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最新号の内容 -20170407 No:1476
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ファン待望の春の祭典
香港国際映画祭

 第41回香港国際映画祭(香港国際電影節/HKIFF)が4月11〜25日の15日間、約11カ所の主要文化施設で開催される。世界の65の国および地域から約250作が上映され、そのうち69作品がプレミア上映だ。映画業界人にはアジアの登竜門、映画ファンには貴重な映画と出合える絶好の機会となる、世界が注目する大イベントの見どころを紹介する。(文・綾部智美/取材協力・香港国際電影節協会)
 

香港映画の20年 

 出品作は著名監督作品、古典、インディー、ドキュメンタリー、アニメなど、ジャンルごとに約10作品ずつをまとめた28部門で構成されている。今年の注目部門は「パラダイム・シフトポスト97 香港シネマ」。香港返還20周年を記念して、1997年から現在までの香港映画界の変遷を反映する20作品を紹介。大ヒット作品『メイド・イン・ホンコン』『少林サッカー』『無間道』『グランド・マスター』など14作品を本映画祭で、さらに若手による6作品を映画祭終了後の8月に上映する。

エドワード・ヤン監督 

『パーソナル・ショッパー』

十年再見 楊徳昌

 かつて台湾ニューシネマの担い手であった楊徳昌(エドワード・ヤン)監督が59歳の若さでこの世を去ってから十年。その追悼としてヤン監督の7作品を上映。その中で注目は、世界の映画人に影響を与えた代表作『،:嶺街少年殺人事件』。1960年代に台湾で起こった少年少女の事件を元に、当時14歳の張震(チャン・チェン)が主人公を演じている。

 

世界中の名作が一堂に

 本映画祭で見られる名作のほんの一部をここに紹介する。アカデミー外国語映画賞作品『セールスマン』はイランのアスガル・ファルハーディー監督が米国の移民政策に抗議してアカデミー賞授賞式をボイコットし話題になった。フランスのオリヴィエ・アサヤス監督は、カンヌ国際映画祭監督賞受賞作『パーソナル・ショッパー』上映後にマスタークラスを予定している。ロシア映画『天国』は、黒澤明に影響を受けた大家アンドレイ・コンチャロフスキー監督によるヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞作で、ナチスがテーマ。日本で人気が高いカルト映画の巨匠アレハンドロ・ホドロフスキー監督が撮影監督クリストファー・ドイルとタッグを組んだ自伝作品『Endless Poetry』にはコアな映画ファンが駆けつけるだろう。ハンガリーのイルディゴ・エンエディ監督による『On Body and Soul』は、屠殺場で働く男女が夢を共有しているという非日常的かつ幻想的な物語で、今年のベルリン国際映画祭金熊賞に輝いている。

『On Body and Soul』 『夜空はいつでも最高密度の青色だ』 

 

安定人気の日本映画

 今年も多数出品されている日本映画の中で、石井裕也監督の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、本映画祭のアワーズ・ガラに選ばれ、注目のほどがうかがえる。山田洋次監督の『家族はつらいよ2』を待ちわびていたファンも多いだろう。昨年の本映画祭では、前作『家族はつらいよ』のチケットは瞬く間に完売し、追加上映されたほどの人気だった。このように期間中に追加上映が随時発表されるので、公式サイトで更新情報をチェックしてみて。

※チケットは公式サイトwww.hkiff.com.hkおよびURBTIX窓口で発売中

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グラシアー・トリオ 
4月に香港で初リサイタル

 


 日本、台湾の音楽家から成る「Gracieux Trio(グラシアー・トリオ)」が来る4月23日に香港で初の演奏会を開催する。同トリオは2003年ニューヨークにて結成。翌04年のカーネギーホールでの公演、同年ニューヨークの国際室内楽音楽家賞受賞を皮切りに、米国各地でリサイタルを行って好評を博した。アジアにおいては台湾や日本(東京、札幌、富山、福井)を中心にリサイタルを行うとともに、室内楽のマスタークラス開催といった後進の指導もするなど、活発な演奏活動を行っている。
(文・綾部浩司/写真はグラシアー・トリオ提供)

 

 現在のメンバーは台北出身のグローリア・シー(ピアノ)、福井県出身の荒井亮子(バイオリン)、荒井結子(チェロ)。トリオ結成のきっかけはグローリアと荒井亮子が共に学んでいたニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の恩師のアドバイスからだった。「それはまさしく運命的な出会いだった」と荒井亮子は当時を振り返る(トリオ結成当初のメンバーはこの2人と韓国人チェリストだったが、現在チェロを演奏するのは荒井の妹の荒井結子)。

 現在3人はニューヨーク、日本、香港にそれぞれの主な音楽活動拠点を置いているが、今回は日本公演を今月中旬に終えた後、初めての香港公演に臨む。

 香港ではまだまだ人気の少ない室内楽曲に対する関心の裾野を広げていくためには、いわゆる名曲コンサートのようなものではなく、強いメッセージがふくまれたコンサートであることが重要だ、と語るのは荒井亮子。なじみ深い作品やプログラムだけを演奏すると、むしろ聴衆には何も印象が残らない、もしくは一過性で終ってしまう可能性が多いという。一方、今まで聴いたことがないような本格的な作品に触れると、むしろすごい作品・素晴らしい音楽を聴いた、という強い体験意識や感覚が残り、それが音楽への興味の深まりや関心のきっかけになるそうだ。

 このたび演奏する2曲は彼らがいずれも学生時代に取り組んだ思い出の作品だが、今回メンバーそれぞれが全く新たな気持ちで臨むという。一曲目のショスタコービッチのピアノ三重奏曲第2番は70万〜150万人ものレニングラード市民が飢餓や寒さで命を落としたレニングラード包囲戦が解かれて約10カ月後の1944年11月14日にレニングラードで初演された作品。当時のソビエトの厳しい社会環境を色濃く反映した息もつかせぬ緊張感を伴う作品だ。当時がどのような時代だったかというと、この初演とまさに同じ時、東京は初めてB29による本格的な大空襲に見舞われていた。

 二曲目のシューベルトのピアノ三重奏曲第1番は室内楽曲としては比較的珍しい40分を超える大曲であるが、いかにもシューベルトらしい清純でのびやかな歌謡の世界が繰り広げられ、あっという間に時間が過ぎていくことであろう。

 日曜の午後のひととき、こぢんまりとしたアットホームなホールで室内楽を楽しんでみてはいかが。

※コンサートの詳細は13面を参照