月に行う予定で、さらに一丸となって楽しめる場を作りたいですね。 (この連載は月1回掲載します)
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。 |
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