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ベトナムビジネス・会計税務入門④
〜税務その3
ベトナムでは最近、個人所得税(PIT:Personal Income Tax)について税務局の目が厳しくなってきています。税務上居住者となる場合は、ベトナムでの所得だけではなく全世界所得申告が求められます。誤った申告をしている場合、後々やっかいな事になるケースもありますので申告納付方法を理解し、正しく手続することが必要です。(NACベトナム事務所)
1納税義務者
税法上、ベトナムの居住者と非居住者とで個人所得税の課税対象、税率は異なります。まず、この居住者・非居住者の区別が重要となります。
以下の1つが該当した場合、居住者と定義づけられます。
①ベトナムにおける滞在期間が年間183日以上
②ベトナムで183日以上のアパートやホテル等の賃貸契約をする場合
非居住者は、ベトナム源泉所得に対し、一律20%の個人所得税が課税されます。一方、居住者は、ベトナム国内および国外で得たすべての所得である全世界所得が課税対象になります。
2課税対象所得
課税対象となる所得は、給与・賞与・非課税以外の手当等の給与所得、個人による製品や商品の販売・賃貸等から得る事業所得、有価証券の譲渡益、不動産譲渡益、宝くじ等の賞金、ロイヤリティ、相続、譲与などがあります。
また、会社からの住宅手当については、「住宅手当実額」と「住宅手当を除く課税所得額の15%」を比較し、その金額の低い方を住宅手当として課税所得に加えます。
例えば、住宅手当を除く課税所得額が1億ドン、住宅手当が2000万ドンの場合、1億ドン×15%=1500万ドンは2000万ドンより低いので、住宅手当を1500万ドンとして課税所得に加えます。
3非課税対象所得
非課税の対象となる所得は、年金、近親者間の不動産譲渡益、居住用不動産の譲渡益等があります。また、次の外国人駐在員に対する所得は、労働契約書に明記することで非課税対象所得になります。
・一時帰国の往復航空券(年1回)
・赴任、帰任および転勤に伴う一度限り支給の手当
・子供の高校までの教育費
4税率
非居住者の給与所得の個人所得税の税率は、前述したとおり源泉所得に対し一律20%です。
居住者は、給与所得および事業所得に対し、所得額に応じて5%から35%までの累進課税が適用されます。(表1)
それ以外の所得および非居住者の事業所得については、所得の種類に応じた一律課税が適用されます。
表1 個人所得税率
5控除制度
基礎控除額は、納税者本人に対して月額900万ドン、扶養控除は、被扶養者一人当り月額360万ドンが認められます。扶養対象となるのは、18歳未満の子供、18歳以上であるが身体に障害を持つ子供、就学中であり月収が50万ドンを超えない子供、両親または配偶者(男性60歳以上、女性55歳以上)等です。労働可能な配偶者に対しての控除は認められていません。扶養者はベトナム国内居住か否かを問いませんが、戸籍謄本による証明が必要であり、ベトナム語への翻訳および公証手続きを要します。
また社会保険や健康保険等の強制保険、寄付金も控除対象となります。
6申告納税
個人所得税は、月次申告または四半期申告および年次の確定申告が居住者に義務付けられています。
条件により四半期または月次で申告しますが、以下に該当する場合に、四半期申告が適用され、四半期の翌月末日までに申告および納付手続を行います。
・個人所得税の申告書Form7を使用して個人名で個人所得税を申告する場合(駐在員が本社から給与を受け取っている場合等)
・企業が個人所得税を源泉徴収し、かつVATを四半期申告とする場合
・企業が個人所得税を源泉徴収し、その額が5千万VND以下で、かつVATを月次申告とする場合
上記条件を満たさない場合、月次申告が適用され、前月分を翌月20日までに申告および納付手続を行います。
年次の確定申告は、暦年の年間所得に対し翌年3月末日までに申告手続を行い、納付額に不足がある場合には同じく3月末日までに納付を行います。納付額が超過している場合には、翌月または翌四半期以降の納付手続きで控除します。
ベトナムに赴任した初年度で、入国日から12月31日までの日数が183日未満となる場合、入国日から起算し12カ月後に、その12カ月分の所得に対し確定申告を行います。2年目は、1月から12月までの期間の所得に対し3月末までに確定申告手続を行い、初年度と次年度の確定申告が重複している期間は、納付済みとして控除されます。
例えば、2015年9月1日からベトナムに入国した場合、その年のベトナム滞在日数が183日未満となります。従って2016年3月には確定申告手続を行なわず、入国日から12ヶ月後の2016年8月31日までの所得に対し、申告手続を行います。この場合、期末となる日の3ヶ月後が申告期限となりますので、2016年11月末日までに手続します。2016年分については、2016年1月から12月末までの所得に対し、2017年3月末までに確定申告手続を行います。重複した2016年1月から8月までの個人所得税は控除し納付します。
7罰則制度
個人所得税の申告、納付が遅延した場合、罰金が課されます。申告が遅れた場合の罰金は表2のとおりです。
また納付が遅れた場合、1日につき納付額の0・05%の罰金が課されます。
脱税の場合は違反の回数やその悪質性によって、税金の1倍から最大3倍の罰金が課されます。
通常は前述したとおり、毎年3月末までに確定申告を行いますが、駐在員が帰任する時、または会社や駐在事務所を閉鎖する時は、年の途中であっても個人所得税の確定申告手続が必要となります。正しい申告を行っていない場合、確定申告の手続きが終えることができず、代表者の交代手続や会社や駐在員事務所の閉鎖手続が滞ってしまう例が最近見受けられます。税務上居住者となる場合は、ベトナム国内の所得だけでなく、海外での所得を含めた全世界所得の申告を行うようにしましょう。
表2 申告遅延の場合の罰金
(このシリーズは月1回掲載します)
筆者紹介
NACベトナム事務所
NAC (Veitnam) Co., Ltd.
ベトナムへの進出支援・会社設立・ライセンス取得から現地の会計記帳・税務申告・監査・連結決算・人事労務まで、良質の会計綜合サービスをワンストップで提供中。
HP: vn.nacglobal.net
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