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最新号の内容 -20170224 No:1473
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 香港の仕事人

 

第40回

飲食店開発(蘭桂坊)

 

香港の仕事人

英語、広東語、標準中国語を駆使する。中国語はカラオケで覚えたのだとか

 

変化を恐れずに進むガッツが必要

 

 ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。

(取材・武田信晃/月1回掲載)

 

 香港のナイトスポットといえば中環の蘭桂坊(Lan Kwai Fong)。デベロッパーなど現在の香港経済の礎を築いた人たちは年齢的に次の世代へのバトンタッチをどうするかが課題だ。それに成功したのが蘭桂坊グループ。現在のトップは創業者のアラン・ジーマン氏ではなく息子のジョナサン・ジーマン最高経営責任者(CEO)だ。

 

香港の仕事人

立ったまま仕事をすることもしばしば

 
 

 トップの息子に対する周囲からのさまざまな視線は感じていたようで、「だから一生懸命やりました。週80時間ぐらい働いていましたね」。しかし辛くて、数カ月後に父親に辞意を伝えたがすぐに諦めた。「創業者の息子がファミリービジネスに踏み入れたら…わかりますよね(苦笑)」と辞める選択肢は残されていなかった。

 

 とはいえ、やりがいも感じていた彼は再び懸命に働き始めた。その後、17ものレストランをいっぺんにマネジメントしたり、成都に新しい蘭桂坊をつくるなど経験と実績を積んでいった。2015年に建て直したカリフォルニアタワーも彼が指揮を執ったが、最も大変だったのは父親の説得だったと言う。「最初は大反対ですよ。蘭桂坊の最初のレストランの場所で、思い入れが大きかったのです。東京に連れて行っておしゃれなビルを見せたり、事業計画を見せて徐々に説得していきました。さすがに元のビルが取り壊される時はみな感傷的になりましたけどね…」

 

香港の仕事人

ジョナサンCEOが手がけたカリフォルニアタワー

 
 

  彼の印象は、ITのリテラシーが高く、多方面でビジネスに応用するタイプ。電子メールを導入した時は、当時はあまり普及しておらず懐疑的な目で見られたが、導入後は納得してもらえたそう。「気になるものはすぐに写真を撮ります。12万枚以上ありますね。頻繁に出張に出るので、例えば不動産の開発案件で問題が起きた時は、私のイメージに近い写真を送って相手に伝えます。最近はライフスタイルを紹介する『LKF tv』も開設しました」。16年後半には「LKF Monster Mash」というスマートフォン向けのアプリを公開した。新たにグループ内にゲームの部署をつくったという肝いりの事業だ。

 
香港の仕事人

どんな人なのかを思い出せるように名刺はアクリルケースを使って仕分け

 これだけ多忙にもかかわらず、レストランなどの現場に顔を出すように心掛けている。「店長だけでなくアルバイトを含めて皆とコミュニケーションを図ることが大事だからです。こうすると私のビジョンを共有してもらうこともできます」とその意図を話す。

 今後は、「中国、東南アジアを中心にさらに広げていきたいですね。失敗は怖いですけれど、変化を恐れず進んでいくガッツが経営のプロとして必要だと思います」と笑った。