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最新号の内容 -20170512 No:1478
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典型的香港人の本性

日常生活の言動から読み説く(タクシー編)

 

ケリーラムの香港夢

ケリー・ラム(林沙文)

(Kelly Lam)教師、警察官、商社マン、通訳などを経て、現在は弁護士、リポーター、小説家、俳優と多方面で活躍。上流社交界から裏の世界まで、その人脈は計り知れない。返還前にはフジテレビ系『香港ドラゴンニュース』のレギュラーを務め、著書『香港魂』(扶桑社)はベストセラーになるなど、日本の香港ファンの間でも有名な存在。吉本興業・fandangochina.comの香港代表およびfandangoテレビのキャスターを務めていた

 

 皆さんは何のために私ケリー・ラムのコラムを読んでいるのでしょうか? 辛口の文章、それとも単純に私のような変な外国人がお好きなのか。どんな理由でもこの連載を読んで得られる収穫は、香港の裏の世界や文化、典型的な香港人の性格が分かるようになるということだと、私は確信しています。

 

 言うまでもなく、香港にも礼儀を重んじて、親切で、人情味のある優しい人は確かにいるけれど、典型的な香港人なら一体どんな本性を持っているのか? 日常生活の習慣からすべて見えてきますので、この機会に勉強してください。

 

序列の意識は皆無


 ひとつ目はタクシーについて。タクシーに乗るとき、香港で順番や序列の意識は全くありません! タクシースタンドならしょうがなく並ぶけれど、道路でタクシーを止める場合は誰も順番を守りません。明確に自分が後から来た、自分の前に道路で誰か待っていると知っても、タクシーが現れたなら、すぐ何の後悔もなく、お詫びもなしに、先にタクシーに乗りこむ香港人がほとんどです。これは仁義、道義に違反することと似ていますが、10人のうち8、9人がそうするでしょう。先にやった者勝ちなのです。遅れたら失敗者。簡単すぎる理論です! ビジネスや交友の場でも同じ考え方の香港人がいっぱいいます。この序列意識が低い現状は、職場、社会、学校で、先輩を尊敬する意識が薄いことと同じです。

 

 1970〜80年代に私が警官だったころは、たとえ同じ階級でも先輩を尊敬・尊重していました。現在の警察隊は全くそんなことなし。同じ署内で仕事をしていても、後輩から積極的に先輩に挨拶することは非常に少なくなります。会社でも同じように、後輩が先輩を敬う意識は薄いです。たったひとつ例外があって、先輩が自分の昇進を左右する立場なら、それは全然別の話。自分の出世のためなら先輩を尊重するでしょう。

 

運転手を兄貴と呼ぼう
 

 タクシーに関する「香港での常識」はまだあります。乗客に順番意識がないのなら運転手は? 同じです! 私の実体験から言うと、運転手はどっちの乗客が先かよく分かっていても、いつも自分に一番近い道路で待っている客の前に止まります。一番分かりやすいのは、タクシーが赤信号で止まっていて、少し先の道路で乗客が明確に手をあげていることがタクシーの運転手にも見えるけれど、もし突然、別の乗客が止まっているタクシーに乗り込んできても、運転手にとって何の問題もなし。また、青信号になってから、手を挙げていた客よりも手前に別の客が現れたら、運転手は順番、優先なんてことは考えずに、その客の前に止まります。お互いに道義、仁義、道徳のルールなしで先にいく人が勝つ。これこそ典型的な香港文化です。

 

 もう1つ、勉強する価値がある常識をお教えしましょう。仕事柄、頻繁にタクシーを使う私が乗車時に必ず実践するのは、運転手の名前を呼んで丁寧に挨拶すること。これは香港のタクシー運転手はみんな毎回びっくりし、興奮します。みんなうれしいようです。私の交際における必殺技は、相手の職業によって適した敬称で呼びかけること。タクシーの運転手なら姓に「さん」をつけるのは通用しません。それより名前の3つの漢字の最後の文字、例えば「傑」なら傑に「哥(兄貴という意味)」を加え「傑哥」と呼びます。このような挨拶がタクシー業界では一番通用します。

 

