香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20161021 No:1465
バックナンバー



 

 香港貿易発展局主催する、アジア最大級の食品展示会「第27回Food Expo(フードエキスポ)2016」が8月1115日に湾仔の香港コンベンション・アンド・エキシビション・センターで開催された。今回は初参加のクロアチア、フィンランド、アイスランドを含め26カ地域・国から1400社・団体が出展、例年同様に3つのゾーンに分けられ、B to Bのトレードホール一般人が入場、購入可能なパブリックホール、グルメゾーン(一般入場者は追加支払い)となった。
 

フードエキスポ2016(前編)

 

ジャパンパビリオン

 日本ブースには6年連続で今年もジェトロが運営する「ジャパンパビリオン」が設置され、251社・団体が出展した。出展数は昨年に比べ97社・団体多く過去最大規模だ。これは、日本畜産物輸出促進協議会より会員企業12社が初出展、また昨年から新たに設置している海外進出未経験の企業・団体枠「ニューチャレンジブース」には11社が出展し、一部は15日までの開催となり期間中はおよそ50万人が来場、大いににぎわいを見せた。

 開幕式典には来港した山本有二・農林水産大臣が出席した。その後に行われた記者会見では「香港は輸出相手国最大の場所。我々は最大の期待をしている。香港は商流・物流のハブとして日本の農林水産物を輸出するうえで、世界の窓口と位置付けている。今年の4月に大地震があった熊本からも9企業が出展している。東日本大震災の復興途上にある各県からも出展していることに感激している」と話した。また林鄭月娥・政務長官と会談し日本食輸入規制緩和・撤廃を要請したことも報告した。今秋には在香港日本国総領事館主催の「日本秋祭りin香港」が初めて開催されることにも触れ、「安心で安全でおいしい日本食は発展につながると確信している」と述べた。

 現在およそ1万1000店の飲食店がある香港で、その6割が中華料理、次いで2位が日本料理。日本食レストランの激戦はますます過熱し、現在はおよそ1400店が進出している。

 日本の農林水産物・食品の輸出額 7451億円(2015年)、うちアジアは5344億円を占めている。内訳は、1位は香港で(1794億円)、次いで台湾(952億円) 中国本土(839億円)・韓国(501億円)と続く。近年では加工食品や水産品が顕著な伸びを示しており、香港向け輸出額は過去最高を記録している。輸入規制が少なく、関税が無税のため、様々な品目の輸出が可能なのも魅力のひとつ。今や「定着市場」として日本食材の浸透度が高い国・地域が香港で、さらなる輸出品目やジャンル(健康食品など)の拡大を目指し、日系小売り、外食以外への販路の拡大、輸出ロットの拡大や物流の効率化等による価格競争力の強化をしていく。

 会場では「農林水産業の輸出力強化戦略」も踏まえた、様々な売り込みを図った。たとえば、パビリオン内に専用ステージを設け、ジャパンパビリオン出品企業による料理デモや、出品企業の商品を用いた料理人による料理デモを実施、より関心を高めてもらうのが狙い。他にも香港で活躍する有名な料理研究家などによるデモンストレーションも行われ、料理法、活用法などを詳しく説明、バイヤーたちに和食をより身近に感じてもらえるようにした。茶専門見本市「Hong Kong International Tea Fair」には、15社・団体が日本茶などを出展し、茶器、茶の普及セミナー、茶道のパフォーマンスなどが行われた。

 今回はフードエキスポに初出展した2社に話を伺った。

 

インタビュー①

【岩手県】 高橋精麦株式会社 
代表取締役社長高橋誠さん 

高橋精麦株式会社 高橋誠さん

 これまでも香港には岩手県花巻市のブランド「白金豚」のプロモーションイベントで香港を訪れているが、フードエキスポの参加は今回が初めてだ。B to Bというのが魅力だったこと、卸業者と直接商談ができ、新しいものをつかみたいという思いが強い。日本国産豚の香港への輸出量は、昨年は353トン。ここ数年で2倍に伸びており、今や香港は日本の国産豚肉にとってとても重要なマーケットになっている。(日本畜産物輸出促進協議会の統計)。白金豚は奥羽山脈から湧くミネラルたっぷりの活性水を使用され、臭みがなく脂身にも旨みがしっかりあり、甘みと肉質の柔らかさが特徴だ。遺伝子組み換えをしていない安全性の高い農穀物を選別したものを飼料にしており、日本の農村との共栄共存を図っている。白金豚の生産・販売をされ、現在香港に4トン卸している高橋氏は「白金豚は日本料理だけでなく、広東料理、西洋料理など多岐にわたって楽しめるおいしさがある。さらに認知度を高めるためにも、飼育、食べ方の情報などもしっかり伝えていきたい」と話された。東日本大震災から5年たった今の状況については、「風評被害、輸出規制などはないものの、消費者向けに関してはまだまだ厳しい状況は続く。飲食店関係者は元より、香港の消費者の皆さんに正しい知識を伝えていくことで、お互いの理解を高め合っていきたい」という。

インタビュー②

【福井県】株式会社NOUMANN 
代表取締役CEO 宮下清優さん

株式会社NOUMANN 宮下清優さん

 昨年から新たに設置している海外進出未経験の企業・団体枠「ニューチャレンジブース」に出展した福井県美浜町にある株式会社NOUMANN。LEDライトを大量に取り入れた育苗システムを導入し、世界で初めて工場内でカット野菜に加工する設備を整えた企業だ。主に取り扱うのはプリーツレタス、フリルレタスなど多品種。そのなかでも人気が高く最も栽培が難しいとされる「結球レタス」に力を入れている。同レタスの工場生産は国内ではNOUMANNが初めてだ。宮下氏は「すべて無農薬で、菌も少ないので安心、安全という点を前面に出して海外進出を狙っている。今後は日本の農産物の需要が高い香港市場を足掛かりにして『ジャパンブランド』として確立させたい」と話した。フードエキスポの印象については、「日本ブースの全体の質の高さ、日本食熱のすごさに圧倒されている。実際に現地に踏み入れたことで可能性をとても感じた。特に今香港ではヘルシー志向が高まっているので、今後の可能性に大いに期待したい」。現在もANAのファーストクラスでも同社のレタスが使用されており、付加価値を高めることでより高級感のあるブランド確立を狙う。

(このシリーズは月1回掲載します)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログhttp://nararisa.blog.jp/