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最新号の内容 -20160722 No:1459
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低調だった7.1デモ

立法会選へ臨戦態勢


 返還から19周年を迎えた7月1日、民主派団体の民間人権陣線による恒例の7・1デモが開催された。9月の立法会議員選挙に向けて勢いをつけようと各政党・団体が動員を図ったが、参加者数は低調だった昨年並みにとどまった。立法会選の候補者擁立も進み臨戦態勢となってきたが、民主派の内紛はますます顕著となっている。(編集部・江藤和輝)

民主派勢力の分裂で7・1デモは昨年並みに低調となった

 

 7・1デモの参加者数は主催者発表で11万人、警察の推計では出発時で1万2000人、ピーク時で1万9300人、香港大学民意研究計画の推計では2万3000~2万9000人、香港大学社会工作・行政学部の葉兆輝・教授の推計では2万4000 2万9000人。主催者発表で昨年の倍以上であるほかは、いずれも昨年とほぼ同じだった。

 今年のテーマは「決戦689」で、梁振英・行政長官の辞任要求を前面に押し出したほか、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会による2014年8月31日の決定撤回や立法会職能別選挙枠の撤廃、市民皆年金制度、政府による公共事業の回収、同性愛差別を防止する法制定など9大要求を掲げた。

 昨年同様に独立派がデモに乱入し先頭を占拠しようとする騒ぎも起きたほか、社会民主連線(社民連)、人民力量、香港衆志などのメンバー約100人はデモ終了後に礼賓府前で非合法デモを行い、警官隊との衝突も発生。本土派(排他主義勢力)の青年新政、熱血公民、普羅政治学苑はデモに否定的で参加しなかったものの沿道で募金活動を行い民間人権陣線から非難された。本土民主前線、香港民族党、青年新政は午後7時に中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)前で非合法集会を予定し、暴動に発展する可能性もささやかれたが、厳戒態勢を受けて中止となった。

 7・1デモでは先頭の横断幕を持つ役割として銅鑼湾書店の林栄基・店長、スパイとして逮捕された程翔氏、反革命罪で逮捕された劉山青氏の「政治犯」3人が選定されていた。だが林氏は過去数日、車やバイクなどに尾行されたと訴え、安全確保を理由に突然参加を取りやめた。警務処の黄志雄・処長代行は6日の記者会見でこの件について報告。警察の捜査によると、林氏を尾行していた車は壱伝媒集団傘下のメディアがレンタルしたものと分かったほか、バイクを運転していたのは非番の消防士で「単なる興味から尾行していた」ことが明らかになった。現段階で林氏が身の危険にさらされている証拠はないが、警察は保護措置を取ることにした。

 林氏は香港に戻って間もない6月16日、民主党の何俊仁氏同席の下で記者会見を行い、事件を最大限に利用しようと香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)などが18日にデモ行進を開催。主催者発表で6000人、警察の推計ではピーク時に1800人が参加した。民間人権陣線は7・1デモで銅鑼湾書店事件をテーマに動員を図りたかったため、このデモには反対していたもようで、民主派内の足並みの乱れが目立った。

 

民主派はつぶし合いに

 立法会選は立候補届け出が7月16日から始まり、各党・団体が続々と候補者を発表している。民主党の候補者名簿は直接選挙枠5選挙区で5枚、職能別選挙枠区議会第2枠で2枚、職能別選挙枠卸・小売業界で1枚。直接選挙枠では2人が続投を狙うほかは新人3人が名簿の1位に名を連ね、劉慧卿・主席や何俊仁氏ら重鎮は2位以降となり世代交代を優先させる。名簿1位の候補者の平均年齢は42・8歳で、過去2回の選挙時より低い。現在より1議席多い7議席の獲得を狙っている。「香港独立」や2047年以降の前途の問題で「自決住民投票」を掲げる団体が注目されているのに対し、民主党はあらためて独立は支持せず、「1国2制度の永続」を支持する立場を示した。

 青年新政、東九龍社区関注組など「セントラル占拠行動」参加者による組織連合「ALLinHK選挙連盟」は直接選挙枠3選挙区に出馬する3枚の候補者名簿を発表。「香港民族、前途自決」を綱領に掲げ、「香港独立」も支持する姿勢を示した。独立派の中核的人物である招顕聡氏も香港帰英独立連盟を設立し出馬を宣言。同連盟は香港が「まず英国に復帰した後、独立する」を綱領に掲げ、英国に「中英共同声明」の破棄と香港に対する主権回復を要求、その後にあらためて独立を模索。4年以内に目的を達成するという。暴力的手段による現行制度の廃止や「自衛隊」の設置も提唱した。

 過激な若者らの台頭で影が薄い元祖過激派の社民連と人民力量は選挙協力を発表した。「抗命派」を旗印にした「人社選挙連盟」を結成し、直接選挙枠5選挙区に6枚の候補者名簿で出馬。社民連の梁国雄氏(長毛)と人民力量の陳志全氏が続投を狙う。社民連の呉文遠・主席は「本土派の理念と価値観は主に憎悪をあおる排他的なもので、独立を掲げながらも路線は定まっていない」と批判。「独立は香港の活路にはならない」ことから票を奪われる懸念はないと強調した。

 親政府派の民主建港協進連盟(民建連)の候補者名簿は12枚で計56人が出馬。直接選挙枠5選挙区で7枚、職能別選挙枠は漁農界、輸出入業界、区議会第1枠で各1枚、区議会第2枠で2枚。現職8人が続投を狙うが、譚耀宗・前主席ら重鎮は出馬しない。候補者の平均年齢は38・8歳で世代交代を図る。現在より1議席少ない12議席の獲得を目標とするが、李慧瓊・主席は「過去4年のし烈な政治闘争、社会の対立、多くの団体の参戦による競争激化で戦況は厳しい」との見方を示したほか、梁長官の続投を支持するかどうかはコメントを避けた。一方、周浩鼎・副主席は党の立場に準じるものの民生改善について梁長官を評価し、「みんなも公正に評価すべき」と呼び掛けた。

 特区政府中央政策組が先に行った立法会選に関する非公開の世論調査(対象709人)では、梁長官の続投に対する姿勢を考慮する市民が約6割に達するなど、梁長官への風当たりから親政府派は不利ともみられている。一方で民主派は分裂によるつぶし合いが予想され、どちらが優勢かは読めない状況だ。