香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20151106 No:1442
バックナンバー

 

 

香港日本人学校来年は50周年

 

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。(インタビュー・楢橋里彩)

 

 

 
香港日本人学校小学部香港校 
|
校長 樗木昭寿さん

【プロフィール】 1954年生まれ、福岡県出身。1976年3月、福岡教育大学中学校教員養成課程英語科卒業後、福岡市立高宮小学校教諭、外務省派遣教員としてソウル日本人学校教諭、福岡市立赤坂小学校校長などを経て福岡県国際理解教育研究会会長、福岡市国際理解教育研究会会長を歴任。2015年から香港日本人学校小学部香港校の校長に就任。趣味は休日のスイミング、テニス 毎朝のジョギング。

 

——日本人学校の先駆けとして1966年に設立された香港日本人学校は来年創立50周年を迎えますね。

 今年4月に赴任し、半世紀の伝統の重みを感じます。この50年、本校の教育目標は「国際社会の中で互いを認め合い、豊かな心と確かな学力をもち、自立したたくましい児童の育成」です。日本の学習指導要領に基づいた教科領域を日本で一番多く使われている教科書を使って授業を行い、徳、知、体のバランスの取れた人格形成を目指して教育しています。
 

——具体的にはどのようなことを?

 日本伝統文化体験などが挙げられます。海外にいるからこそ日本の伝統文化の深みを知ってほしい。茶道クラブ、琴や和太鼓などの和楽器などは子供たちにも人気があり、積極的に学ぶ子も多いほどです。このような体験を通して自立した日本人としての感性と誇り、アイデンティティー、いわゆる自己確立を学びます。一方で国際都市香港で生活するための教育、香港に在住する利点を生かして「国際性の涵養」を目指しています。香港は海と山に囲まれ面積も狭いので動きやすいですよね。これを授業でも生かそうと校外学習も様々な場所に行きます。香港の自然、地理、歴史、生活文化を知るための大切な授業の一環です。
 

——香港校は海外の日本人学校のなかでも語学の時間を多くとり、国際教育に熱心とうかがっています。

 香港の公用語が中国語と英語というのが大きいですね。バイリンガルの子供たちが多い環境のなかで、いかに異文化を理解し、広い視野、多様な見方、考え方ができるかが重要です。当校では特に英語教育は重視しており全学年週5時間(毎日1時間)の英語4技能(読む、書く、聞く、話す)の育成をしています。各学年3〜4クラスに分けた少人数習熟度別指導や、4〜6年生では図工イマージョン教育としてすべて英語で授業を行い、英語での芸術に関する感性も学びます。
 

——まさに授業を通して実践的英語を学べる素晴らしい環境ですね。来年には日本人学校初のさらに語学を強化した特別なクラスが設けられるそうですね。

 来年4月から「グローバルクラス」を開設します。これは英語をより強化するだけでなく、グローバル社会に対応できる能力の育成を目的としています。現在、香港にはインターナショナルスクールが数十校もあり、海外からビジネスで香港に移住する外国人のニーズに応えられる教育環境があります。そのため日本人もインターナショナルスクールに通う小中学生が600人以上いて2011年には補習授業校も開設されました。国際都市香港で英語力をつけたいことが第一で、さらにビジネス等で世界のどこに移住しても通用する「学力」を身に付けることが目的です。
 

——具体的にどのような授業を行うのでしょうか。

 「グローバルスタディーズ」という新科目を導入します。これは世界に共通する現代的な課題をテーマにし、バイリンガルで課題設定、調査、発表、討論、振り返りの過程を通して課題解決力、コミュニケーション力、主体性を育成するものです。学んだことは広く児童や市民に考えてもらったり行動を一緒に起こしてもらったりするため学校内で発表したり、コミュニティーに還元します。
 

——少子化が叫ばれている昨今、このような新たなクラス設立は御校にとっても挑戦になるのでは?

 本当にそうです。戦後、日本人学校の先駆けとして設立された本校は中国の改革開放政策により香港に進出する日本企業も著しく増え、97年には2000人を超えました。その年に小学校を二つに分け(大埔校新設)中学部と3校体制にした後、日系企業が中国本土に直接進出する傾向が高まり、本校の児童数もピーク時の半分ほどなりました。来年創立50周年を機に新しい校舎、施設設備の整った教育環境を生かして特色ある教育を始めることで児童数増加をめざし、さらに充実した魅力ある学校を創っていきたいと思います。(この連載は月1回掲載します)

※本紙1440号の本欄に誤りがありました。次の通り訂正しておわびいたします。

(誤)分配利回りは年45%
(正)予定積立利率は年4・5%

 

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。ブログ http://nararisa.blog.jp/