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最新号の内容 -20161202 No:1468
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熊本復興と香港

③熊本県庁など

 

 今年4月に発生した熊本地震から数カ月が過ぎた。九州は香港市民にとって人気の観光地でもあり、今回の震災をめぐっても香港とはさまざまなつながりが見受けられる。復興作業が進む現地からリポートする。
(インタビュアー・楢橋里彩)

復興プロジェクトの活動の様子  

 テトリアくまもとビル1Fにある熊本県の観光・物産情報発信機能をもった交流スペースがある。くまモンスクエアには、平日にも関わらず、多くの家族連れなどの観光客でにぎわっていた。ここでしか購入できない限定品も数多く取りそろえている。また軽食コーナーもあり熊本県で採れた旬の果物を使ったスィーツも楽しめる。偶然会った、香港から来ていた張さん一家はくまモンが大好きで、頻繁に熊本に遊びにきているそうだ。震災後は今回は初めてという。「震災があったから怖い場所というより、だからこそ熊本を支援したいという気持ちが強くなりました」と話す。普段からくまモンが来港するイベントには、必ず出向くほど一家で大ファンだ。「最初はくまモンにしか興味なく熊本県がどこにあるか分からなかったが、色々と調べていくうちに熊本の大自然と食べ物に惹かれて、熊本そのものが好きになりました。一日も早く復興できるよう香港から今後も応援していきたい」。世界を飛び回って忙しいくまモンだが、今後は震災後支えてくれているファンに対して感謝をこめた旅をしていきたいとのことだ。

熊本ファンの張さん一家といっしょに 

 

インタビュー⑥
熊本県総務部長 池田敬之さん

——3カ月経った今をどうみていますか

 行政の立場としては、全国の都道府県の自治体のとの連携がとれていると感じており、これまでの災害経験を踏まえて、非常にベースができていると感じています。とはいえ、仮設住宅、生活再建など長期間かけて取り組まなくてはいけないことが山積みです。

こうしたなか県全体をみると、被災していないエリアも多くあるのですが、風評被害などを受けて観光旅行客は大幅に減少しています。

 インバウンド事業としては、アジア諸国からの観光客も減っていますが、ここにきてようやく少しずつですが回復の兆しがみえてきました。

——外国クルーズ客船が熊本に寄港するようになっていますよね?

 はい、熊本・八代港に寄港する外国クルーズ客船が7月から熊本にも定期的に入るようになり、おかげで熊本に立ち寄ってくださる中国本土の方が来始めました。

——今回の震災によって新たな課題、問題点は何でしょうか

 避難所の対応ですね。本来ですと、行政が指定して災害などで何か起きた時には場所を指定しておくものなのですが、それがしっかりと市民の皆さんに行き届いてなかったことにより、どこに避難して良いか分からない人が多く、一時的に混乱を招きました。

 熊本で震災が起きることなど予想をしていなかった点もあったのですが、今回のことをしっかりと踏まえ、確実な指定場所を決め県民の皆さんの安全性を高めたいと思います。また実際に直面して難航している問題は「仮設住宅」。甚大な被害があった益城町を中心とした各市町村には多くの高齢者の方がいます。どのように造るのがふさわしいか、寒さ、暑さ対策などを考慮するとしても、居住期間2年という制約のなかでの生活ということを考慮したうえで、適した造りや対応をしています。

——香港はくまモン効果で熊本県への観光客が多いのはご存知でしたか

 もちろん知っております。うれしい限りですね。アジアを中心に多くの海外の皆さんからも激励のメッセージをを頂いておりますが、とりわけ香港の人たちからの応援は多いですね。

——香港は特にくまモン効果で九州のなかでも特に熊本の人気は高いですが、その理由をどうみていますか

 熊本城と阿蘇山のゴールデンルートが香港の方に受けているのではないでしょうか。阿蘇山などといった熊本の壮大な大自然は香港では見ることはできないと、毎年多くの方がきてくださいます。皆さんから温かな応援をいただいているなか、速やかに対策を練りインバウンド事業を回復させなければいけません。

 またこの場をかりて香港からは多くの義援金を送っていただきましたことに感謝申し上げます。今もなお、個人的な支援金、義援金を送ってくださる方、また励ましの手紙を送ってくださる方が多くおります。香港の皆様の温かな心遣いにとてもうれしく思います。

 復興まで長い道のりになると思いますが、皆さまからいただいた義援金については、被災者の生活再建にあてるなど大事に使わせていただきます。熊本県は震災で大変な目にはあっているものの皆頑張っています。ぜひ元気なっている熊本を見にきてほしいですね。

 

インタビュー⑦ 
熊本県商工観光労働部観光交流局 くまもとブランド推進課 主任主事 齋藤恭成さん

 室内にずらりと並んでいるのは企業とのコラボ商品のくまモングッズだ。2011年3月の九州新幹線全面開業に際して誕生したキャラクター。今ではゆるキャラから売るキャラへのコンセプトを掲げながら活動している。オリジナル体操「くまモン体操」が話題を呼び、イベントではファンとともに体操をするなどお馴染みの光景だ。オフィシャルブログには誕生会や世界中をかけまわるくまモンの様子が頻繁に更新されファンの心をつかむ。

