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最新号の内容 -20160527 No:1455
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香港国際影視展(フィルマート)

 3月14~17日の4日間にかけて湾仔コンベンションエキシビションセンター(HKCEC)で開催されたコンテンツの国際見本市「第20回香港国際影視展(フィルマート)」。アジア最大規模のコンテンツマーケットであるこのイベントは今年で20回目を迎えた。世界各地から映画製作・配給会社やテレビ局等の映像コンテンツ産業関係者が集まり、会場には毎年、映画・ドラマ・ドキュメンタリー番組など映像作品の売買取引が行われる。

フィルマートのジャパンパビリオン

 アジア最大規模、仏カンヌ祭に次ぐ二番目の大きさとなる同イベントは、今回は約35カ国・地域の780社余りが出展、世界の大手エンターテインメント企業のほとんどが出展した。中でも特に中国本土の企業が多く、過去最多となった。

 2日目の3月18日には日本・香港コラボレーションセミナ「クールジャパン最前線TV &Film &Animation」が開催され、「クールジャパン」に焦点を当て、映画・テレビ・アニメ業界の日本、香港、中国本土の業界関係者による、日本映像コンテンツの香港、アジア展開についてのパネルディスカッションが行われるなど、最新情報などについて熱いディスカッションが繰り広げられた。パネルディスカッションに参加した香港テレビ局TVBの情報バラエティー・スポーツ部門エグゼクティブ・プロデューサーKent Y.W.Tse氏は「昨今の円安(取材当時3月)の追い風を受けて、一気に若い世代が日本に旅行に行く流れができた。さらに格安航空(LCC)の就航がさらに週末などを利用した超短期旅行の増加傾向に弾みをつけている。日本の食、文化、ファッションなどに憧憬する香港の人々は多いので、今後も日本の最新トレンドを取り入れながら番組制作をしていきたい」と話した。

 日本のブースは鳥居を模した作りとなり、会場では関係者の目を引くほど華やかだった。今回は、JETRO・ユニジャパンによるジャパン・パビリオンをはじめ、札幌映像機構による地域連合パビリオンのリージョンズ・オブ・ジャパン・パビリオンなど全国13都道府県から80社が出展した。日本ブースに出展したTV局4社の担当者に話を聞いた。

 

①RKB毎日放送株式会社 アジア戦略室長 米村寧さん

 3回目の出展。最初の年は感触はなかったが、回を重ねるごとに弊社の番組が香港を始めアジア地域で知れ渡るようになるようになり徐々に手ごたえを感じている、と話す米村さん。このイベントの最大の魅力については、世界各国から人が集まりやすい場所であり、様々な国の人たちと親交を深め、意見交換ができることだと話す。こうした中で、海外に日本の番組を提供するうえで難しいと実感しているのは「ローカライズ」すること。言語も放送上可能までに編集をし、分かりやすく見やすい番組を提供している。今後は東南アジアを中心に海外のTV局などと一緒にイベントを行ったり、日本の文化を伝えるような催し物を行うなど番組以外の部分でもパイプを太くして九州の魅力を伝えていきたいと話した。
 

②朝日放送株式会社 東京支社 コンテンツ事業部 
海外セールスチーム 米田祥子さん


 朝日放送株式会社は、4月にアニメーションビジネスに特化した新会社「株式会社ABCアニメーション」を設立した。主にアニメの企画・製作や映像ソフト、海外販売、物販、イベントなどの事業展開を行う。他にも株式会社ABCフロンティアホールデイングスも設立され、朝日放送の全額出資子会社として、ABCアニメーション、ABCインターナショナル、ABCライツビジネスの持株会社を展開している。こうした動きについて米田さんは、コンテンツビジネスの環境変化とともに時代に柔軟に対応する必要性の強さを感じていると話す。今後は多角化していく事業のなかで、主に海外に番組を販売していく事業展開を意識し、これまで事業を広げてこなかったエリアにも積極的に拡大していくことを狙う。

 「アジアの最大のイベントに自身は初めて参加したが、あまりにも、活気があり、想像以上です」と驚きを隠せない様子で話す米田さんは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、インバウンド事業の展開や、アジアのTV局を中心に共同制作をして日本全体を盛り上げていきたいと意気込みを語った。
 

③北海道文化放送 事業開発局事業開発部 柳町雅志さん

 過去にも何度か出展している北海道文化放送だが、今回出展した柳町さんは、「香港市場は、シンガポール以上の活気を感じる」と話した。同社が特に力を入れているのは旅番組、アニメーションだ。香港からの観光客数が多く訪れる北海道では、特に海外向け作りの番組には力が入る。

 柳町さんは、フィルマートに出展することで、「ここ数年で、さらに香港を基盤として周りの国々にコンテンツをもっていくシステムが出来上がってきた。香港だからこそ、思いがけない新しい商談が舞い込んで

くることも魅力の一つ」と言う。TV局対TV局とい

う関係は今や崩れ、今後重要視されていくのは、コンテンツ、ライセンサーとしての動画発信。ライセンサーとして臨機応変に対応し、いかに魅力あるコンテンツを広く提供していくか、その点では香港市場は挑戦しがいがある場所だと話した。
 

④立命館大学映像学部

立命館大学映像学部教授の中村彰憲氏、准教授の藤岡幹嗣氏、学生の井内大輔さん、八木日向子さん 

 京都からは、京都市が中心となり、立命館大映像学部、KBS京都など5団体が出展した。立命館大学は一昨年前から参加しており3回目。日本から参加する唯一の大学だ。学生らが授業の一環として制作した家族がテーマのオムニバス映画「嵐電の街、ひと模様」は、京都と東京で一般上映したものを香港のイベントに出展、上映。映画は京都が舞台。100年近い歴史のある京都市内中心部と嵐山を結ぶ京福電鉄嵐山線、通称「嵐電(らんでん)」を中心に様々な人間模様を描いたもの。沿線沿いには世界遺産「天龍寺」「龍安寺」など多くの世界的な観光地があることも手伝い、上映後の海外のメディアの商談は50件以上あった。同大学映像学部中村彰憲教授は今回の出展に大きな手ごたえを感じたという。同映画は3月から米デルタ航空機内で上映も開始されている。海外のビジネス交渉を担った3回生(当時)の井内大輔さんは、「映像制作に携わり、昔から育まれてきた文化が多くある京都を守りながらも、さらに世界に発信したいと思った」と話す。今夏から10カ月のアメリカ・カリフォルニア州の大学へインターン留学を控えているということで、香港での貴重な体験やこれからのアメリカでの留学を通して、将来的に映画の配給やPRなどを国際ビジネス機関で働きたいと将来の抱負も語った。

(このシリーズは月1回掲載します)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログhttp://nararisa.blog.jp/