香港ポスト ロゴ
Google:
  サイト内 google
  ホーム
  読者の広場
  クラシファイド
  配布先一覧
  バックナンバー
   
 
 
 
 
最新号の内容 -20170210 No:1472
バックナンバー

 

故宮文化博物館の建設問題
政治化された批判の声

 

ケリー・ラムが贈る香港夢

ケリー・ラム(林沙文)

(Kelly Lam)教師、警察官、商社マン、通訳などを経て、現在は弁護士、リポーター、小説家、俳優と多方面で活躍。上流社交界から裏の世界まで、その人脈は計り知れない。返還前にはフジテレビ系『香港ドラゴンニュース』のレギュラーを務め、著書『香港魂』(扶桑社)はベストセラーになるなど、日本の香港ファンの間でも有名な存在。吉本興業・fandangochina.comの香港代表およびfandangoテレビのキャスターを務めていた

 

 どの国にも歴史があり、文化があります。その歴史、文化を認めて尊重し、勉強するのは当然のこと。たとえ自分の政府に不満でも自分の国を愛さなければいけません。それは国民の持つべき精神だと思います。

 前回このコラムで、2人の議員候補者が立法会で宣誓する時に中国を侮辱したため、中国政府は基本法の解釈権を行使して2人の議員資格が取り消されたことを解説しました。この宣誓事件以外にも1997年の香港返還以来、香港の議員たちが反中国の言論をすることは日常茶飯事になっています。このような言動からみると、約3分の1の議員が本当に香港基本法の精神に従って基本法を擁護するのか、一国二制度を擁護するのか大変疑問です。なぜなら前議員や現職の議員たちの行為が、議員という身分や影響力を利用して香港特区政府や中央政府に反抗するように見えるからです。


議員まで国旗を軽視

 去年10月の立法会で、宣誓問題でもめた後に親政府派(建制派)の議員たちが現場を離れると、ある議員候補者が親政府派議員たちの座席に立ててある中国国旗と香港特別行政区の区旗を勝手にさかさまにする様子がテレビ中継で映っていました。これは信じられない、おかしい行為です。こんな子供さえやらないことをした候補者の中には本業が教師の人もいます。中国と香港の人民を侮辱する行為をニコニコしながらテレビの前でやるなんて、この先生から教わる学生たちにどこまで影響が出るのか、私にはそれを想像する勇気はありません。

 以前私は何回も現在の青少年は映画・テレビを見ない、歌を聴かない、漫画を読まなくなっているとお話ししました。この立法会議員候補者の行為は、それよりひどいと思います。国旗までもてあそんで軽視するなら、中国の文化、歴史を重視するわけはないと思います。日本人の年配の読者なら香港の有名作家である金庸や古龍の名前を聞いたことがあるでしょう。外国語に翻訳された本もあり、外国人や日本人にまで尊敬されています。このように超有名な作家の作品は私自身も私の親の世代にも愛読されていました。しかし現在、私が出会う20代、30代にはこの先生たちの作品を読んだことはないという人がいっぱいいます。今はインターネットが身近にあって、その中には毎日、良い情報もデタラメな情報も、危ない情報、嘘の情報なども混ざっています。だから、どんな素晴らしい映画、漫画、テレビ、歌、小説作品があっても、彼らはノーサンキューなのです!


中国の好意に反発

 さぁ、本題に入りましょう。昨年12月下旬にビッグニュースがありました。西九文化管理局主席を兼務する林鄭月娥・政務長官が北京故宮博物院と覚え書きを交わし、西九龍文化区に香港故宮文化博物館を建設すると発表。清朝時代の貴重な文物がたくさん貸し出されるというのです。

 建設と運営に関する全費用(35億香港ドル)は香港ジョッキークラブが出資し、香港特区政府がお金を出す必要はありません。2022年に完成する予定です。北京故宮博物院の収蔵品には歴代皇帝が使用したものや、西太后の持ち物も含まれるといいます。シンガポールなどの外国や上海、深圳などの都市ならきっと博物館建設を喜び、全員が拍手するでしょう。香港の事情に詳しくない外国人や日本人も同じように考えていると思います。しかし、『香港ポスト』の愛読者なら気付くかもしれません。ケリー・ラムによる長年の香港文化の分析を読んだ人なら、香港人のおかしな考え方に気付くはずです。

