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最新号の内容 -20160916 No:1463
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第6期立法会議員選挙
議会運営は困難に


 第6期立法会議員選挙の投票が9月4日に行われ、5日に開票された。計70議席のうち親政府派が40議席、民主派その他が30議席を獲得し、民主派その他は3分の1以上の議席を確保した。2014年の「セントラル占拠行動」によって台頭した「香港独立」や「民主自決」を唱える本土派(排他主義勢力)などの候補者からは7人が当選。主流民主派との協力は見込めず、過激派勢力が拡大することから次期立法会では議会運営がさらに困難になることが予想される。(編集部・江藤和輝)

中央開票所で開票結果の発表を聞く候補者たち(写真:和仁廉夫)  

 今回の選挙では「香港独立」を主張・推進する者の一部が立候補資格を認められなかったことなどが反発を招き、親政府派には不利と予想されていた。結果は3議席が親政府派から民主派その他に移ったものの、引き続き親政府派が多数を占めた。

 地区別直接選挙枠(35議席)では約220万人が投票、投票率は約58%に達し、ともに過去最高を記録。獲得議席は親政府派16議席(1議席減)、その他が19議席(1議席増)。その他勢力のうち初参戦となった本土派や占拠行動参加者では、青年新政が2議席、熱血公民が1議席、香港衆志が1議席、無所属が2議席。主流民主派は香港民主民生協進会(民協)の馮検基氏、工党の李卓人氏と何秀蘭氏らベテラン議員が落選した。

 職能別選挙枠では区議会第2枠が民主派3議席、親政府派2議席で変わらず、そのほかは親政府派22議席(2議席減)、その他8議席(2議席増)となった。

 政党別に獲得議席を見ると、親政府派の民主建港協進連盟(民建連)が12議席(1議席減)で引き続き第1党。主流民主派は民主党が7議席(1議席増)を確保したものの、工党が4議席から1議席へと大幅に減らしたほか、民協と新民主同盟は議席ゼロとなり、過激な民主派(社会民主連線、人民力量)と合わせると23議席(3議席減)。

 主流民主派から分裂した中間派は全く議席を取れなかった一方で、本土・自決派は改選前に唯一の議員で「教祖」とも呼ばれる黄毓民氏が落選したものの、直接・職能別を合わせ7議席を獲得し議会の10%を占める勢力となった。

 6日付『明報』による地区別直接選挙枠での得票率を見ると、12年の前回選挙では親政府派が43%、中間派が1%、主流民主派が41%、過激な民主派が15%だった。今回の選挙では親政府派が40%、中間派が5%、主流民主派が29%、過激な民主派が7%、本土・自決派が19%となっており、特に主流民主派の退潮が著しい。

 民主派その他が重要議案の否決権を維持する3分の1以上を確保したとはいえ、香港基本法や1国2制度を逸脱する要求を掲げる本土・自決派と主流民主派が協力するかどうかは疑問が持たれている。公民党の梁家傑・代表は主流民主派の意思疎通の場だった「泛民会議」はすでに過去のものとなり、「非親政府派はより適切な協力方式が必要」と指摘。非親政府派の多様化から「民主派」の呼称はもう使うべきではないとも述べた。あるベテラン民主派議員は、世代交代で大局を取り仕切る者がいなくなり「泛民会議」のような場をつくるのは難しいとみる。民主党の尹兆堅・副主席は「民主派と本土派は民主政策で意見の食い違いがある」と認めながらも、短期的には行政長官選挙の選挙委員会選挙を協力の試金石にする方針を示した。

 一方、2議席獲得した青年新政の梁頌恒氏は「個別議題で方向が一致すれば民主派でも親政府派でも協力する」と述べたが、「泛民会議」には参加しないと断言。香港衆志の羅冠聡氏も当面は「泛民会議」への加入を検討しないと表明したほか、いずれも梁振英・行政長官や中央高官との対話も拒否している。

  

本土派、民主派と協力せず

 公民党を離党した湯家氏が穏健・中間路線として設立した民主思路からは黄梓謙氏と麦嘉晋氏が立候補したが、ともに落選。湯氏はこの結果を受けて「穏健・中間路線は現在の政治ムードの下では市場がない。有権者は攻撃能力を持つ候補者を支持する」と指摘。本土・自決派が多数当選したことについては「議会の運営は前期より困難になる。行政と立法の関係も悪化する」との見通しを示した。

 投票に先駆けた8月30日、特区政府は選挙活動期間に「香港独立」を鼓吹・推進している候補者がいることを注視し、「特区政府は法に基づき対処する権利を保留する」との声明を発表した。独立派は一部が立候補を認められなかったものの、数人は出馬を果たしていた。梁長官は選挙後の9月6日の記者会見で、当選した議員が独立を鼓吹・推進していたことから政府が当選資格を取り消すなどの行動を取るかどうかを聞かれ、「その問題は法律家に任せる」と回答したほか、「比較的過激といえる候補者はみな落選した」と指摘。選挙活動期間に独立支持を表明したり暗に独立を推進しているとみられる候補者は8人挙げられているが、当選したのは熱血公民の鄭松泰氏だけだった。また梁長官は、自身の続投に公然と反対を唱えていた候補も「みな落選した」と笑いを浮かべて述べた。

 だが全国香港マカオ研究会の劉兆佳・副会長は、今回の選挙で本土・自決派が数人当選したことは政府や行政長官への不満の表れと指摘。昨年の区議会選の数カ月後、国務院香港マカオ弁公室の馮巍・副主任が中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)を迂回して民主党と会談し、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の張徳江・委員長も来港時に民主派議員に接見したことを挙げ、「中央はひとまず梁長官や中連弁からの報告を受け入れるが、今後独自に今回の結果を追究する行動を起こし、それによって次期行政長官の人選を考慮する」とみている。選挙結果は両極化を示しているともいえ、社会の分裂を修復できていない梁長官の続投は厳しくなりそうだ。