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最新号の内容 -20160429 No:1453
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香港国際ライセンスショー(後編)
内閣府知的財産戦略推進事務局政策参与(クールジャパン戦略担当)元ジェトロ理事の浜野京さんに聞く

 
ライセンスビジネスの展示会としてアジア最大規模といわれる「香港国際ライセンスショー」が湾仔にある香港コンベンション・アンド・エキシビション・センターで1月11〜13日に開催されました。前回に引き続き今回は同展示会のセミナーに出席した元ジェトロ理事の浜野京さんに話を聞きました。

 

      浜野京さんが出席したセミナーの模様


——なぜこうした取り組みを行っているのか

 クールジャパン戦略を日本の国策として進めております。日本の美意識や創造性を海外に発信しながらその価値を高め、さまざまな分野と連携することでさらに稼ぐ力を強化しようという戦略です。キャラクタービジネスを「稼ぐ」ビジネスに変えていけたらという強い思いもあります。今回はJETROからも広報ブースを新たに設置しておりますが、実はこれは官の初の試みで、アジア市場の拡大に向けて本格始動をしていきます。というのもアジアにはもっと稼ぐネタがあると確信しているからです。ご当地キャラもインバウンド事業として活用する、それにはもっと知っていただくことが必要だと感じています。

 広報ブースを設け今年40周年を迎える「ハローキティ」といった日本でも世界でも通用するキャラクターIPの先進活用事例を紹介していくことで、アジア諸国の企業に対し関心を高めていただき、日本のキャラクターを使うことでもうかるという認識を高めていくというのも狙いの一つです。

 商品として商材を売り出すこともやっていきますが、日本の作り手だけでなく海外の方にローカライズしてもらう、カスタマイズしてもらうことで、食品、器などといったさまざまな形に発展してもうけるネタを増やすことを可能にしていけるわけです。日本人のネットワークにとどめておくのではなく、現地の方のニーズにあった売り込み方、マーケットに合ったカスタマイズなどが必要になってくると思います。キャラクターのコンテンツだけでなく、いろいろな分野を連携させることで、稼ぐ力を強化できると考えています。


アニメキャラクターのフィギュア商品


——今回のイベントでJETROが出展しているのは香港市場の拡大を目的としているのでしょうか。

 香港を起点にアジア全般ですね。香港の方は日本に非常にシンパシーをお持ちいただいており、インバウンド客も多いのですが、香港を核にしてここから中国本土や台湾、タイ、ベトナムなどといった場所に広がっていくと思っっています。そういう意味でもこのイベントはとても意義のあることなのです。

 先ほども申し上げましたように「キャラクターをどう使ってもうけるか」というところに注力していきます。特に中国本土は自前のキャラクターが多くありません。キャラクターの質と多様性は断然、日本が優位なのです。

 日本のコンテンツ市場はアメリカに次いで二番目に大きいのですが、これまで国内でもうけるということに傾注していました。ところが今後は少子高齢化が進み、消費市場も縮小してきます。素晴らしいキャラクターなどのコンテンツを日本だけにおいておくことはもったいないのですね。こうしたことから、海外の若い世代の方、また日本のアニメに親和性を持っている方を中心にファンを広げ、売っていくことが大事になってきます。

 いまだ国際ビジネスになれていない企業は多いです。コンテンツは映画もアニメも人気は高いのですが、海外ビジネスに精通した方は多くありません。どういうところでつながり、戦略的に勝っていけるかという点では、経験値が足りないと思います。契約によっては排他的にならずに、いろいろなところに使っていただく契約にするなど、どのようなパートナーを探せばもうかるか、アジアの方に楽しんでもらえるか、また自前のキャラクター商品がどの市場とマッチしているのかという観点でビジネスを戦略的に考えていかなければいけません。そして単発のビジネスでなく継続的なビジネスにつなげていくといことが大切です。

 売らなきゃいけないという思いが強かったり、表面の条件で目先のビジネスに飛びつくケースも多く見られます。太く長く稼ぐにはどうするか、法律の観点からも契約を精査する、こうしたサポートをJETROをはじめ政府が業界団体と連携して取り組んでいきたいと思っています。またイベントだけでなく日常からも発信できるようなサポートをしていきたいと考えています。

 

 

   ジャパンパビリオンには過去最多の23社が出展

 

——最後に、浜野さんからみた香港の市場はどう映っていますか

 親日的であり、日本のアニメ、漫画、キャラクターの人気が高い場所なので、ありがたいことに香港サイドで日本のキャラクターイベントを盛り上げようとする動きが大きいと感じています。モールイベントなどもよく行われていますよね。ただわれわれはイベントをやって終わるのではなく、これをビジネスとしてつなげていくひと工夫が必要なのです。食品もそうです。大事なのは、それをきっかけに稼ぐ仕組みをつくっていくことです。そのためにも商談後のサポート体制をつくる、ネット上で恒常的に発信するなど、継続性が必要ですね。ただし言うは易しです。一社で難しければ業界で、官民連携で戦略的に動く、今からでは遅いとあきらめずチャレンジしていきましょう。

 いかに付加価値をつけるかというのは、すべての日本の商材を売るポイントです。競合ひしめくなか、ブランドの強化がまだ弱いのが現状です。課題は多いのですが、これから大きく変化を遂げる岐路に立っています。企業の皆さんとともに突破口を探しながら、日本企業の活性化のために努めたいと思います。

(このシリーズは月1回掲載します)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。
ブログhttp://nararisa.blog.jp/