 故宮文化博物館建設は世界中の中国人にとってインパクトの強いおめでたいことですけれど、香港ではどう思われるでしょうか? 例えば香港の学校で国民教育をするなら「洗脳教育」と批判されます。学校で香港独立について討論、研究するなら「学術の自由」「言論の自由」だと認められるのに、香港の学生が中国本土へ行って文化交流するという学校の計画は「洗脳計画」の一部と言われてしまう。中国の観光客が香港にいっぱい来ても、一部の香港人はその観光客を追い出すぐらい反発します。

 こんな香港社会ですから、故宮文化博物館建設という中国からの好意的なプレゼントでも、香港では政治的にいくつもの批評に遭うでしょう。本来は全市民が大拍手で歓迎すべき自分の国の博物館建設が、香港ならば社会、民主、人権の問題が介入して大きなもめごとになってしまうのは、容易に予見できます。今回の博物館建設に対しても、反中央政府・反香港特区政府の勢力が強く反対し始めたのです。


公開諮問はニセモノ?

 本業は法廷弁護士で、現在は立法会議員をしながら西九龍文化区監察委員会の副主席を務める陳淑荘氏をはじめ、西九龍管理局諮詢会のメンバー、建築師団体の「思政築覚」らも疑問を呈しています。各界から、建設用地の選考、設計顧問の委任、建設費・運営資金、秘密裏での計画進行、事前に公開諮問が行われなかったことなどについて批判が出ました。

 ある立法会議員は林鄭長官の行為が、公平な競争で平等の機会を与えるという公営機構汚職防止ガイドラインに違反すると廉政公署(ICAC)に通報しました。では、林鄭長官はわざとルール違反して公開諮問をせず、秘密裏に450万香港ドルという報酬で知名度のある建築家・嚴迅奇氏を雇用して、故宮博物館の設計デザインを進めていたのでしょうか? 政府は各界からのさまざまな批判、攻撃を受け、急いで公開諮問を始めたけれど、それはニセモノ、本気本心のアンケートじゃありません。どうせ博物館を造ることはもう決まっているじゃないか! 実は、政府が公開諮問をしてもしなくても、最初から結果は決まっていると思います。中国と関係するどんな文化活動でも教育でも、香港でやったら大問題に発展するに決まっているからです。

 博物館建設計画とは関係なく康楽及文化事務署(LCSD)が昨年11月から始めた9カ月におよぶ文化プロジェクト「故宮全接触」、その一環として無線電視(TVB)で放送するテレビ番組「触得到的故宮」にまで批判は及びました。158万香港ドルをかけてMTRセントラル駅構内に設置された同番組の宣伝パネル「故宮の壁」の前で、反中国派のメンバーが天安門事件追悼の名目でデモを行い、公費の無駄遣いだと批判しました。

 将来本当に博物館が完成した場合、天安門事件記念日の6月4日に反中国デモが博物館の前で行われてもおかしいことではありません。香港ならあり得ます。それは香港の学校には現在、中国歴史、中国文学という単独の科目がないことと同じ。「真剣に自分の国の歴史や文学を勉強するという文化を持たない香港」がどうやって、自分の国を愛し、尊重することができるのか!


司法審査で計画中止も

 以前、香港の大規模建設プロジェクトが市民からの要求で司法覆核(司法審査)を行うことになり、環境や遺跡の保護の理由から建設中止になった例があります。たとえ1ドルも払わなくても市民は簡単に政府の法律援助部署の援助サービスを利用でき、司法覆核によって政府の大規模建設プロジェクトに対抗し、延期や中止などに追い込むことができると思います。

 いつも共産党の以前の過失を強調して一歩も譲らずに全面的に中国の文化に抵抗するのは、民主勢力の毎日のテーマなのです。近いうちに故宮文化博物館計画を中止させるために誰かが裁判所に行って「司法覆核」という段取りをとって政府を訴える可能性は当然あります。こんなふうにすでにめちゃくちゃになった香港の明日はどうなるのでしょうか? 単刀直入に言えば、香港が「明るい明日がない」という悲しい運命をたどることは間違いありません。残念ながら深くため息をする以外、ほかに出来ることは何もないのです。


****************

 

ケリーのこれも言いたい

 「香港は文化砂漠だといつも文句を言うのに、いざ博物館を建設するとなると反対するなんておかしい」と、香港政府観光局局長ら文化人たちは建設計画を支持する考えを表明しています。