首富
米経済誌『フォーブス』が先ごろ発表した2017年の香港富豪ランキング(トップ50)で、長江和記実業(CKハチソンホールディングス)の李嘉誠・会長がトップとなった。 1月19日付香港各紙によると、李氏の総資産額は303億米ドルで、前年と比較して10億ドル減ったが、19年連続して香港一の富豪の座を維持した。 誰もがしり込みするような混乱期に底値で不動産を買い、高値で売り抜ける度胸とずば抜けたビジネスセンスを持ち、「超人」と呼ばれる李氏は1928年広東省潮州のインテリ家庭に生まれた。12歳の時に戦火を逃れ家族で香港に渡り中学に進むが、父親が急死。 長男だった李氏は家計を支えるために14歳で叔父の経営する時計会社に奉公に出た。17歳でプラスチック会社の営業職に転職するも、内向的な性格のため当初は顧客開拓に向かう途中、なんどもセールストークを繰り返さなければ門をくぐれなかった。それでも入念な準備と猛烈な働きぶりで18歳で営業部長、20歳で社長に上り詰め、商才を表す。
1957年にプラスチック製造工場を始め、当時「ホンコンフラワー」と呼ばれた欧州輸出向けのプラスチック製の造花が当たるとその資金を元に不動産業に転身。1971年に「長江実業」を設立した。1979年には「和記黄埔(ハチソン・ワンポア)」、1985年に「香港電灯(ホンコン・エレクトリック)」を買収して事業を拡大し、香港最大の複合企業(コングロマリット)に成長した。 香港電灯は2010年に社名を「電能実業(パワー・アセット・ホールディングス)」に変更。同年に長江基建(チョンコン・インフラストラクチャー)、李嘉誠基金会と連合で英国の送電企業を57億7500万ポンドで買収した。域内に電力を供給する子会社の「香港電灯有限公司」は社名もそのままに2014年に香港で分離上場した。 さらに長江実業集団と和記黄埔を2015年に再編させ、通信やエネルギー、小売り事業などを長江和記実業(前長江実業)傘下に収め、不動産事業は新会社の長江実業地産(チョコン・プロパティー)に集約させるかたちで同年にそれぞれ香港で分離上場した。 この2社の登記は香港ではなくケイマン諸島となっており、近年は中国本土の不動産を売却する一方で欧州の企業買収を精力的に進めるなど海外投資を加速させている。このため、本土のバブル崩壊と香港の政治情勢を懸念して香港撤退を計画しているのではないかとの憶測が飛び交っていたが、李氏はこれを否定している。 李氏には2人の息子がおり、長男の李沢鉅(ヴィクター・リー)氏は後継者として長江和記実業と長江実業地産の副会長を務める。次男の李沢楷(リチャード・リー)氏は電訊盈科(PCCW)の会長であり、今回のランキングでは15位(同44億米ドル)に入っている。
2位は恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント)の李兆基・会長、3位は新世界発展(ニュー・ワールド・デベロップメント)の鄭家純一族となった(表参照)。 女性では、金利豊金融集団(キングストン・フィナンシャルグループ)の朱李月華・行政総裁の14位(同48億米ドル)が最高位。マカオのカジノ王・何鴻燊(スタンレー・ホー)氏の愛娘である信徳集団の何超瓊(パンジー・ホー)董事総経理が16位(同43億米ドル)、何氏の第4夫人である澳門博彩控股(SJMホールディングス)の梁安 (アンジェラ・リョン)常務董事が18位(同40億米ドル)にランクインした。 (この連載は月1回掲載します) |
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