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最新号の内容 -20161202 No:1468
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立法会議員の資格と品格(2)

やり過ぎの人権・民主の主張

 

ケリー・ラムが贈る香港夢

ケリー・ラム(林沙文)

(Kelly Lam)教師、警察官、商社マン、通訳などを経て、現在は弁護士、リポーター、小説家、俳優と多方面で活躍。上流社交界から裏の世界まで、その人脈は計り知れない。返還前にはフジテレビ系『香港ドラゴンニュース』のレギュラーを務め、著書『香港魂』(扶桑社)はベストセラーになるなど、日本の香港ファンの間でも有名な存在。吉本興業・fandangochina.comの香港代表およびfandangoテレビのキャスターを務めていた

 

 最近の議員や大学生の品格には疑わしいものがあります。今年のミス香港コンテストで優勝した馮盈盈(クリスタル・フォン)さんは香港大学の出身ですが、実は彼女にはセントラル占拠行動(雨傘運動)期間中に反政府・反香港警察を唱え、親政府派の議員にフェースブックを通じてたくさんの下品な言葉を浴びせた過去がありました。ミスに選ばれた後、メディアでそのことが暴露されました。

 

 今年の立法会議員選挙で当選した新人議員も同様に下品な言葉を使っています。立法会議員としての宣誓をする前に、あるセミナーで香港の住居問題について強烈に批判し、かなり下品な言葉を使いました。香港人は「   」する場所もない、そんな場所を探しても見つからないと発言したのです。その場にいたゲストスピーカーも観衆もその発言にびっくりし、ショックを受けました。

 

 「  」の直訳は、 =もの、 =たたく、という意味。つまり「セックスする」という意味があります。香港人が日常生活で友人とのおしゃべりで使うのなら平気ですけれど、公の場で議員として発言するには大変下品な言葉です。公衆が大騒ぎしたのに、翌日、ウェブ上でその新人議員はもう一回同じ下品な言葉を発しました。要するにちっとも反省していなかったのです。反省する必要はないと思っていたのでしょう。宣誓の時にも「RE××CKING OF CHINA」というひどい言葉を使いました。

 

礼儀守れない学生、大学内で麻雀

 

 9月下旬には、香港中文大学で深夜に学生が校内で堂々と麻雀(マージャン)をやっていたことが発端で、警察を呼ぶ騒動に発展しました。マージャン卓を校内で一番重要とされる「百万大道」の広場の中に置いて遊ぶなんて、世界中の人々が非常識と感じることではありませんか? 警備員が何人来ても学生はマージャンをやめず、逆に警備員に「なぜ校内でマージャンをやってはいけないのか」「学校のどんな規則に違反するのか?」と聞き返したそうです。

 

 警備員が学生証の提示を要求しても学生はそれを拒否。現場の警備員もどんな大学の規則に違反するのかすぐ答えられませんでした。最終的に警察を呼び、警察が来てからやっと学生は身分証を見せ、事件が収まったそうです。

 

 私が何年か前に予言したように、こうした事件が段々と頻繁に発生するようになっています。いつも民主、人権を大変尊重している沈祖堯・校長は(私の友人でもありますが)、事件の後、マージャンをした学生の行為は不当で学校を尊重していないと指摘。「百万大道」のような神聖で大事な場所を守る責任があると言いました。

 

 学生の行為は完全に中文大学のモットー「博文約礼(孔子の論語の学説)」に違反しています。「博文」は知識を追求すること。「約礼」は礼儀を守ること。はっきり言えば、礼儀を守れないことが現在香港の一番の大問題だと思います。

 

 いつも開放的で、学生・学級の民主、学術の自由を進めたり、応援している沈校長がマージャンをやる学生たちを強烈に批評するのは、心の中で激怒するくらいの気持ちの表れなのだと思います。でも、いかなる批評も無用です。完全に遅すぎるから。

 

 過去20〜30年間の香港の民主・人権は欧米の民主・人権とちょっと違います。それは香港スタイルで、限界のない民主・人権です。自分勝手に好きなことを何でもしても平気ということ。警察が来ても警備員が来ても、立法会の議長、秘書長が来ても、すぐに「あなたにどんな権力、権限があるの? どんな規則、ルール、法律によって制限する権限があるの?」と反発します。「おれ(たち)の行為は犯罪になるのか? 香港のどの法律に違反するのか?」と聞き、即座に答えないと、おかしな行為を続ける! これこそ香港の民主、人権、自由です!
 

