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最新号の内容 -20160624 No:1457
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6.4集会は過去8年で最低規模

広がる世代間の亀裂

 

 香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)は6月4日、天安門事件による犠牲者を追悼する6・4キャンドル集会をビクトリア公園で行った。27周年を迎えた今年の参加者数は主催者発表で12万5000人、警察の推計ではピーク時に2万1800人。ともに2009年以降で最低となり、警察の推計は昨年より半減した。学生団体の香港専上学生連会(学連)が支連会を脱退したほか、2大学でほぼ同時間にフォーラムが行われたことなどが影響しており、世代間の亀裂が浮き彫りとなった。(編集部・江藤和輝)
 

6・4集会の参加者数は2009年以降で最低となった

 支連会が集会に先駆けた5月29日に行った天安門事件追悼デモの参加者は主催者発表で1500人。昨年の3000人から半減し、09年以降の過去8年で最低となった。警察の推計ではピーク時に780人で、昨年の920人から減少した。学連の脱退によって学生組織の名義での参加は見当たらず、学生は十数人が参加しただけだった。

 6月4日の集会では開始直前に英国植民地旗や「香港独立」などと書かれた旗を持った者が数人乱入し、ステージに上がって「民主的な中国の建設はいらない」などと叫びスタッフに取り押さえられた。かねて見られていた過激な若者と主流民主派の反目はより顕著となっている。

 香港大学学生会は同日、昨年に続いて校内で追悼フォーラムを行った。「香港人の前途はいかに」と題し、1000人が参加。ゲストには本土派(排他主義勢力)団体「本土民主前線」の梁天琦氏らを招いた。香港大学生会の孫暁嵐・会長は記者会見で「愛国心を基調とした追悼方式はすでに終わっている」「ロウソクに火をともしたり、歌を合唱する必要はない」と表明。商業電台の番組に出演した際も「若者にとって天安門事件の追悼は意義がないため、今後1、2年で終わらせるべき」と述べていた。

 大学・専門学校11校の学生会が同日、香港中文大学で開催した合同フォーラムには1600人が参加。「6・4の意義を見直し香港の前途を考える」と題し、ゲストに独立派政党「香港民族党」の陳浩天氏や「本土民主前線」の黄台仰氏らを招いた。中文大学生会の周竪峰・会長は、支連会の集会に対し「形式主義」「中国人としてのアイデンティティーを認めるもの」などと批判。支連会の綱領にある「民主的な中国の建設」「虐殺の責任追究」は香港人の責任ではなく、「一党独裁の終結」も香港の民主化に必ずしも必要ではないと指摘した。フォーラムでは追悼活動は盛り込まなかった。

 亀裂は7月1日に予定している恒例「7・1デモ」でも予想される。民主派団体の民間人権陣線は6月10日、デモの詳細について記者会見を行った。今年のテーマは「決戦689」で、梁振英・行政長官の辞任要求を前面に押し出す。すでに警察に参加者10万人で申請を出したという(昨年は主催者発表4万8000人、警察の推計1万9650人)。同時に全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が14年8月31日に下した普通選挙に関する決定の撤回や立法会職能別選挙枠の撤廃、市民皆年金制度、政府による公共事業の回収、同性愛差別を防止する法制定など9大要求を掲げ、民主化以外のテーマも盛り込むことで幅広い市民の参加を狙う。

 一方、本土派団体「青年新政」は「7・1デモは不要」と批判し、デモには参加しないと表明。ただし沿道で募金活動を行うことを明らかにしている。民間人権陣線の召集人は「民間人権陣線の理念に賛同しないなら、なぜデモ行進の沿道で募金活動を行うのか」と疑問を呈した。

 


選挙人登録、高齢者が60%増

 物議を醸していた2047年以降の香港の前途については、全人代の張徳江・委員長が5月に来港した際、中央の姿勢を明確に示している。張委員長は「1国2制度は中国本土と香港の間の最大公約数であり、変えるべきでない」「中央は香港を本土化しようとしているとか、1国1制度に変わるとかの言い方は全く根拠がない」と断言し、香港社会の不安払しょくを図った。

 張委員長はまた「『自決』や『香港独立』は成功せず、香港の根本的利益に合致せず、絶対的多数の市民は賛成しないだろう」と述べたほか、民主派と意思疎通を図る意向を示した。民主党の若手区議会議員である林立志氏は「主流民主派が足場を固め、住民投票や独立を提唱する新政党に対抗するのを中央は望んでいる」とみている。

 立法会議員選挙を控え、主流民主派は過激な若者らと一線を画す姿勢を示している。香港民主民生協進会は6月6日、創立30周年宣言を発表した。民協は若手が提示した「香港前途決議文」を参考にし、香港人が内部自決を通じて民主的自治を実現することは支持するが、「香港独立」は香港の将来の選択肢にはないと表明。民主党も「香港独立」「主権自決」を支持しない表明を盛り込んだ決議文を策定している。

 従来からの過激な民主派勢力である社会民主連線の呉文遠・主席も「本土派の理念と価値観は主に憎悪をあおる排他的なもの」と批判。支持層は重なるが、「独立は香港の活路にはならない」ことから票を奪われる心配はないと強調した。

 選挙事務処によると、9月の立法会選の直接選挙枠で投票資格を持つ選挙人の登録者数は376万9032人で、前回の立法会選(12年)に比べ約9%増加。選挙人のうち18〜30歳は7%増の約64万人であるのに対し56歳以上は23%増の約154万人。特に66〜70歳が60%余りも増加した。香港工会連合会の黄国健・議員は新たに増えた選挙人で高齢者の割合が大きいことについて「占拠行動や旺角暴動などの発生を受け、社会の安定のために立ち上がった」と分析する。

 だが環凱移民顧問公司によると、政治的対立や社会不安などから移住に関する問い合わせや申請が12年から増え、特に旺角暴動が発生してから現在までの問い合わせ件数は前年同期比25%増、14年に占拠行動が発生してからの半年間は同30%増だったという。選挙で態度を示そうという市民が増えた一方で、香港に見切りをつける市民も増えている。