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最新号の内容 -20160527 No:1455
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6・4
6月4日に行われる「天安門事件」の追悼集会。だがセントラル占拠の前後から様相が変わりつつある。

 

 1989年6月4日に北京で起きた「天安門事件」の犠牲者を追悼する6・4キャンドル集会(6・4集会)=写真=が今年も6月4日にビクトリア公園で開催される。
 

6・4追悼集会
 

 香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)が1990年から主催している同集会の当時の参加者は15万人(主催者発表)、デモ行進の参加者は同25万人(主催者発表)に上った。
 

 あれから27年、集会もデモ行進も支連会を中心に毎年途切れることなく開催され、デモの参加者こそ減少傾向にあるが、集会の参加者は増減を繰り返しつつも2014年には過去最高の18万人(主催者発表)を記録した。


 しかし、同年9月から起きたセントラル占拠行動の前後から様相が変わりつつある。支連会の創設メンバーである学生団体の香港専上学生連会(学連)は、支連会が掲げる「民主的な中国の建設」の綱領などに異議を唱え、2015年の6・4集会に学連名義で参加しないと表明。さらに同年6月の集会当日には本土派(排他主義勢力)組織「熱血公民」が尖沙咀の文化中心前で集会を開催。支連会主催の集会に不満を持つ市民7000人が集まった。

 

 支連会を離れ、急進民主派や学生グループが独自に6・4集会を行う分裂の流れは加速しており、天安門事件に対する支連会の見方を否定する親政府派の動きも活発になるなど、求心力の低下は否めない。


 昨年はビクトリア公園周辺で過激派団体の熱血公民や香港本土力量、親政府派団体の愛港之声や保衛香港運動などが活動を行い、衝突を警戒し公園周辺に少なくとも500人、各地の追悼活動のため全体で1000人以上の警官が配備された。愛港之声などは「天安門事件の真相」と銘打ったビラを配り「広場での死者はいなかった」と市民に訴えたほか、保衛香港運動は殉職兵士の追悼集会を実施。熱血公民は香港全域をバスで巡回した後、尖沙咀で集会を開催した(約800人が参加)。また香港大学は午後7時半から校内の中山広場で追悼集会を行い、主催者発表で2000人が参加。「香港独立」主張で問題となった学生会報『学苑』元編集長らをゲストに招いた。


 そして今年4月、学連が支連会から正式に脱退。同時に7・1デモを主催する民間人権陣線からの脱退も決定した。支連会の蔡耀昌・副主席(元学連秘書長)は学連から脱退の通知を受けたことについて「残念だが学生の決定を尊重する」と述べている。


 支連会にとっても国内外の民主活動家にとっても、6・4集会は香港が一致団結して民主化運動を続けていることを内外にアピールする絶好の機会だった。だがセントラル占拠行動以降、6月4日は香港の各政治グループがそれぞれの主義主張をそれぞれのやり方で唱える、混沌とした日になりつつあるようだ。


 

深港通
上海に続き深圳と香港の株式市場の相互乗り入れが年内に実施される。さらなる資金流入はあるか?

 

 「深港通」と呼ばれる深圳と香港の「相互乗り入れ(両株式市場の相互取引開放)」が年内に実施される見通しとなった。今年2月、香港取引所(HKEX)の李小加・最高経営責任者(CEO)が下半期に実現するとの見通しを示し、3月には李克強・首相が全国人民代表大会(全人代)で発表した政府活動報告に盛り込み、年内の施行を目標としていることを明らかにした。実現すれば2014年に「滬 港通」と呼ばれる上海との相互乗り入れが始まって以来の大規模な株式市場改革となる。


 深港通は当初、滬 港通の施行後すぐにでも決まりそうなそうな勢いだった。昨年1月には首相が「滬 港通の次は深港通だ」と語り、市場の期待はぐっと高まった。だが、その後のA株の急落により本土市場は低迷。しばらく棚上げに近いかたちになっていた。


 深港通では本土側の投資家のハードルを滬  港通よりも下げる可能性があることや、これまでのノウハウが生かせること、香港と深圳 は地理的にも文化的にも近いといった理由から、投資家の支持が得られやすいと見る市場関係者は多い。


 また、香港では株式市場の冷え込みにより株価が業績を正しく反映していない企業も少なくない。本土投資家にとっては割安と感じられる銘柄も多いようで、今回も滬 港通の施行時同様にA株とH株の株価の差が大きい銘柄に注目が集まるとみられ、香港市場に大量の資金流入をもたらすと期待する声がある。


 だが、滬  港通の施行後も香港と上海の市場は一時急騰したが、その後は急落。現在は一進一退の様相を呈している。香港と本土市場の相互乗り入れは一時的なカンフル剤としての措置ではなく、李CEOが「香港は中国金融の迅速な発展についていけば20年の繁栄が約束される」と指摘しているように長期にわたる市場の相互発展であり、香港経済の繁栄を維持するために必要な改革でもある。


 すでに香港と本土は「共同市場」の時代に入り、上海・深圳の両証取のほかに、中国金融先物取引所や各地の商品先物取引所とも今後3年の間に相互乗り入れを実現する構想がある。しかし一方で、先ごろは上海市場と英ロンドン市場の相互乗り入れのニュースが関係者に衝撃を与え、シンガポールと天津が人民元業務で協力する計画も浮上している。

 香港だけが本土の金融市場のゲートウェイではなくなりつつある今、本土市場との融合をどのように図っていくのかが、香港経済の発展を左右する試金石になることが改めて示されている。 

(このシリーズは1カ月に1回掲載します)