 

迷惑社員はあなたの会社にも

 

 表面的には全く日本人と関係ないようなことに見えますが、そうではありません! 民主・人権の主張という伝染病にかかっている患者は数えられないほど多いから、香港にある日本人の会社の中にも「玩  (玩=あそぶ、 =もの、という意味。わざとあることをして事件を起こすこと)」をする香港人社員がいるはずです。こんな社員が日常生活や社内で、どんな失礼なこと、おかしいことをしても、上司としてうまく慎重に処理しなければいけません。いつもヘッドフォンしながら仕事をする、会社のEメールをよく個人的に使用する、社内で歌を歌う、大きな声、失礼、下品な言葉を使う、変な髪型や衣装を着る、など。しゃべり方の礼儀やいろいろなマナーは日本では当たり前のことだけれど、香港では違います。

 

 そんなさまざまな不当な行為があっても、上司として社員に丁寧に協力をお願いしなければいけません。しかったり、強く命令したりすると、「玩   」する社員が反発する可能性があります。

 

 特に階級が高くない社員、仕事がすぐなくなっても平気な社員は上司に反発しやすいでしょう。すぐ反発して、なぜ自分の行為が不当なのかと聞き、「周りの人を邪魔しないよ、個人の自由だよ、これは!」 「オレの行為はどんな会社の規則に違反するのか、教えてくれ!」「法律に違反するのか? 教えてくれないと、それは人権、民主、自由に対する違反だ!」と言い出すでしょう。もし玩   するような人物を役員に採用した場合、それは頭が痛くなるほどの大問題です。
 

 

不当行為は契約書でも解決不能

 

 じゃあすべての不当な行為、失礼なマナー、やってはいけないことを事前に雇用契約の中に書いていれば、全部問題解決できるじゃないか? 不当行為を禁止するような条件、規則、制限を設ければいいのではないか。そう思うかもしれません。たしかに理論的にはその通りですが、大変厳しい条件を設けたり、人権、民主に違反するような制限は、会社が非人道的だと批判される可能性があります。もしそんな厳しい会社の雇用契約をメディアに知らせた場合、メディアがわざと大げさに会社に不利な報道を出してもおかしくありません。

 

 「玩  」の社員に対して会社側がちょっとでも失言や不当な行動をすれば、社員はすぐに不当解雇やセクシャルハラスメント(セクハラ)、プライバシー侵害を受けたなどの理由で政府に苦情を届け出ることが出来ます。こんな苦情を受ける政府部署も慌てて真剣に事件を調べ始めると思います。

 

 だから香港の「やり過ぎの人権・民主の主張」という伝染病は日本人の会社のマネジメントと関係ないとは言えません。この伝染病は香港の全人口にまで影響しています。

 

 昔、香港の最大の成功の秘訣は、人間のクオリティーの高さでした。香港人は頭の回転が速く、我慢強い、文句も言わない、そしてほんの少しのチャンスを誰でも大事にしていました。現在の香港の大失敗の原因は、現在の香港人の大半はこんなクオリティーを持っていないからなのです。なりゆきにまかせて選出された新人議員が参加する新しい立法会は、以前のめちゃくちゃな立法会よりもさらに一歩、悪化するでしょう。きっともっとひどい事件が、失礼なことが頻繁に発生すると思います。

 

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ケリーのこれも言いたい

 

 健康ならばパワーがあるのと同じ。現在の香港がまだ倒れない、まだ全面的に崩壊しないのは、40代から60代の経験、教育、実績、道徳、原則のある人間がいるから。お陰さまでケリー・ラムはその中の1人です。