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《文化》
香港フィルはワールドクラスのオーケストラ
指揮者・小松長生さんインタビュー
昨年12月、香港フィルの「教育コンサート」が開催された。この教育コンサートは毎年香港フィルが幼稚園児から高校生向けに無料で開催しているもので(一般には非公開)、2015/2016シーズンでは延べ14回のコンサートが行われ、約2万6千人の若者たちが香港フィルのフル編成の演奏を学校の講堂や体育館ではなくコンサートホールで聴く予定。今年の教育コンサートではモーツァルトやロッシーニ、ラヴェル、バルトークやレスピーギなどのさまざまな作曲家の作品を取り上げ、定期演奏会さながらの多彩な内容。その3日間7公演で、世界的に活躍する日本人指揮者・小松長生さんがタクトをとった。小松さんは14年にもこの教育コンサートを指揮。今回で香港フィルとの共演が2度目となった小松さんに話を聞いた。
(聞き手・綾部浩司/写真提供と取材協力・HK Phil)
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荃湾タウンホールで指揮をする小松さん
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——今回の教育コンサートについて
プログラムはオーケストラ側が用意しました。初めてオーケストラの生演奏を聴く子供たちが多いでしょうし、特に小さな子供たちは集中出来る時間が限られていますから、曲目の長さなどは工夫しますね。このような教育コンサートはボルティモア交響楽団の副指揮者の時に何度もやりました。子供向けの教育コンサートですが、オーケストラのメンバーは本番さながらに必死に演奏していましたね。そして香港の子供たちは音楽を聴いた時の反応がとてもいいですね。
——香港フィルとの共演はいかがでしたか?
まさしくワールドクラスのオーケストラですね。20数年間親しんできた海外のオーケストラと同じような感じをもちました。特に米国のオーケストラはさまざまな地域から異なる文化をもったメンバーが集まっていますが、香港フィルにも同じ印象を持ち、全く違和感が無かったですね。リハーサルの際の反応が非常によいし、話がわかりあいやすく、とてもスムーズに進めることが出来ました。音楽監督のヤープがバイオリニスト出身だったためか、リハーサルではバイオリンセクションにはとりわけ厳しいそうですが、弦楽器のセクションもいいですね。またメンバーの中ではトロンボーン群は強烈で鉄壁と感じました。そしてフルートの首席奏者メガンさんも抜群に素晴らしい。音が良いフルーティストは多くいますが、こんないい音の雰囲気を作り出すフルーティストはそんなに世界中にいないと思います。
——香港の印象は?
香港は実にエキサイティングで、活気とエネルギーがすごい、大好きな街です。映画007シリーズの前作『スカイフォール』の舞台のひとつが香港でしたが(小松さんは007シリーズの大ファンとのこと)、目の前に007の舞台が見られてわくわくしました。映画で描かれたように、香港の町並みはどこか別世界みたいな感じがいいですね。
〜筆者後記〜
小松さんのホームページではさまざまな作曲家の作品を丁寧に分かりやすく説明している。これからクラシック音楽のコンサートやCDなどを聴く際に参考になると思うので、ぜひ紹介したい。また小松さんは日経プレミアシリーズ新書で『リーダーシップは「第九」に学べ』を出版している。オーケストラ指揮者のリーダーシップが企業組織の「経営者」「管理職」に通じる点をご自身の経験を交えて書かれたもの。クラシック音楽に興味がある方はもとより、企業のマネジメントに携わっている方にはご一読いただきたい一冊だ。
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子供たちの歓声に応える
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~小松長生さん略歴~
東京大学美学藝術学科卒業後、米国のイーストマン音楽院大学院で指揮を学ぶ。バッファロー・フィルハーモニーやボルティモア交響楽団で副指揮者として研鑽を踏んだ後、カナダのキッチナー・ウォータルー交響楽団の音楽監督、ウクライナのリヴォフ国立歌劇場首席客演指揮者、コスタリカ国立交響楽団桂冠指揮者等と海外のさまざまな音楽舞台で活躍。日本国内では東京フィルハーモニー交響楽団正指揮者等を経て、現在はセントラル愛知交響楽団名誉指揮者。
小松長生 公式webサイト:www.c-komatsu.com/