福島県知事 まもなく東日本大震災から6年を迎える。今回は特別企画として福島県知事の内堀雅雄氏にインタビューした。今もなお福島、栃木、群馬、茨城、千葉の5県に関しては、野菜、果物、牛乳、乳飲料、粉ミルクなどの輸出が規制されている。除染などの対策を取り出荷前の検査を厳しく行うことで、安心・安全な農産物を流通する体制が整っているものの、風評被害は収まらない。こうしたなか、内堀知事に現状と課題について伺った。
——福島県の現状をおきかせください。 今もなお多くの方々が避難生活を続けており、避難地域の復興再生や被災者の生活再建をはじめ、風評・風化対策、農業や商工業をはじめとする産業の再生など、課題が山積しています。 一方で、原発事故による避難指示が一部地域で解除され、高速道路網や医療・環境分野など、福島の未来を拓く拠点施設の整備などが着実に進展しています。さらに、県産品の輸出拡大や県内観光地のにぎわいが回復されていき、全国新酒鑑評会(※独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催で行われる国内最大規模の新酒鑑評会で、明治44年から続く歴史的な品評会)での4年連続金賞受賞数日本一、2020年東京五輪・パラリンピックにおける野球・ソフトボール競技の県内誘致に向けた動きが前進するなど、明るい話題が増えてきています。引き続き、県民とともに復興・再生に向けて全力を尽くしてまいります。
福島県は、県民のたゆまぬ努力と世界中からの御支援により、震災に伴う災害復旧工事の約8割が完了したほか、被災した沿岸部を縦断する国道や高速道路の全線開通、福島の未来を開く様々な拠点施設の開所、さらには、県内経済も製造品出荷額等が震災前の水準まで回復するなど、着実に復興の歩みを進めています。ただ、その一方で、震災から6年が経過する現在も、震災当時のままの地域が一部残るなど、長期化する原子力災害の影響により、復興状況に大きな差が生じており、それぞれの地域が抱える課題も複雑多様化している状況にあります。 現在も県土全体の約5%が避難指示区域となっていますが、政府は2016年3月までに帰還困難区域を除いた区域の避難指示を解除する方針を示しており、正に避難地域の復興が正念場を迎えていくことになります。今後、さらに避難指示解除後の復興を進める上で、医療提供体制の確保、地域公共交通ネットワークの構築、学校再開への支援など、安心して住むことができる生活環境の整備とともに、失われた産業基盤の再生、さらには、外国人観光客の訪問が震災前の半分程度にとどまるなど根強く残る風評被害への対応等に、国、市町村と一体となって取り組んでいく必要があります。
震災前、香港に対しては、本県農産物の輸出量の80%を占めるなど、海外における本県の重要な市場の一つであり、「桃」や「お米」は、とても人気がありました。 いまだ香港への輸出規制が一部緩和されていない状況ではありますが、 2014年には、シンガポールへの農林水産物の輸入停止の緩和が合意、輸入が再開しており、さらに「桃」に関しては、2016年には、タイやマレーシアへの輸出を拡大、鮮度が維持できるCAコンテナで、おいしい「桃」をお届けしております。
本県の農産物については、厳しい基準の下でモニタリング検査をしっかりと実施しており、香港における輸入規制が一刻も早く解除され、皆さんにおいしい福島県の農産物をお届けできるようになることを心から願っています。
本県は、県民の強い思いである県内原発の全基廃炉について、これまで国および事業者に対し繰り返し求めてきており、今後もあらゆる機会を捉えて求めていきます。国全体の原子力政策については、東京電力福島第一原発事故の現状と教訓を踏まえ、何よりも住民の安全・安心の確保を最優先に、国の責任において検討されるべきものと考えております。
外国との関係を含む、国全体の原子力政策については、東京電力福島第一原発事故の現状と教訓を踏まえ、国の責任において検討されるべきものと考えております。
(このシリーズは月1回掲載します)
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。 |
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