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最新号の内容 -20170310 No:1474
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SMBC経済トピックス



調整局面の懸念される
中国スマートフォン向け電子部品

 SMBC経済トピックスでは、アジア地域において注目されている産業や経済の動向を紹介します。今回のトピックスは「調整局面の懸念される中国スマートフォン向け電子部品」です。
 中国スマートフォン(以下、スマホ)メーカーの一部大手は2016年後半頃より生産量を急速に拡大させており、これに伴い日本勢を含む電子部品メーカーが売上を増加させています。

 しかしながら、中国スマホ市場は既に成熟化、製品面での差別化も難しくなる中で、中国スマホメーカーの一部大手がシェア引上げ・販売拡大を進めてきた背景には、中国小売店への端末販売奨励金等の販促費の積増しがあります。これらメーカーは17年以降、中国での拡大余地が小さくなる中で、アジア新興国にて中国と同様に販促費投入を通じて更なる拡大を図るとみられます。こうした中、中国スマホメーカーが今後も巨額の販促費投入を続けられるか見通しにくく、東南アジアで販促活動が奏功せずに販売拡大ペースが下振れ、生産拡大トレンドが2017年上半期に調整局面に転じる可能性もあります。

 加えて、スマホ向け電子部品では、中国スマホメーカーは調達量を確保すべく実際の生産量を超える量の発注(いわゆる重複発注)を行っているため、生産調整局面に入った際には、スマホ向け電子部品の需要は搭載先の減少幅を上回って縮小することも懸念されます。
 足元で生産を拡大する中国スマホメーカーは日本製の部品を積極的に採用しており、日本の電子部品メーカーは影響を受ける可能性があります。また、電子部品メーカーの中には、中国スマホメーカーと1年程度の販売契約を結んで目先の納入数量を確保した会社もある模様です。日本の電子部品メーカーにとっては、納入先の販売・生産見通しや、納入先との契約内容等に基づく納入動向が一つのポイントになると考えられます。
(三井住友銀行 企業調査部<香港駐在> 神谷 直良)

 

中国スマートフォン業界の需要動向・競争環境 

 中国スマートフォン(以下、スマホ)市場は、携帯電話全体の人口普及率は9割に達する上、携帯ユーザーに占めるスマートフォン利用者は8〜9割(2016年末時点)相当と、成熟しています。

 足元2016年では、①中国の携帯キャリアが消費者による高速通信(LTE)対応端末への買い替えを惹起すべく端末販売奨励金を積増したこと、②中国スマホメーカー大手が小売店宛の販促費を拡大させたこと、等から、利用者によるスマホの買替え期間が短くなり販売台数は前年同期比+8%と増加しました。ただし、今後キャリアによる販売奨励金の拡大は落ち着いてくるとみられ、販売台数は2017年には前年比で横ばいないし微減になるとみられています。

 また、中国スマホメーカーの競争環境をみれば、①米国・台湾等の半導体設計メーカー大手がスマホ自体の設計図(いわゆるレファレンスデザイン)を公開しておりスマホの設計・生産難度は低くなっていること、②製品の部品調達・組立を製造請負企業(EMS・ODM)等に外注することが可能であること、等から、参入障壁は低い他、製品面での差別化が難しく、市場シェアはこれまで大きく変動してきました。

 

図表:中国携帯電話端末(スマートフォン、従来型)の市場規模

(注)スマートフォンは、携帯電話端末のうちAndroid OS、iOS搭載機の合計
(出所)Gartner社 "Market Share: Final PCs, Ultramobiles and Mobile Phones, All Countries, 4Q16"(2017年2月14日)Gartnerリサーチの値を基に弊行グラフ作成

 

中国スマートフォンメーカーの動きと計画

 こうした中、中国スマホメーカーの一部大手は中国スマホ市場において急速にシェアを伸ばしています。製品面では、①高速チャージや高級感のあるデザイン、高音質オーディオといった仕様を打ち出していること、②電子部品のうち半導体の性能・価格を抑える一方で消費者に訴え易いカメラやディスプレイパネルには高性能品を搭載していること、等の特徴を有しています。ただし、シェア拡大の背景としてはむしろ、メーカーから小売店に付与する端末販売奨励金(インセンティブ)を高水準に設定する他、1・2級都市の大規模なスポーツイベント等のスポンサーになりブランド認知を高める等、巨額の販促費を投入してきたことが挙げられます。

 こうしたメーカーによる今後の販売動向としては、中国での販売台数拡大の余地が小さくなると見込まれる中で、今後アジア新興国にて中国と同様に販促費を積極投入することでブランド力を引上げ、販売価格200米ドル程度の低価格端末を中心に販売を拡大、2017年にも大幅な販売台数拡大を実現する計画であるとみられています。


電子部品メーカーの需要拡大

 電子部品業界では、中国スマホメーカーが今後の成長を前提に足元で生産を拡大させている上、一部部品において中国スマホからの発注量拡大ペースに供給が追い付かず需給が逼迫しています。これを受けて、中国スマホメーカーは部品調達量を確保すべく、実際の生産量を超える量の部品を発注している模様です(いわゆる重複発注)。こうしたことから、日本勢を含む電子部品メーカーは2016年後半頃より売上を急速に増加させています。


中国スマートフォンメーカーによる生産調整の懸念

 しかしながら、中国スマホメーカーの販売拡大計画に対しては、①中国・東南アジアでの巨額の販促費投入を続けられるか見通しにくい、②東南アジアでは200米ドル端末に対する需要量は中国と比べて限定的であるうえ各国での地場メーカーとの競合にさらされるとみられる、等の指摘があります。このため、販売拡大ペースが下振れて、生産拡大トレンドが2017年上半期頃に生産調整に転じる可能性も懸念されています。この中で電子部品メーカーは、スマホメーカーからの重複発注が解消され、スマホメーカーの生産減少幅を上回って部品納入量が縮小する懸念もあります。

 足元で生産を拡大する中国スマホメーカーは日本製の部品を積極的に採用しているだけに、日本の電子部品メーカーは大きく影響を受ける可能性があります。また、日本の電子部品メーカーの中には、供給不足の中で中国スマホメーカーと1年程度の販売契約を結んで、目先の納入数量を確保した会社もある模様です。このため、日本の電子部品メーカーにとっては、販売先の中国スマホメーカーの販売・生産見通しや、スマホメーカーとの契約内容等に基づく納入動向が一つのポイントになると考えられます。


(このシリーズは2カ月に1回掲載します)
 

⟨筆者紹介⟩

神谷 直良(かみや なおよし)
三井住友銀行 企業調査部 香港駐在:
2006年より企業調査部(東京)で電機・通信業界等を担当。2014年より香港に赴任し、現在は主に台湾・韓国・中国(華南地域及び香港)の電機業界の調査や情報発信を手掛ける。

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