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最新号の内容 -20151204 No:1444
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 2017年の行政長官普通選挙の実現をめぐって過去数年にわたり香港社会が揺れた。普通選挙に向けた政治体制改革の議論では香港基本法や1国2制度に対する香港市民の認識という根本的な問題も浮き彫りになった。外国人が香港を見るにあたっても基本法に関する知識は不可欠となるため、本紙では基本法の日本語完訳を数回にわたってお届けする。(月1回掲載)

 

 

第6章 教育、科学、文化、体育、宗教、労工
および社会サービス     

 第136条 香港特別行政区政府は従前の教育制度の下に、教育体制、管理、教育言語、教育予算割当、試験制度、学位制度、学歴承認などを含む新たな教育の発展・改善を目指す政策を策定する。

 社会団体および個人は香港特別行政区で法に基づき各種教育事業を興すことができる。

 第137条 各教育機関は自主性と学術の自由を維持することができ、引き続き香港特別行政区以外から教職員を招聘し、教材を選ぶことができる。宗教組織が運営する学校は引き続き宗教課程の開設を含む宗教教育を行うことができる。

 学生は教育機関を選ぶことができ、香港特別行政区以外に教育の場を求める自由を有する。

 第138条 香港特別行政区政府は中西(編集部注:中国と西洋)医薬を発展させ、医療衛生サービスを促進する政策を制定する。社会団体、個人は法に基づき各種医療衛生サービスを提供することができる。

 第139条 香港特別行政区政府は科学技術政策を定め、科学技術の研究成果、特許、発明・創造を法律で保護する。

 香港特別行政区は香港で使用する各種科学、技術標準(スタンダード)と規格を確定し、それを適用する。

 第140条 香港特別行政区政府は文化政策を定め、作家が文学芸術創作の中で得た成果と合法権益を法律で保護する。

 第141条 香港特別行政区政府は宗教と信仰の自由を制限せず、宗教組織の内部事情に関与せず、香港特別行政区の法律に抵触しない宗教活動を制限しない。

 宗教組織は財産の取得、使用、処置、継承および資金援助を受ける権利を法に依って享有する。財産などの権益は保持、保護される。

 宗教組織は従前の方法で宗教学院、その他の学校、病院、福祉機関およびその他の社会サービスを運営し、実施することができる。

 香港特別行政区の宗教組織と信者はその他の地方の宗教組織およびその信者と関係を維持し、発展させることができる。

 第142条 香港特別行政区政府は従前の(職業)専門制度を基に、各種専門職の営業資格を評価・審議する方法を定める。

 香港特別行政区が成立する以前に取得した専門職資格およびその営業資格保持者は、関連規定および専業規定に基づき従前の資格を留保できる。

 香港特別行政区政府は特別行政区が成立する以前に認可された専業者および専業団体を引き続き認可し、認可を受けた専業団体は専業資格を審査、授与できる。香港特別行政区政府は社会発展の必要に基づき関連分野の意見を聴取し、新たな専門職、専門団体を承認する。

 第143条 香港特別行政区政府は体育政策を策定する。民間スポーツ団体は法に基いて存続、発展できる。

 第144条 香港特別行政区政府は従前の教育、医療衛生、文化、芸術、娯楽、体育、社会福祉、社会工作などに対する資金援助政策を維持する。特別行政区が成立する以前から香港で援助機関に勤務していた人員は従前の制度に基づき継続雇用される。

 第145条 香港特別行政区政府は従前の社会福祉制度に基づき、経済状況と社会の需要に従い、制度を発展、改革するための政策を定める。

 第146条 香港特別行政区で社会サービスに従事するボランティア団体は法に抵触しない範囲内で自らそのサービス方式を決めることができる。

 第147条 香港特別行政区は関連する労働法規と政策を定める。

 第148条 香港特別行政区の教育、科学、技術、文化、芸術、体育、専門職業、医療衛生、労働、社会福祉、社会工作などの分野で活動する民間団体および宗教組織と内地(中国本土)の相応する団体、組織は相互に隷属せず、干渉せず、互いに尊重し合う関係を基礎とする。

 第149条 香港特別行政区の教育、科学、技術、文化、芸術、体育、専門職業、医療衛生、労働、社会福祉、社会工作などの分野で活動する民間団体および宗教組織は世界各国、地域および国際関連団体、組織と関係を発展させ、これらの団体、組織は「中国香港」の名義の下に関連活動に参加できる。

 

第7章 対外事務

 第150条 香港特別行政区政府の代表は中華人民共和国代表団の構成員として、中央人民政府が進める香港特別行政区と直接関連のある外交交渉に参加できる。

 第151条 香港特別行政区は経済、貿易、金融、航運、通信、観光、文化、体育などの分野で「中国香港」の名義の下に世界各国、地域および関連国際組織との関係を維持・発展させ、関連協議に調印、履行することができる。

 第152条 香港特別行政区と関連ある国家単位の国際組織と国際会議に対し、香港特別行政区政府は代表を派遣し、代表は中華人民共和国代表団の構成員か中央人民政府および上記の関連国際組織あるいは国際会議が許す身分で出席し、「中国香港」の名義で発言できる。

 香港特別行政区は「中国香港」の名義で国家を単位としない国際組織あるいは国際会議に加わることができる。

 中華人民共和国がすでに参加し香港も何らかの形で加わっている国際組織に対して、中央人民政府は香港特別行政区が当該組織の中でその地位を保全できるための必要な措置を取る。

 中華人民共和国が未参加で香港が何らかの形ですでに加わっている国際組織に対して、中央人民政府は香港特別行政区が当該組織の中でその地位を保全できるための必要な措置を取る。

 第153条 中華人民共和国が締結した国際協議に関し、中央人民政府は香港特別行政区の実情と必要に応じ香港特別行政区政府の意見を聴取した後、これを特別行政区に適用するか否かを決定する。

 中華人民共和国が未調印で、かつ香港に適用されている国際協議は、継続して適用される。中央人民政府は必要に応じて香港特別行政区政府に授権、援助し、その他の関連国際協議を香港特別行政区に適用する。

 第154条 中央人民政府は香港特別行政区政府が同特別行政区の永住民身分証を有する中国公民に中華人民共和国香港特別行政区旅券を発給する権限を授け、香港特別行政区のその他の合法居留者に旅行証(トラベル・ドキュメント)を発給する権限を授ける。上記の旅券と旅行証は各国、地域への通行に有効で、所持者が香港特別行政区に帰る権利を明記している。

 世界各国、地域人の(香港特別行政区への)入国、逗留、出国に関し、香港特別行政区政府は出入国管制を実施する。

 第155条 中央人民政府は香港特別行政区政府が各国、地域と査証免除協議を結ぶことを援助し、権利を授与する。

 第156条 香港特別行政区は必要に応じて外国に政府あるいは半官半民の経済・貿易機構を設立でき、それを中央人民政府に報告する。

 第157条 外国が香港特別行政区に領事機構か半官半民の機構を設立する場合は、中央人民政府の批准を必要とする。

 中華人民共和国とすでに正式な外交関係を結んでいる国家が香港に設立している領事機構あるいはその他の政府機構は(その地位を)保全される。

 中華人民共和国と正式な外交関係を結んでいない国家が香港に設立している領事機構あるいはその他の政府機構は、実際状況に基づいてその地位を保全するか、または半官半民の機構に改組される。

 中華人民共和国が承認していない国家は、香港特別行政区に民間機構だけを設立することができる。