2017年の行政長官普通選挙の実現をめぐって過去数年にわたり香港社会が揺れた。普通選挙に向けた政治体制改革の議論では香港基本法や1国2制度に対する香港市民の認識という根本的な問題も浮き彫りになった。外国人が香港を見るにあたっても基本法に関する知識は不可欠となるため、本紙では基本法の日本語完訳を数回にわたってお届けする。(月1回掲載)
第3章 住民の基本的権利と義務
第24条 香港特別行政区の住民(略称=香港住民)は、永住民と非永住民の両者を含む。
香港特別行政区の永住民とは下記のものである。
以上の住民は香港特別行政区で居留権を享有し、香港特別行政区の法律に基づいてその居留権を明記した永住民証明書を取得する資格を持つ。 第25条 香港住民は法律の下ですべて平等である。 第26条 香港特別行政区の永住権をもつ住民は、法に依って選挙権と被選挙権を持つ。 第27条 香港住民は言論、報道、出版の自由、結社、集会、デモ、示威行動の自由、労働組合の組織および参加、ストライキを行う権利と自由を享有する。 第28条 香港住民の人身の自由は何人たりとも侵すことができない。香港住民は任意の、または不法な逮捕、拘留、監禁を受けない。任意のまたは不法な住民に対する身体の捜査、住民の人身の自由剥奪および制限を禁止する。住民に対する酷刑、任意のまたは不法な住民の生命の剥奪を禁止する。 第29条 香港住民の住宅とその他の家屋は侵犯されない。住民の住宅と家屋への任意のあるいは不法な捜査、侵入を禁止する。 第30条 香港住民の通信の自由および通信の秘密は法律に依って保護される。公共の安全と刑事犯罪の捜査の必要のため、関連機関が法律の手続きに依って通信を検閲する場合以外は、いかなる部門または個人も、いかなる理由をもってしても住民の通信の自由と通信の秘密を侵してはならない。 第31条 香港住民は香港特別行政区内での移転の自由、その他の国や地域への移住の自由を有する。香港住民は旅行と出入国の自由を有する。有効な旅券を所持している者は、法律による制止を受けているもの以外、自由に香港特別行政区を離れることができ、そのための特別な認可も必要としない。
第32条 香港住民は信仰の自由を有する。 第33条 香港住民は職業選択の自由を有する。 第34条 香港住民は学術研究、文学、芸術の創作とその他の文化活動を行う自由を有する。
第35条 香港住民は秘密で法律相談を行い、裁判所に訴訟を起こし、弁護士を選んで適当な時期に自己の合法的権益を保護してもらうか、法廷で代理人を頼み司法的な救済を得る権利がある。 第36条 香港住民は法律に依って社会福祉を受ける権利を有する。勤労者の福祉待遇と定年退職後の保障は法律に基づいて保護される。 第37条 香港住民の婚姻の自由と自由意志による生育の権利は法律によって保護される。 第38条 香港住民は香港特別行政区の法律に依って保障されるその他の権利と自由を享受する。
第39条 「公民の権利と政治権利に関する国際条約」「経済、社会および文化の権利に関する国際条約」および国際労働条約の香港に適用する関連規定は引き続き有効であり、香港特別行政区の法律を通じて実施される。 第40条 新界原住民の合法的な伝統的権益は香港特別行政区の保護を受ける。 第41条 香港特別行政区内の香港住民以外のその他の人は、本章を規定された香港住民の権利と自由を法に依って享有する。 第42条 香港住民と香港にいるその他の人は、香港特別行政区が実施する法律を遵守する義務を有する。
第4章 政治体制 第1節 行政長官
第43条 香港特別行政区行政長官は香港特別行政区の首長であり、香港特別行政区を代表する。 第44条 香港特別行政区行政長官は満40歳以上の者で、香港に連続して20年以上居住する外国の居住権を持たない香港特別行政区の永住権を持つ中国公民がその任をなす。
第45条 香港特別行政区行政長官は当地において選挙または協議で選出され、中央人民政府から任命を受ける。 第46条 香港特別行政区行政長官の任期は5年とし、再選は一度を限りとする。
第47条 香港特別行政区行政長官は廉潔に公に奉仕し、職責に忠実でなければならない。 第48条 香港特別行政区行政長官は以下の職権を行使する。
⑴香港特別行政区政府を指導する 第49条 香港特別行政区行政長官は立法会を通過した法案が香港特別行政区の全体の利益に結びつかないと判断した場合、3カ月以内に当該法案を立法会に差し戻して審議のやり直しをさせることができる。立法会が全議員の3分の2以上の賛成で原案を再び通過させた場合、行政長官は1カ月以内にそれに署名して公布するか、本法第50条の規定に従って処理しなければならない。
第50条 香港特別行政区行政長官が立法会を再度通過した法案への署名を拒否、または立法会が、政府が提出した財政予算案およびその他の重要法案の通過を拒絶し、協議を重ねても意見の一致を見ない場合は、行政長官は立法会を解散することができる。 第51条 香港特別行政区立法会が、政府が提出した財政予算案の批准を拒絶した場合には、行政長官は立法会に臨時支出を申請することができる。立法会が既に解散され臨時支出の批准を行えない場合には、行政長官は新しい立法会が選出されるまでの期間に前財政年度の支出に基づいて臨時短期の支出を批准することができる。 第52条 香港特別行政区行政長官は、下記のような状況に1つでも当てはまる場合、必ず辞職しなければならない。
⑴重病、あるいはその他の理由で職務の履行ができない場合
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