経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。 景気低迷にも強い日系ラーメン店
ありがとうございます。弊社創設者の河原もここまで大きなブランドに成長したことに驚きと喜びを感じています。世界に例がない、またラーメン業界に大きな革命を起こす起爆剤になったと思います。 ——その革命ともいうべき点が、こうした「スタイリッシュな空間」なのではないでしょうか。以前では考えられないラーメン店の空間ですよね。
男性のお客さんがメーンだった以前のラーメン店のイメージを大きく変えるために必要だったのは「女性にも気軽に入っていただける空間」でした。この香港の尖沙咀店もそうですが、やや照明を落とし音楽も静かに流すなど、創業した頃の1980年代では想像できなかった雰囲気を作っています。これまでにないものを新たに生み出すことで注目され、関心をもってくださるお客さんが増えたことが今につながると思っています。今では世界中で楽しんでいただける「RAMEN」に成長しており、そのひとつとして一風堂香港を盛り上げる立場にであることに喜びを感じています。 ——世界にどれほど店舗があるのでしょうか。
アジア、欧州、米国にあわせて15カ国・地域に出店しており、日本国内も現在100店舗以上あります。特に今アジアは熱いですね。2009年にアジアで初進出を遂げたシンガポールを皮切りに、香港、台湾、バンコク、フィリピン、インドネシア、アジア各国に進出し始めています。こうした背景には、彼らが日本式ではなく、本格的な「日本のラーメン」を好んでいること、理解していること、そして日本食に対する関心が高まっていることが挙げられます。今後需要はさらに高まっていくでしょうね。 ——香港は目下、日本食ブームですが、香港市場をどうみていますか。
非常に面白い市場ですね。香港の日本食に対する成熟度はアジアのどの国や地域よりも抜きんでています。ラーメンの成熟度は香港がとても早いのが特徴です。つまり、お客さんの周知、口コミの広がりということです。他の台湾やタイなどでは日本食も多く日本のラーメンの認知度は高まっていますが、香港の2年前という状態です。 ——近年、香港経済は低迷しています。飲食業も厳しい状況を強いられているかと思いますが。
色々と厳しいなど言われていますが、それでも日系ラーメンは強いです。ここ数年で日系ラーメン店はおよそ400店増えています(レストラン検索サイト「Openrice」調査)。伸びしろでいうと200%を超えているほどです。他のアジアは100%ほどなのでどれほどすごいものか分かると思います。一方で撤退する店も同じくらい多いのが香港市場の特徴です。経済状況関係なく常に厳しい市場ではありますね。 ——常にオリジナルの商品の開発に力を入れている印象がありますが、いかがでしょうか。
時期ごとに常に新しいものを取り入れています。5年を迎えるにあたり期間限定商品として「海老・豚(EBITON)ラーメン」を開発しました。ロブスターをブレンドした濃厚な海老スープと当店自慢の豚骨スープを掛け合わせた新感覚のラーメンです。1年かけて開発した香港オリジナルで日本では販売されないものです。5周年にかけて、スープ、麺、トッピング、海老みそ、ブラックタイガーの「5つの要素」にこだわりました。さらに味の変化を楽しめるようトッピングも粉チーズやレモンなどを提供し、大好評でした。これはお客さんのリクエストを生かしたものなんですよ。 ——お客さんの意見を取り入れているのですね。 特に他の国より香港のお客さんはとても熱心です。感想やリクエストだけでなく、時には辛辣な意見もあります。ですがそれはとても有難いことです。私たちが今後さらに目指していくのは、飽きのこない味を作ること、そして女性に対してどれほどアプローチができるかということです。これからも進化し続けていきます。 (この連載は月1回掲載します)
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。 |
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