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最新号の内容 -20160722 No:1459
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金融業界B2Bイベント「iFX エクスポ・アジア」

 アジア最大規模の金融業界B2Bイベント「iFX EXPO Asia」(1月27日〜28日)が昨年に引き続き、今回も香港・湾仔にあるコンベンション&エキシビションセンターにて開催された。会場には、FXブローカーやバイナリーオプション、銀行など76社が出展、期間中2500人以上が参加し、初日から大いに賑わった。

 

iFX エクスポ・アジア
iFXエクスポ・アジアの会場の様子

 

 

 イベントは、コンバージョン・プロス(CONVERSION PROS)とファイナンス・マグネイト(Finace Magnate)が共催しているもので、主に最先端のテクノロジーシステムと、FX、バイナリーオプション、銀行などのネットワーキングを深め、アイディアを共有していくものだ。欧州市場をはじめ、飽和状態が続いている中、世界のFX業界関係者らは、昨今アジア市場に注目している。


 開催初日の1月27日には、開始時刻午前10時より前から早くも多くの人がエントランスに集まり、参加者同士の再会の挨拶などが交わされ、すでに賑わいを見せていた。ちょうど旧正月を迎える時期ということもあり、前回に比べ、会場の雰囲気も旧正月ムードになっていたのが印象的だった。会場ではチャイナドレスを身にまとう女性スタッフ、初日の午前中には鳴り響く銅鑼の音と共に龍が登場するなど、盛り上がりを見せた。

 

「一帯一路」地域から参加

 

 会場では、世界中からFXブローカー、システム関連ベンダーなど、アジアでの顧客開拓を狙う多くの企業が集い、新たなビジネス獲得に向けた商談が繰り広げられあた。日本国内では未だ制限されているバイナリーオプションやソーシャルトレーディングといった、海外では人気になりつつある新サービスを紹介しているブースも目立ち、会場には東南アジア、中東諸国からのFX関係者の参加が前回よりも多いように感じられた。


 こうした人々はまさに「一帯一路」の地域から来た人たちだ。「一帯一路」とは、今年3月に全人代(中国の国会に相当するもの)で審議された「第13次5カ年計画」に盛り込まれている、「新シルクロード経済帯と海上シルクロードの地域による、共通の経済圏をつくっていく」という、壮大な構想のこと。まさにこの構想が徐々に動き出していることが会場の様子から伺えた。開催期間中は、18ものワークショップやパネルディスカッションが行われ、FX業界の経営陣や専門家らが熱い議論を交わした。また「アジア市場の開拓において不可欠な最先端テクノロジーのトレンド」や、「トレーディングマーケットのアジアの役割について」といったテーマが用意され、中国を中心としたアジア市場への進出やアジア市場の見通しについての講演が多いと感じられた。

 

インタビュー①

唯一日本から出展

 

 今回唯一日本から出展したNEXTOP Asia。FX、金融デリバティブの取引システムの開発を主に携わっている。会社が設立されて4年目の今、なぜ今回出展されたのかについて菅原崇 取締役社長に聞いた。


 「FX業界はとても大きいので、小規模な企業の新規参入はやや厳しい部分がある。ならば、海外に向けてビジネスができるようにしようと考えなおし、こうしたイベントにも積極的に出るようにした」と述べた。香港は、中国をはじめアジア諸国のクライアントが多く集う拠点で、香港で行われる展示会に参加する企業は多く、顧客開拓に有利とみている。菅原社長は、将来的には日本で培ったテクノロジーを世界に広げ、アジアから世界を目指していきたいと話された。


 今回のイベントについては、「商談相手は、中国本土の企業をはじめ、東南アジアなどからの企業が目立った。これらの国の人たちは、低コストの初期投資を考えている企業が多いと思う」と壁を感じたと話す菅原さん。中国企業はモバイル市場を重視しているので、どうアプローチするかが今後の課題になりそうだ。

 

インタビュー②

次世代型取引プラットフォーム

 

 今回初出展した、次世代型取引プラットフォームを販売しているHI-CARE Financial Services営業部日本担当 坪井桂子氏は、「これまではイギリス、中東、南アジアが主な市場でしたが、今後は日本、香港、シンガポールなどアジア市場を視野に入れるため、今回の出展に至った」と話す。中国本土からテクノロジーに関する問い合わせが多かったのも理由だそうで、予想の倍以上の来場に驚いていた。なかでも特に印象に残ったのは、中国本土の方の商談のスピーディさ。「とても決断が早い。トレードされている方は前もって情報を収集されて来られるので、話が早いと思う」と出展した意義を実感。確実に今後世界で普及していくサービスなので、より注力していきたいと話した。

 

インタビュー③

人民元建て金融資産は今が買い時

 

 FXブローカーFX PRIMUSの投資調査部門統括として働きながら、経済アナリストとしても活動されているマーシャル・ギトラ氏は、今の中国、香港経済の低迷について、「香港は1998年のアジア金融危機の時に大変な危機に見舞われたが、それにも関わらず対米ドルペッグ制は崩壊しなかった。したがって、今後も米ドルペッグ制は維持していくと思う」と述べた。人民元安で人民元資産を売る動きがあるなかで、ギトラ氏は人民元建て金融資産は今が買い時だと断言する。これは人民元は今後も国際化が進み、中国経済も安定的に成長していくとみているからに他ならない。アジア金融危機の再来が懸念されているなか、1998年の経験から、中国政府、香港特区政府は十分に対処できるとギトラ氏は見ている。世界で金融市場が動揺する中でも、業界の関係者らはポジティブな見方を示しているといえるだろう。

(このシリーズは月1回掲載します)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログhttp://nararisa.blog.jp/