雨季に入ってからは突然、集中豪雨に遭って逃げるようにタクシーに乗ることが増えた。車内から窓の外を眺め広東語で「好大雨啊！（すごい大雨だなあ）」と独り言をつぶやくと、ドライバーが「真喺啊！」とうなずき、そこからなんとなく会話が始まる▼内容は天気の話から政治、社会ネタまでさまざま。オンタイムの巷の話題が飛び出して、なかなか楽しい。ときには、行き先を告げると「あんた、どこの国の人？」とドライバーに聞かれる。「当ててください」と筆者。「大陸人とは雰囲気が違うな、肌が黒いしシンガポールだろう？」と言うので、「いや、マレーシア華僑だよ」と冗談で返すことも▼そんなことが当たり前になっていたせいか、出張中に日本でタクシーに乗ったとき、つい「うゎー、渋滞ひどいな」といつもの調子で言葉を発してしまった。どうやら独り言で、話しかけられたわけではないと判断したドライバーは返事こそしなかったものの、けげんな顔に。さりげなくとりつくろうのに苦労した。 （Ｊ）