 昨年の関連商品の売り上げは1000億円にのぼった。

 訪れた時はパリで開催された日本のサブカルチャー祭典「ジャパンエキスポ」に出張中だったくまモン。香港は熱烈なくまモンファンが多く、年間10回以上来港しているという。

 熊本県商工観光労働部観光経済交流局くまもとブランド推進課主任主事の齋藤恭成さんは「震災以来、被災地に出向くとこれまでにない歓迎を受ける場面が多かった。これから復興していく熊本のシンボルとしてくまモンが大きな役割を担ったようにも感じる」と話した。インバウンド事業としても支援する側にこれまで以上に大きく担うことになのは間違いない。群を抜いてくまモン人気が高

い香港からは震災後、手紙や義援金などを送ってくれるファンが多いのだそう。「何カ月も経つ今も激励の手紙などが届く。温かな人が多く嬉しく思う。もっと熊本と香港の距離が縮まることを願っている」。

 香港では昨年、初めて「くまモンファン感謝祭」がスーパー「八田」で開催された。香港のファンの皆さんとくまもんがじかに触れる機会があったが、人気は日本以上だそうだ。

 

インタビュー⑧
くまもと新町古町復興プロジェクト代表・
居酒屋「源ZO-NE」オーナー 上村元三さん

 

——熊本の「新町古町」というのはどのような街並みなのでしょうか

 熊本駅と熊本城の間に『新町・古町』エリアがあり、加藤清正公が熊本城の築城とともに造った城下町のことを指します。現在も当時の町割りが残っているなど新町の武家屋敷、古町の町人町が混在する、全国でも珍しい場所です。現在でも、370軒ほど「町屋」と呼ばれる西南戦争後の歴史的建物が残っています。

——プロジェクトはどのようにして生まれたのですか

 前震のあった4月14日の夜にすべてが始まりました。私は地区の防犯会長として、地域に知らせて回り、そのまま近くの小学校へ行くとすでにおよそ1000人がグラウンドと体育館にいました。この時期の熊本は夜も肌寒かったので多くの人が寒さの中いたのです。急遽、消防署と校長に許可を頂き、ちょうど翌日自身の店で使う予定だったBBQの備品で暖をとっていただきました。翌日仲間から「豚汁を作らないか」という声があがったので、みんなで材料を持ち寄り炊き出しを始めたのが始まりです。

 現在は、出張BBQと居酒屋を自営しながらITの自営業、デザイナー、建築業など様々な分野の仲間たちと活動をしています。みんな被災していましたが、それでも誰かのために何かできないか、そればかり考え、目の前のことを皆でやれる範囲で一生懸命考えながらやってきました。

——なぜそこまで?

 恐らく、郷土愛ですね。昔から息づく「新町古町」を守り、復興させたいという強い気持ちから生まれたものだと思いますね。プロジェクトのメンバーは皆同じでした。

 こうして地道な活動が認められて支援金をFBやいろいろな方の口コミで皆様からいただき、4月20日に立ち上げ、5月から本格的に復興のサポートをしています。

——具体的にはどのようなことを?

 地震後の生活で「安全確保」を目指し、地域のコミュニティを活かしガレキ撤去や生活物資搬出・安全な場所への移動を行っています。公的なボランティアでまかないきれない事案や、片付けなどお手伝いです。さらに伝統建築の町屋を救済するために、新潟中越地震や東日本大震災で数々の伝統建築の建物を救ってきた専門家にお願いして、町屋所有者の方々に対して説明会と訪問診断を開催しています。

新町古町の古い町並み

 そして景観保全活動として、新町古町の古い町並みを守りるための活動を行っています。そのために町屋所有者へアンケート実施、ワークショップ開催、応急処置サポート、市役所と意見交換等を積極的に行っています。

——現状はいかがですか

 まだ厳しい状況ですね。手つかずの町屋もありますし、所有者の方々は、解体すべきか次世代に残すべきか悩まれている方も多いのが現状です。ようやく行政から補助金のサポートがようやく行政から補助金のサポートがでるのですべてはこれからという感じです。こうしたなか他県にもこの活動を知っていただこう、復興の呼びかけをしようと、東京・吉祥寺でも活動について講演会を行う予定です。今の熊本の状況を多くの方に知っていただく貴重な機会になると思います。

 正直、今後のことはまだ何ともいえません。ただ熊本の象徴ともいえる町屋と生活を一日も早く復興させ、早くにぎわいを取り戻せるまで私たちは活動をしていきます。

 香港からも多くの観光客の方が訪れていたなか、熊本は熊本城やくまモン以外にも、こうした古い町並みも改めて、ぜひ見にいきていただきたいと思いますね。

 元気な熊本にきなっせ! 待っとるモン!(ぜひ熊本におこしください。おまちしています!)。

くまもとブランド推進課でくまモンとともに