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最新号の内容 -20160624 No:1457
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 賄賂・不正取引について

 

 日本の親会社から目が行き届きにくく、香港法人トップの駐在員である地位を悪用し、横領するケースを年に数回は見聞きします。国際基準の賄賂防止規制を有している香港で、香港の賄賂防止条例の法令を理解しておくことで無用なトラブルを避けることができるでしょう。
 
 
賄賂防止条例(Prevention of bribery ordinance)(香港法律第201章)
 
 この条例はパプリックセクターで働く公務員と民間組織の代理人(Agent)(注1)が関わる不正取引および賄賂の両方が対象となっています。読者の方に関連のありそうな、民間組織における賄賂防止条例について、今回このコラムで説明したいと思います。
 

利益を受ける側の責任:

 賄賂防止条例の第9(1)条により、合法的な権限、あるいは、合理的な弁解なしに任意の代理人が以下の行為の誘因、あるいは、報酬として何らかの利益を受け取り、あるいは、懇請し、
(あ)会社業務や事業でやるべきでない行動を取ること。あるいは、やるべき行動を控えた。あるいは、
(い)会社業務や事業に関連し任意の人に対して優待した。あるいは優待しない。
ことは、有罪である。
 
 
利益(advantage)とは
 
 法律での利益は幅広く以下の様に規定されています。
(a)金銭的な性質あるいは他の価値がある何らかのギフト、ローン、費用、謝礼、コミッション
(b)何らかの職務、雇用、契約
(c)何らかの支払い、債務免除、責任免除(一部あるいは全部)
(d)その他のサービス、好意(接待(entertainment)は除く)、罰や責任への保合(例えば、執行免除や控え)
(e)業務上与えられた権利・権力の行使・不行使
(f) (a)~(e)で言及された利益に関するオファーや約束
 
 なお、接待とは、その場で飲み食べ終わる飲み物と食べ物の提供の事で、それに関連するサービスも含まれます。
 
 
利益を与える側の責任
 
 利益を受ける者がいるということは、利益を与える者がいるということで、賄賂の場合、二者一体の関係があります。
 
 賄賂防止条例の第9(2)条により、合法的な権限、あるいは、合理的な弁解なしに任意の人が以下の行為の誘因、あるいは、報酬として利益を提供し、代理人が、
(あ)会社の業務や事業に対して、やるべきでない行動を取ること。あるいは、やるべき行動を控えた。あるいは
(い)任意の人に対して、会社業務や事業で、優待した。あるいは優待しない。
ことは有罪である。
 
 
違法の免除となる条件
 
 賄賂防止条例の第9(4)(5)条により、(あ)利益の提供、勧誘、受け取る前に会社の許可を得る。あるいは、(い)事前の許可はなかったが、利益の提供 を受けた後、当事者が直ちに会社(注2)に許可をもらった。
 
 
賄賂防止条例違反となる具体的な例:
 
例1: ある日系メーカーが、購買の際、品質価格から考慮するとA社と契約すべきところを、担当者がB社から賄賂をもらっていたためB社と契約した。
 
例2:最近もある小学校の受付の人が、ある子の入学に便宜を図る旨約束し、謝礼を受け取ったためこの賄賂防止条例違反で逮捕されました。
 
 
罰則
 
 陪審員がいる裁判の場合、50万香港ドルの罰金および7年間の禁固刑、即決判決の場合、10万香港ドルの罰金および3年間の禁固刑となります。
 
 
※注1 代理人(agent)の法的意味…法令の定義は幅広く、公務員、従業員、人の代行も含まれます。普通に会社に雇われているサラリーマンも定義では(会社に対して)の代理人となります。
 
※注2 『会社』は、分かりやすくした表現であり、正式な法律用語は、本人(principal)のことです。

(このシリーズは月1回掲載します)

 

筆者紹介

ANDY CHENG
弁護士 アンディチェン法律事務所代表
米系法律事務所から独立し開業。企業向けの法律相談・契約書作成を得意としている。香港大学法律学科卒業、慶應義塾大学へ留学後、在香港日本国総領事館勤 務の経験もありジェトロ相談員も務めていた。日本語堪能
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