報酬があれば礼は不要
 

 運転手とおしゃべりすることが好きな私は、そうした会話を通して社会問題を研究することもできます。運転手たちはいつも「10年、20年運転しても、そんな丁寧に挨拶する乗客は1人もいないよ」と言います。乗客はいつも無口、無感情、無表情で、態度が冷たい人が圧倒的に多いのです。これはあるひとつのことを説明できます。

 

 典型的な香港人は基本的に冷たく、挨拶もそっけない。挨拶するのは簡単だしお金がかかるわけでもないけれど、挨拶しないのは相手に挨拶をするという気持ち、心遣いさえも全く持っていないからなのです。日常生活でもし香港人がお互いに丁寧に挨拶する様子が見えたら、それは商売、仕事の関係があるから。もし、知り合いじゃなければ、全然気を使う必要はないのです。挨拶も不要! 

 

 運転手にサービスしてもらっても、なぜ挨拶もせず、ありがとうも言わないのか? 理由は簡単、相手にお金を払うから。ですから、香港の文化では、相手に報酬を払う場合、挨拶はもちろん、お願いします、ご苦労さま、お疲れさま、といった言葉を言う必要はありません。

 

 また逆も同じで、運転手さんが乗客からお金をもらう時にありがとうと言う必要はありません! 運転手の立場でいうと、お金をもらって運転サービスを提供するから、乗客から多めにチップをもらうこともほとんどないので、別に感謝の言葉はなくてもよいということです。

 

客を奪う、選ぶ運転手
 

 タクシーに関する常識を厳密に分析すれば、香港は表面的に活気があって情熱があるけれど、実は裏でかなり冷たいところがあると分かります。あくまでも利害が大切です。タクシーの朝と晩の交替時間には多くの運転手が車の前に「暫停載客(乗車一時停止)」の札を置きます。その札を置いてあるのに、道路でタクシーを待つ様子をみる乗客を見れば、すぐに止まって乗客に「どこへいく?」と質問します。この法律違反行為はよく香港で発生しています。その原因はいくつかあります。交替時間に運転手は決まった場所へ運転して行き、次の運転手(同僚や仲間)に車を渡さなければならないのですが、そのためにその方向に行く客やその方向を経由する乗客をわざと選ぶということです。

 

 ほかにも突然の雨や台風が来る時にわざと札を置いて客を乗せないそぶりを見せながら、手を挙げた乗客に追加のタクシー代を請求し、客が納得したなら乗せることもよくあります。こんなやり方をしたら当然、悪印象が生まれますが、そんな心配なんてしません。典型的な香港人にとって、タクシーと香港のイメージ、名誉よりも自分の今日の収入が一番大切ですから、こんな法律違反が長年続くのは当たり前といえるでしょう。

 

 タクシー文化は、70〜90年代と返還後から今までと比べると、相当大きな変化があります。昔タクシー運転手はお互いに協力し、運転手同士が競って危ない運転で先に乗客を取ることはありませんでした。しかし現在のタクシー運転手は道路でどんなトラブルが起きても助け合いません。昔は例えば、車が壊れたり事故が起きた場合は、空車のタクシーが自発的に困っているタクシーの近くに止まって、何か手助けするという好意的な姿が見られました。現在はその反対で、トラブルを無視したり、危ない運転で客を奪うことがよくあります。

 

 今はどんな問題が起きてもタクシー運転手は警察、あるいは仲良しの運転手を呼ぶしかありません。業界内の団結力がないという冷たい世界になってきました。もともと情熱、熱心、礼儀、道義、道徳、美徳を持っていても、こんな弱肉強食の香港社会に暮らしていたら、だんだんと消えたり、完全になくなってしまうでしょう。それは現在のタクシー運転手と乗客、双方に起きた変化なのです。時代の映り変わりは地球の自転と同じことで、誰もストップさせることはできないのです。

 では、次回はエレベーターに関する例を挙げて解説します。

 

ケリーのこれも言いたい
 

 香港人の日常生活を細かく分析するなら、香港人の反応は実は中国本土の人と同じ。香港人はよく、本土人は文化程度が低く、マナーが悪いと批判し、社会問題が発生すると本土人のせいだと責任を押し付けるけれど、典型的な香港人も同じようなことをやっている。