(インタビュー・楢橋里彩)
——1978年に設立されているそうですが、随分昔からあるのですね。オープントップバスを使った観光向けのバスはあったのですか。
今街中で見かけることは増えていますが、確かにあの当時はほとんどなかったです。日本人向けの観光バスサービスは弊社が初めてなんですよ。
——まさに先駆けだったのですね。
サービスを始めた当初は、まだ英国植民地時代でした。このころオープントップの観光バスはすでにありましたが、今ほど盛んではありませんでした。当時は街のど真ん中に「啓徳空港」があったため、香港のネオンは今以上にギラギラしていたものです。看板ギリギリのところを2階建てバスが走るということで、今にも手に届きそうなネオンを真上にスリルを味わえるというのも、こうした環境のなかで生まれました。80〜90年代当時は日本人も多く来られていたので、日本人向けの観光ルートを多く作りましたね。香港は経済的にも不安定な時期が長く、香港支店はようやく今年に入って観光客が戻ってきていると実感しています。
——特に大きな打撃というと?
2012年9月の尖閣諸島問題でした。それまでは香港に来られる方はとても多かったのですが、中国本土の反日感情が強まり始めたの機に、香港も大きな影響を受け、観光客は激減しました。その翌年は円安の煽りを受け、海外への渡航者の足踏み状態が続き、従来の観光客のおよそ20%減少の月も出たほど打撃を受けました。
——一方で中国本土の観光客が押し寄せて「爆買い」などが目立ち始めたのが13年ごろでしたね。
そうですね。それに伴いホテルの宿泊料金が大幅な値上げとなったので、以前に比べて泊まりにくくなるなど、しばらく日本からの観光客が遠のいていました。さらに14年は日本の消費税が5%から8%に上がったこともあり、旅行を控える人も増えました。そのまま9月にはセントラル占拠行動(民主化デモ)が始まりました。これを機にさらに香港に対して良い印象を持たない方が増えたわけですね。
——今年に入ってからも香港経済に対して悲観的な見方が強まっていますね。
確かにそうなのですが、いわゆるパックや団体で旅行に来られる方は減っても、根っからの香港好きの方も多く、ツアーに参加せず気軽にオンラインでお得な航空券を購入し、来る個人客の方はいるんです。ただ安い航空券も日本が大好きな香港人の方に利用されるケースも増えてきて、気軽に香港、日本を行き来できる航空券の値段ではなくなっていますね。
——観光バスのオプショナルツアーはどのくらいあるのですか?
50種類近くありますね。常に新しいことへの挑戦をしているので結果としてここまで増えているという感じですね。私自身も年に数回はオプショナルバスのコースを実際に乗ってみて、どの部分を変えていくべきか、細かい話し合いをスタッフとします。
——人気のプランは?
「ビクトリアピークの夜景」や「アバディーン水上レストランでのお食事ツアー」「オープントップバスの夜景をみるツアー」です。九龍半島のルートは4月に変えたばかりです。以前はネオンの迫力があったものの、今は時代と共に徐々に変わりつつあります。それなら新たな海岸コースを作って、九龍半島からみえる香港島の夜景を楽しんでもらおうと考案しました。
——リピーターの方も飽きない作りを徹底しているのですね。
特に香港は日本から近いというのもあり、週末などを利用した「弾丸旅」が主流となっています。旅行者は時間を無駄にしたくない、効率よく動きたいという方が圧倒的です。こうした流れを受けて、弊社も少しずつ形をかえていきました。例えば「オープントップバスに乗って女人街の散策」があります。このツアーは午後8時30分からスタートしますが、時間を考慮し、食事の後には飲みにいく時間も十分にほしいという方のためにも小1時間で満足できるようなプランをご用意しています。
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。ブログhttp://nararisa.blog.jp/ |
|
|