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最新号の内容 -20170224 No:1473
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香港に今も残る風習

呪いに最適な日「啓蟄」

 

呪いに最適な日「啓蟄」

 

 来る3月5日は「啓蟄」。実はこの日が「呪いに最適な日」であることをご存じだろうか? 香港に今も残る啓蟄の風習を紹介する。

 

 広東省の民間伝承によると、啓蟄は動物たちが冬眠から目覚めるように、どう猛な神、白虎も眠りから覚め、えさを求めてさまよう。腹を空かした白虎が人間に悪さをしないよう、昔から啓蟄には白虎を祭る風習があり、この日は「白虎開口日」とも呼ばれた。

 

 白虎を祭る儀式は、紙で作ったトラに「拝神婆」が豚の血や脂身を与えるというもの。啓蟄には白虎だけでなく、「小人」と呼ばれる霊や病、虫やヘビなど魔ものも活動を始めるので、拝神婆は白虎の儀式と同時に小人を封じ込める魔除けの儀式「打小人(ダアシィウヤン)」を行った。これがいつの間にか「憎い相手を呪う儀式」としての色合いを強め、今のような形で残ったといわれている。

 

呪いに最適な日「啓蟄」

 

 毎年、啓蟄になると、湾仔とコーズウェイベイの境に位置する堅拿道、鵝頚橋の周囲はこの日、異様な空気に包まれる。むせかえるような線香の煙に、ろうそくの炎。ここでの主役は打小人を請け負う「拝神婆」と呼ばれる巫女たち。依頼を受けると、手に持った古い靴で一心不乱に紙切れをたたき、火にくべる。紙切れは「打小紙」という呪いの紙だ。

 

 だが、人を呪うにしてはかなりオープン。仮に儀式を知り合いに見られても、この日だけは免罪なのかもしれない。小人紙を打つときには、呪いたい人の写真や洋服を一緒に靴でたたくとさらに効果的だという。また、靴は亡くなった人の物を使うといいそうだ。

 

 打小人は啓蟄に限らず一年を通して行われるが、啓蟄以外では占い本『通勝』にその年の何月何日が打小人に向いた日かが記されていて、その日に行えばより効果があるという。場所は橋の下や三差路、道端など。これらの場所は魔ものが集まりやすいからなのだとか。

 

 打小人は人を呪い苦しめるだけでなく、邪気払いや魔除けとしても行われる。例えば、昨年は不運続きだったので、今年は自分や家族に災難や不幸が降りかかることを避けたい、という場合にも行う。インフレや不況で生活が厳しくなる昨今、今年も大勢の人が邪気払いに訪れそうだ。