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最新号の内容 -20141121 No:1419
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発起人の自首も
占拠の収束模索

 

 セントラル占拠発起人、香港専上学生連会(学連)、学民思潮、民主派議員、民間団体は11月1日から5者会議を重ね、こう着状態にある占拠行動の打開策を話し合っている。立法会の補欠選挙によって民意を問う方法が挙がったが合意は得られず、学連代表は北京での中央高官との対話を試みた。世論調査では市民の7割が即時撤退を求めるなど、1カ月半が過ぎた占拠行動に世論の反感は高まっており、主導する各団体は収束の道を模索している。(編集部・江藤和輝)
 

占拠地では多くのテントが並ぶものの参加者の減少も顕著 

住民投票に民主派及び腰


 学連は立法会の民主派議員が辞職し、その補欠選挙を住民投票に代えることを提案。2010年と同様に直接選挙枠の民主派議員が5選挙区から1人ずつ辞職するというものだ。民主党と工党は目的や効果を疑問視し否定的な立場を決め、他の議員も立場を保留していたが、社会民主連線の梁国雄・議員は支持を表明。10年の際は親政府派がボイコットしたが、今回はセントラル占拠への支持か反対かを問う対決として参加するともみられる。ひとたび親政府派が参戦すれば民主派が否決権を失う可能性が高いほか、補欠選挙までの期間に親政府派が議事妨害を防ぐ修正案を可決させるとの意見が上がった。もう1つの方法として職能別選挙枠の区議会第2枠から1人が辞職する案もある。しかし区議会第2枠に2議席を持つ民主党と他党で意見は分かれる。

 一方、学連の周永康・秘書長は、北京に赴き全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の決定撤回を訴える計画を表明。親政府派政党の民主建港協進連盟(民建連)の鄭耀宗・主席が占拠撤退を条件に学連代表と中央との対話を仲介すると申し出たが、学連はこれを拒否。董建華・元行政長官(全国政協副主席)や范徐麗泰・前立法会議長(全人代常務委員)らに仲介を要求すると発表した。

 学連は7日、元行政長官弁公室に董氏あての書簡を提出。北京での学生代表と中央官僚の対話手配について9日までの回答を求めた。董氏は8日、声明を発表し「書簡の内容は彼らの観点と立場を繰り返しているだけで、現在のこう着状態を打開することにはつながらない」と指摘。「違法活動をただちに終わらせ、合法かつ理性的な方法で信念を追求すべき」と述べたが、対話を手配するかどうかには触れなかった。このため学連は10日、范徐氏と35人の全人代香港代表にあてた公開書簡を発表。中央官僚との対話を手配するか、全人代臨時会議を開催して8月31日の決定を再審議し、変更または撤回するため全人代香港代表が連名で提案するよう要求。范徐氏に12日までに回答するよう求めた。周秘書長は「1週間以内に全人代代表の正面からの回答が得られない場合、仲介者の協力は求めず北京に直接赴いて中央官僚と対話する」と表明した。

 このほか収束の象徴となり得るのがデモ参加者らの自首である。12日付『明報』はセントラル占拠の発起人3人が21日にも自首するつもりだと報じた。発起人の戴耀廷氏と陳健民氏は10月28日に教職に復帰すると発表し、それぞれ香港大学と香港中文大学に戻った。セントラル占拠のもともとの構想は参加者が占拠後に自首して刑事責任を負う意思を示し、大衆に法治を無視していないと理解させる狙いだった。だが関係者は一部参加者には刑事責任を負う心構えがないことを認めている。学連などは強制排除が行われれば逮捕を受け入れる方向に傾いている。

 10月30日付『明報』によると、自首の意向を示したのは発起人3人のほか19人。民主派議員26人のうち自首を表明したのは9人だけ。同紙が金鐘、旺角で行った調査(対象212人)では「自首する」との答えは17%、「自首しない」との答えは45%。「自首しない」と答えた者のうち25%は「法を犯したとは思っていない」という。11月12日付『星島日報』によると、同紙が5〜6日に金鐘のデモ隊182人に行った調査では「自首する」は34・1%、「自首しない」は57・7%。撤退拒否は84・6%にも上った。

 

市民の7割、即時撤退求める

 セントラル占拠に反対する「保普選反占中大連盟」は11月3日、警察を支持する署名活動の結果を発表した。署名活動は「道路を市民に返せ。秩序を回復せよ。法治を守れ」をテーマに9日間行われ、183万5793件の署名を集めた。8月に行ったセントラル占拠反対署名の150万人余りを上回り、香港の人口の約4分の1を占めた。

 内訳は街頭署名が134万610件、ネット署名が49万5183件。今回は8月の署名と異なり香港住民に限定。18歳以下の署名8481件を含み、悪意やルール違反の署名1万2000件余りを除いた。同連盟執行委員会は3日、林鄭月娥・政務長官と黎棟国・保安局長にこれを提出し、適切な時期に法を執行し秩序を回復するよう求めた。特区政府が国務院香港マカオ弁公室に提出する報告にはこの数字も含まれる見込みだ。

 香港理工大学社会政策研究センターが4日に発表した世論調査では市民の7割が「占拠行動の参加者らは今すぐ撤退すべき」と考えていることが分かった。調査は1〜2日、554人を対象に行われた。占拠行動参加者らが即時撤退し占拠を終わらせることについて「賛成」が72・3%、「反対」が26・8%だった。特に60歳以上では「賛成」が98・1%を占め、年齢が高いほど撤退を求めている。「賛成」の理由としては「経済・民生に影響する」が47・6%、「実質的な効果がなく続けても意味がない」が17・5%、「不満があっても17年は普通選挙を実現すべき」が13・8%、「流血の惨事を懸念」は2・1%。占拠行動が今日のようになった責任は誰にあるかについては44・2%が「梁振英・行政長官と特区政府(38・4%)、中央政府と全人代常務委(5・8%)」、45・5%が「セントラル占拠発起人(31%)、学連・学民思潮(9・5%)、占拠参加者(5%)」だった。

 また民建連は10月半ばから2週間、12歳以上の市民5531人を対象に調査を行った。「占拠行動はいつ終わらせるべきか」との問いに対し「今すぐ」が67・2%に上り、次に多かったのは「1週間以内」の10・6%、「無期限」は4・7%だった。「警察が必要な際に強制排除を行う」ことに対しては「賛成」が76・8%、「反対」が13%。「自身の生活への影響」については「ある」が71・3%、「ない」が28・7%だった。

 民主派議員らが補選案に及び腰なのも、こうした世論の風当たりを受けてのことだ。15年には区議会議員選挙、16年には立法会議員選挙が行われるが、占拠行動によって民主派の形勢は不利になったとの見方も出ている。