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最新号の内容 -20160513 No:1454
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 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

 

中国アレルギーがないマカオ

 


マカオ新聞
編集長 勝部悠人さん


【プ ロフィール】 
1977年生まれ、京都府京都市出身。上智大学外国語学部ポルトガル語学科を2000年に卒業後、同年ぴあ株式会社入社。主にレジャー系ムック本の編集を担当。2007年に新雑誌創刊のためマカオへ赴任。2009年から香港現地法人に籍を移し、出版およびエンターテインメント事業のアジア展開に従事。2012年に独立・起業、マカオに大航海時代新聞出版社有限公司を設立、日本語ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ、現在に至る。

   


——マカオで注目されている話題といえば、中国が国家プロジェクトとして推進している香港とマカオ、広東省珠海市の三地をつなぐ「港珠澳大橋」ですね。

 経済効果はかなり期待されています。香港国際空港と直結するので、香港に入らなくとも、そのままマカオに行くことができるようになります。開通したら24時間運行のシャトルバスも走るようです。利便性が一気に高まり、気軽にマカオに行く人も増えますね。ですが課題は山積みです。ラスベガスに比べ売り上げは6倍ではありますが、9割近くをカジノ部門に依存してきました。中国経済の減速のあおりを受け、マカオ経済は立て直しをしなければいけない時期に入っています。


——今後の政策はどのようなものなのでしょうか。

 カジノ依存からの脱却を図るということですね。その一つに昨秋できたばかりの大型商業施設「スタジオシティ」があります。これはノンゲーミング(非カジノ要素)を取り入れたファミリー層を意識した施設です。マカオのイメージを変えていこうと政府とカジノオペレーターは必死です。


——マカオのカジノ経済が後退し始めたのはいつごろですか。

 2013年下半期から徐々にでした。ただマカオ政府は売り上げが伸びていた時から財政備蓄をしっかり作ってきたので、経済は足踏み状態ですが歳出5年分くらいの貯金をもっています。経済的に厳しくなっていると言われている中、橋やタイパ島で新たなターミナル、マカオの周辺に埋め立て地を5カ所造るなど、インフラを整え、新たに観光客を呼び込もうという余裕があるんですね。ちなみに2015年のカジノ売り上げは前年比で3割以上落ちています


——3割もですか?

 一見大きく落ちたようにみえますよね。ですが金額ベースで11年と同じです。依然カジノの売り上げは好調です。マカオは国ではなく、香港同様、中国の特別行政区です。しかも面積は30平方キロ、人口は64万人なんですね。歳入は3兆数千億円にのぼり、税収が1兆3千億円。64万人の人口でどうやって使うんでしょうね(笑)。ほとんどは財政備蓄に回されます。


——ギャンブル環境下での子供の教育はどうなっているのでしょうか。

 ギャンブルの歴史が150年あるマカオでは、市民は皆生まれたときから日常生活でうまくカジノと付き合う方法を知っています。幼稚園からカジノは非日常の場所であり、行ってはいけない場所という意識と教育をしっかり学びます。公立総合大学のマカオ大学ではオペレーターの幹部を養成する「コマーシャルゲーミング研究所」があるほか、現場のカジノディーラーを養成する学校もあります。


——香港とマカオのアイデンティティーの違いを感じるそうですね。

 マカオ市民に何人なのか聞くと高い確率で「中国人です」と答えます。中国という言葉にアレルギーを感じる人はあまりいません。ポルトガルと中国マカオのパスポートを両方持っていることが安堵につながるのだそうです。


——マカオ市民は寿命は長いと聞いたことがありますが。

 男女とも平均して80歳を超えており、世界的にも長生きする地域です。先日高齢者の方に取材した時に「早く死ぬと損するからね」と言われたほどです。何といっても社会福祉制度の充実が魅力ですね。


——どのようなものがあるのでしょうか。

 1人当たりの平均GDPはアジアで最も高く財政も潤沢なため、市民一人に毎年9000パタカ(約12・8万円)の現金支給、医療費(年齢問わず)、教育費(幼稚園から高校までの15年間)は無料です。電気代補助、敬老金(高齢者手当)、さらに養老金(年金)、貧困家庭への食費補助などがあり、とにかく福利厚生が手厚いんです。


——これはすごいです!政府がしっかりと生活支援しているのですね。

 カジノ税収は減少しているとはいえ、昨年の補助金などの支出は117億パタカ(約1668億円)でした。人口が少ないために実現が可能とも考えられますが、実際に自身が住んでいてとてもありがたい制度ですね。


(この連載は月1回掲載します)

 

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。ブログhttp://nararisa.blog.jp/