香港ポスト ロゴ
  バックナンバー
   
最新号の内容 -20170120 No:1471
バックナンバー

 

第39回

クラフトビール製造業

 

クラフトビール製造業

Hong Kong Beerを完全に立て直したキンブル・ディレクター

 

 

地ビールは大きく伸びると確信

 

 ひと口に「仕事人」と言ってもその肩書や業務内容はさまざま。そして香港にはこの土地や文化ならではの仕事がたくさんある。そんな専門分野で活躍する人たちはどのように仕事をしているのだろう? 各業界で活躍するプロフェッショナルたちに話を聞く。  (取材・武田信晃/月1回掲載/写真・筆者撮影)

 

 香港特区政府は2008年に酒税を完全撤廃し、香港はワインを中心としたお酒の貿易ハブとしての機能を持つようになった。アルコールの中でもクラフトビール、つまり「地ビール」のブランドがこの小さな香港で10を超えるなど需要が高まっている。「Hong Kong Beer」は1995年に創立された香港地ビールのパイオニアブランドだ。現在、この会社をディレクターとして率いているのが米国人でシンガポール在住のデヴィン・オットー・キンブル氏だ。

 

 地ビールのメッカであるカリフォルニアの出身である彼は、最初はホテル業界にいて、94年に「Dan Ryan's」(香港の有名アメリカンレストラン)で働くため来港。その後、シンガポールに移り、97年「Brewerkz Microbrewery and Restaurants」というレストランの経営を始めたのだという。このレストランは料理だけではなく地ビールも製造。シンガポールやオーストラリアの地ビールのイベントで多数の賞を獲得した。

 

香港の仕事人

製造工場内のようす

 

 「2013年に赤字を計上していた香港ビールを買収しました。なぜって? ここ数年の香港の酒に関する市場を見ると、しっかり経営をすれば香港ビールは大きく伸びると確信したからです」

 

 買収後、シンガポールでの地ビールの経験を生かし、香港とシンガポールを行き来しながら香港ビールの改革を始めた。「ビールの味のラインアップ、ボトルの形、ラベル、販売網、グラスにいたるまでほとんど全てを変えましたね」と語る。例えば、主力の「Hong Kong Beer」だけではなく、ペールエールの「Dragon's Back」、インディア・ペールエールの「Big Wave Bay」など香港にちなんだ名前をつけた異なる味のビールを4種類の製造。そのほかに、「Sevens」など期間限定のビールも製造している。

 

香港の仕事人

Hong Kong Beerの商品群

 

 「香港人が好むビールと言うのはまだ完全には把握しきれていません。さらに新しい味を開発して香港人の口に合うビールを探しつつ、それを含めて既存のビールも常に改良しています。HK Beerでも2013年より明らかに味が良くなっているという自信があります。原料のホップそのものも進化しているので、どんどん新しい味を突き詰めていきたいです」

 

香港の仕事人

Hong Kong Beerを酒場で楽しむ人たち

 

 これまではレストランやバーでしか飲めなかった地ビールを、香港国際空港の免税店でビールグラスとセットで販売するなど、販路拡大に力を入れ始めた。知名度を上げ、すそ野を広げるのなら恵康(Wellcome)などの大手スーパーマーケットでの販売が欠かせないが「それはネクストステップですね」と視野にいれていることを明かした。

 「2016年通年の生産量は前年比で2倍の3000ヘクトリットルの予定です。ドイツ製の機械を導入し生産能力も向上したので、次の2年間で1万ヘクトリットルを目指しています」。生まれ変わった香港ビールがどんどん拡大していくことは間違いなさそうだ。(ビールと酒場の写真はHong Kong Beer提供)