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最新号の内容 -20170407 No:1476
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宇治抹茶の老舗、海外に20店展開

 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

 

 株式会社 辻利茶舗代表取締役 辻史郎さん
【プロフィール】1974年、福岡県生まれ。趣味はカメラ、好きな言葉は「失敗もせず問題を解決した人と、十回失敗した人の時間が同じなら十回失敗した人をとる。同じ時間なら、失敗した方が苦しんでいる。それが知らずして根性になり、人生の飛躍の土台になる」(本田宗一郎)。

 

——「宇治抹茶」といえば京都のイメージがありますが、福岡県小倉市が本店なんですね。

 京都の「辻利」の支店を1923年に小倉に出店したのが始まりです。当時店舗を立ち上げた祖父母が小倉の人情や環境に惚れ込んで、小倉を永遠の地に選んだのが「辻利茶舗」です。現在、国内は北九州・小倉に3店舗、海外は2010年の台湾を皮切りにシンガポール、上海など9カ国・地域に20店舗あります。海外展開は台湾の法人(高平摩志股分有限公司、以下「海外事業部」)と合弁で展開しています。

——こだわりは何なのでしょうか。

 抹茶には日本古来から伝わる伝統的な「石臼挽き製法」で丹念に挽いた抹茶を使用し、品質管理については鮮度にはこだわっています。例えば海外から日本に抹茶を注文する場合、日本ですでに挽かれて製品化された抹茶を輸送することがほとんどですが、弊社は超低温冷凍庫の中で「碾茶」と呼ばれる「抹茶になる前の茶葉」を保管し、注文が入ってから挽くことで最高の鮮度で出荷できる体制を整えております。

——香港進出はどんな形で実現したのでしょうか。

 アジアの主要都市として香港は絶対外せない場所であり、台湾の合弁法人から何度も話を頂いていたのですが、こればかりはめぐり合わせですね。今回素晴らしい香港のパートナーと巡り合うことができ、海外事業部の尽力と香港パートナーさんの迅速かつ堅実なオペレーションによりオープンにこぎつけることができました。

——海外進出するときにどのような見極めをしているのでしょうか。

 現地パートナー企業様は現地での実績は然り、事業への熱意に加え、日本の文化、食に対しての思いが強いこと、また地元のお客様に支持されている企業様といったところは非常に重要です。香港は世界中の人々が来るアジアのハブです。地元のお客様だけではなく、様々な国のお客様にも同時に知っていただける場所です。こうした多国籍のお客様からも支持を得られるような信頼のあるパートナー企業様が重要だと思いますね。また1号店に選んだIFCモールは多くの国や地域から様々なお客様が訪れるアンテナショップのような場所。空港から電車で直結されており、地元香港のみならず世界中のお客様の目に留まりやすい場所としては大変魅力的です。

——世界的に抹茶はブームですが、どのように見ていますか。

 13年12月に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、抹茶の知名度が高まったと感じています。一方で和の世界観を広げていきたいと思っていますが、世界にはまだまだ和食はもとより日本文化を知らない国の人々が多くいらっしゃいます。こうしたなかで昔からの伝統的な手法、作法に加え時代にあわせた創作(フュージョン)があっていいと思っていますね。見た目は和の店でありながら店内、或いは商品面において洋のイメージを取り入れるなど「TSUJIRI」という世界観のなかに独特の和のテイストをいれていきたいと思っています。スペースの事情もあり「テイクアウト」にしていますが、今後はゆったりとしたカフェスペースも検討していきたいと思います。

——日本国内ではお茶の消費量が減少していますが、主な要因は何だと思われますか。

 人口の減少、少子化に拍車がかかっていることに加え、生産農家の高齢化問題と継承者の減少、同時に日本茶そのものを飲まなくなった人が増加していることも考えられます。弊社代表に就任して2年ですが、これまで全国の日本茶屋に足を運び実際に現状を見てきました。その結果、元気な日本茶のお店には大きく4つのパターンがあることに気が付きました。それは「海外に進出している」「インターネットで大々的に販売している」「抹茶スイーツを扱っている」「抹茶カフェを運営している」という4点です。こうした中、本格的な日本茶のおいしさを理解して、より身近な飲み物になるよう、お茶の理解を深めるセミナーを行っています。地道ではありますが、こうした活動は次世代につながるものと信じています。(この連載は月1回掲載します)

(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。

ブログhttp://nararisa.blog.jp/